どっちの銃だ!
魔王様の消えた銃を探し、他の四天王にも話を聞いた。
ソーサラモナーとサイクロプトロールは玉座の間に近付きもしていないそうだ。あの二人とは会話シーンすら盛り上がらない。故に登場シーンが激減するのも致し方なしだ。
残る四天王、妖惑のサッキュバスに長い廊下の突き当りで問い掛けた。
「あーら、そんなに凄い銃ならわたしも見てみた―い」
「やめい! 凄い銃って……なんだ」
まだ昼だぞ。凄い銃って……44マグナムか。
「予の銃ぞよ」
「おやめください。そんなの言わなくても分かっていますから」
サッキュバスの頬は少し赤い。いつも赤い。片方の手には赤いワインがなみなみと注がれた大きな丸いグラスが握られている。
今日も昼間から飲んどる。
「魔王様の銃、わたしも欲しい~」
ベタベタと魔王様に触ってくるサッキュバスは距離感が近過ぎて怖い。
「欲しがるな――! 銃を欲しがるな――!」
冷や汗が出る。いったい何の話だ。
「銃の話ぞよ」
「ベレッタよ」
「……」
ちくしょー。その通りじゃないか。
「とにかく、どこかで銃を持っている魔族を見かけたら直ぐに知らせてくれ」
「分かったわ。銃を持っている奴がいるかどうか……片っ端から握って調べてあげるわ」
「……う、うん」
握って調べるって……なんだ?
「くれぐれも念押ししておくが、銃だぞ」
「分かっているわ」
だから、――ペロッと舌を出すな!
その後、スライム全員に問い掛けて回ったが誰も魔王様の銃を持っていなかった。
懐にも隠してもいない。半透明だから懐に隠していても見える。
「一発くらいぶっ放してくれたら音で直ぐに見つけられるのになあ……」
「おやめください」
楽観的な魔王様に頭が痛くなる。誰か怪我したら労災だぞ。
魔王城の階段を上がり四階の玉座の間へと戻った。早く見つけないと……今日も残業になってしまうぞ。
「ええやん。残業代が付くやん」
「おやめください。私は残業してまでたくさん給料が欲しいタイプではございませぬ」
「……いまふう」
褒められたと思っておこう。
玉座の間に戻ると、魔王様は玉座へと座られ私はその前に跪いた。
「魔王城内の魔族には一通り聞いたぞよ。もう見つからなくてもよくない」
「よくない……でございます」
消しゴムや鉛筆や黒色ボールペンを無くしたのとは訳が違います。
「銃に名前を書いておくべきだったか……」
「それは……」
どうだろう。普通、銃に自分の名前って書くのだろうか。
マジックとかマッキーとかで銃に自分の名前が書いてあったらドン引きだろうなあ……。ハリソンホードとかブルースウィリスとかエアロスミスとか……。
「しかもカタカタぞよ」
――カタカナ! 映画でチラッとそれが見えるシーンとかがあったら、逆に楽しめるでしょう。
「魔王様の銃にも『マオウ』と書いておくべきでした。カタカナで」
「やーめーてー」
魔王様が顔を隠して恥ずかしがる。
もし見つかったら銀色のペンで持ち歩くのが恥ずかしいくらい大きく名前を書いてやる。
触るとベタベタするくらい滲ませて書いてやる――。
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