表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨーロッパの覇者が向かうは異なる世界  作者: 鈴木颯手
第1章【転移と戦争介入】
14/14

第14話「中小国家群2」

神聖歴1222年10月9日 中小国家群 ヘレル公国 公都ゲンデルン

 中小国家群の中央部に位置するこの国は昨日、アララシタス率いる2万の軍勢の内、コヴロス副将軍団5千の兵によって占領された。そして、この国の北部の国を落とせばベルー王国と接する所まで来ており、兵士たちの間でも緊張が高まっていた。


「な、なぁ。ベルー王国と戦争になるのか?」

「ベルー王国がそんなに怖いか?」

「いや、そうじゃなくてその後ろにいる神聖ヨーロッパ帝国だよ。噂じゃ俺らより高度な文明を築いているそうだぞ」

「自国をより上に見せようとしているだけだろ? 俺達はダルクルス大陸の覇者バルパディアだぜ? 俺らより文明が上の国なんている訳ねぇよ」

「だが彼の国との戦争を避けようとしている事からも少なくとも脅威と呼べる程度には強いんじゃないか?」


 兵士たちは神聖ヨーロッパ帝国の話で盛り上がり、本気で心配になる者、楽観視して戦争になってもいいと考える者、冷静に現実を見極める者など様々な感情があらわれはじめていた。


「いかんな。兵士たちが動揺しすぎだ」


 そんな兵士たちを見てコヴロス副将は侵攻の停止を決定した。これはベルー王国と領土を接する事で兵士たちの負担が更に大きくなると想定しての事だった。実際、西部に侵攻したディラネス将軍の兵たちはルクサンブール大公国にまで進出したために神聖ヨーロッパ帝国軍と相対しておりその為に多大なストレスを感じていた。とは言え武闘派であるディラネスはバルパディア本国やアララシタスが命じた攻撃禁止の命令に不服を感じていた。もし、この命令がなければ今頃神聖ヨーロッパ帝国軍に攻撃を仕掛けて戦争が勃発していただろう。

 しかし、アララシタスが統治する北方領は反乱防止の為に技術力は大したものがない。歩兵が装備する兵器も旧式の魔導銃、野砲も最新式の野砲の射程の半分と大して命中しない初期型の野砲しかない。中小国家群を含めダルクルス大陸の国々相手ならそれでも戦う事は出来るがバルパディア並みの技術と国力を持つと思われる神聖ヨーロッパ帝国相手には不利と言えた。


「神聖ヨーロッパ帝国とは交渉する必要があるか……」


 そもそも、今回の北伐はアララシタスが勝手に始めた事だ。それにも関わらずに神聖ヨーロッパ帝国と戦争になれば処罰は免れないだろう。


「総督に撤退や神聖ヨーロッパ帝国との交渉を提案してみるか」


 神聖ヨーロッパ帝国と戦争するにはまだまだ時間が足りないとコヴロス副将は考えている。北伐前であれば主な戦力は海軍となっていたが陸続きで接する可能性が出てきた以上陸軍にも力を入れる必要があった。その為には様々な方面での準備が必要不可欠と言えた。


「中小国家群の半数を条件にすれば彼らも無下にはしないだろうし……」


 副将としてアララシタスの補佐をしているコヴロス副将は政治家としての一面を見せながらアララシタスに提案する内容を固めていくのだった。








神聖歴1222年10月11日 神聖ヨーロッパ帝国 帝都神聖ゲルマニア

「一体バルパディアは何を考えているんだ?」


 対バルパディア戦略室と名付けられた部署において、署長のエドワードはバルパディアの動きに困惑していた。バルパディアが神聖ヨーロッパ帝国を警戒して情報を集めているように神聖ヨーロッパ帝国もバルパディアを、現状自分たちを脅かしかねない国家として警戒しつつ情報収集を行っている。

 その為に特別に対策室が造られた訳だがここに所属する全員が今回の北伐は予想外の動きだった。


「確かバルパディアは直轄領と幾つかの総督が統治する自治領で構成されていたはずです。今回の北伐は北方領が独断で行ったのではないでしょうか?」

「だがいくら何でも動きが可笑しすぎる。中小国家群を飲み込むのは別に可笑しくはない。だが、その補給路はぜい弱だ。見ろ、中小国家群と国境を接しているのはゼルシアとミティアに挟まれている部分だけだ。もし、この二か国が同時に攻め入れば補給線は分断されて侵攻している軍は孤立化するぞ。この5万の軍勢は北方領のほぼ総数に近い数らしい。となると北方はほぼ喪失する可能性が高い」

「だがゼルシアはともかくミティアが動かないのは不思議だな。何かしらの取引をしたのか?」


 北伐によって起きた事象と各国の動きを予測しながらバルパディアの動きを読もうとこの場の誰もが頭を巡らせる。それはエドワードとて同じだが彼は既に結論を出していた。


「どちらにしろ、一度バルパディアと話し合う必要がある。中小国家群は……、今回の北伐で消え去る。俺達かバルパディア、どちらかの勢力で二分されるはずだ。その国境線をどうするか、何処までをお互いに認めて諦めるか。戦争はそれからだ」


 翌日、様々な情報や考察内容を上層部に提出した。それらを基に神聖ヨーロッパ帝国はバルパディアとの会談を行う事を決定。その趣旨を伝えるために中小国家群に侵攻中のアララシタス総督に使者を派遣するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ