表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/41

10.規格外

 驚きの声は大きく響き、鼓膜がじんじんと震える。

 予想を超える大きな反応に私は驚かされ、殿下は笑う。


「ま、まじなんすか? ビーストマスターって」

「事実だぞ? 彼女はセントレイク王国でビーストマスターの称号を得ていた」

「し、信じられない……ビーストマスターなんて都市伝説か何かと思っていました」

「都市伝説はないだろ? 他にもビーストマスターを抱えている国は存在している」


 リクル君がそう言うと、ルイボスさんはメガネ、ではなく顎に手をあて考えながら言う。


「いえ、あれも偽装しているだけかと思っていました。三種の適性者さえいれば誤魔化すことは容易でしょうから」

「二つ適性がある人でも珍しいのに、三つなんておとぎ話の域っすよ」

「そういう認識なのか」


 リクル君はなるほどなと、一人で納得していた。

 ビーストマスターに対する認識は、国によって様々なのかもしれない。

 少なくともこの国、二人にとってビーストマスターは、空想上の存在でしかなかった。

 疑いの眼……というより、信じられない者を見る眼だ。


「ホ、ホントにビーストマスターなんすか?」

「はい。一応」

「じゃ、じゃあ証拠! 証拠を見せてほしいっす!」

「リリン、いきなりそれは失礼だぞ」

「だって信じられないんすよ! セルビアさんウチと同じくらいの年の見た目っすし、ビーストマスターなんて見たことないっすから! 先輩だって見たくないんすか?」

「それは……そうだが……」


 二人の視線が私に集まる。

 私は困ってしまう。


「えっと……」


 ビーストマスターである証明?

 って、どうすればわかってもらえるのかな?

 三つの適性を見せればいいのかな?


「セルビア、何か見せてやってもらえるか?」


 リクル君からもお願いされる。

 私は悩みながら答える。


「見せるのはいいけど、どうすればいいのかな? テイムした生き物は向こうの国に置いてきちゃったし、憑依は身体への負担が大きくて相手の同意もいるから、意味なく使いたくないんだ。だから見せられるとしても召喚だけになるの」

「そうなのか。だそうだが、どうだ二人とも」

「た、確かにそうっすよね。お手軽な力じゃないっすもん」

「うむ、僕としたことが軽率だった」


 二人とも申し訳なさそうに……。

 そして残念そうな顔をする。

 なんだか私まで悪い気持ちになってきてしまった。


「全ては見せられませんけど、召喚だけでもよければお見せできますよ?」

「そうっすね。せっかくなら見せてもらいたいっす」

「うむ。僕も同じサモナーだ。セルビアさんが何と契約しているのか、個人的に興味もある」

「いいな。俺も少し興味はあるんだ。知り合ってから随分経つが、直にお前の力を見せてもらったことはなかったし」


 言われてみればそうかもしれない。

 リクル君の前で、私が調教師らしいところを見せたことがない。

 あるとすれば街で助けられた時。

 私は召喚を使おうとして、リクル君に止めてもらった。


「じゃあ、外に移動してもいいですか?」

「ああ」


 せっかくだ。

 リクル君にも見てもらおう。

 この十年で、私がどれだけ成長したのか。

 立派なビーストマスターになれたことを。

 

 気合を入れて外に出る。

 宮廷の庭は広いけど、セントレイクに比べたら小さいほうだ。

 ざっと見渡し、スペースを確認する。

 予想していたより小さい。

 この広さだと、召喚できる対象にも制限が出てしまう。


「何を召喚するっすかね~ やっぱ聖霊っすか?」

「女性は聖霊に好かれやすい。可能性としては一番高いだろうね」

「あー、だから先輩って聖霊を召喚できないんすね。嫌われてるから」

「ぐお……どうして君はそういうことをストレートに言えるんだ」


 彼らが談笑している間に、私は何を召喚するか思考する。

 ルイボスさんの言う通り、女性サモナーは聖霊に好かれやすく、契約していることが多い。

 私も、契約している相手なら聖霊が一番多い。

 けど、せっかく見てもらうんだ。

 どうせなら見栄を張りたい。

 特にリクル君には、私の成長を知ってほしい。

 この広さだと限界だ。

 だったら……。


 私は空を見上げる。

 

「……よし」


 決めた。

 私はカバンから黒い結晶を取り出し、左手に握る。


「あれは黒石? 魔獣を召喚する際に使われる媒体だ」

「ってことは魔獣っすか。聖霊じゃないっすね」

「そうらしい。しかし……なぜ上を見上げているんだ?」

「さぁ? もしかして、空に召喚陣を作るんじゃないっすか? すっごくでかいのを」

「まさか。さすがにそれは――」


 左手を突き上げ、右手で支える。

 媒体に魔力を流し、召喚の呪文を唱える。


「巡れ、回れ、呼び戻せ――生と死の円環に牙を立てよ」


 巨大な召喚陣が展開される。

 王都の空を覆いつくすほど巨大で、どす黒い輝きで満たされる。

 私は集中している。

 誰の声も聞こえない……いいや、誰も口を開かない。

 ただ黙って、空を見上げている。


「【サモン】――ウロボロス」


 直後、稲妻が召喚陣に落ちる。

 光と力に満ち溢れ、天を裂くように大蛇が現れる。

 自らの尾にかみつき、円運動を続ける魔獣。

 ドラゴンに並ぶ世界最強の一角。

 生と死、永遠の時を司る大魔獣。


「ウ、ウロボロス!?」

「馬鹿な! 人間が契約できる魔獣じゃないぞ!」

「……はは、これは思った以上だな」


 空を見上げていた三人が、ゆっくりと視線を戻す。


「どう、でしょうか?」


 驚いてもらえたかな?

 納得してもらえただろうか?

 私がここで働くことを。


「す、すごすぎるっすよ」

「これがビーストマスター……なのか」

「規格外だな、セルビア」

ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります。

現時点でも構いませんので、ページ下部の☆☆☆☆☆から評価して頂けると嬉しいです!

お好きな★を入れてください。


よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
またまた新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~』

https://ncode.syosetu.com/n0951iq/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ