スライムに銃
「もし、銃をレベル1のスライムが持ち歩いたら大変です。小学一年生に実銃に実弾を入れて渡すようなものです。もちろん男子に」
男子と女子で統計を取れば、おおよそ男子の方が問題を起こすことでしょう。遺伝子学的に。
「護身のためによいではないか」
物騒な世の中ですから……男子でも女子でも銃を持っていれば親御さんも一安心……。
「んな訳ないでしょ! 登下校中にたくさん無益な殺生が勃発します」
ちょっと気持ちの悪い虫とか……子供は躊躇なく殺害します。虫以外にも被害が及びます。子供の喧嘩が命がけの一発勝負になります――。嫌われている先生が……殉職します。
「たぶん……西部劇の映画は一切放送禁止になるぞよ」
銃を使う映画やテレビは子供達を果敢に刺激するに違いない。
「そうでしょうね。西部警察も放送禁止になるかもしれません」
冷や汗が出る、古過ぎて。
「小学生の話はともかく、もしRPGなどでレベル1のスライムが銃を持ち歩いていれば、どうです」
「勇者一行にやられずにすむぞよ」
「はい。万々歳です。つまり、序盤で勇者が瞬殺されまくります」
――スライムが現れた。スライムは懐から銃を取り出した。
スライムの攻撃。――パンッ。勇者は9999のダメージを受けた。勇者は倒れた――。
「貧相な防具では瞬殺されます。白のTシャツとかはもはや防具ではありません」
勇者一行が手にする最強の防具が、「防弾ベスト」「防弾ヘルメット」だと興醒めです。
「スライムは半透明だから銃を懐に隠し持つことはできないぞよ」
「う、うーん」
そういうことを言っているのではございません……。
「それに逆も駄目です。もし勇者が冒険の序盤から銃などを持ち歩いていれば、ソレはもはや勇者ではありません」
ジャンキーです。キョンシーではありません。冷や汗が出る、古過ぎて。
「だが、銃も剣も……同じような気もするぞよ」
銃も剣も……同じですと?
「……たしかに」
考えようによっては……いつも刃物を持ち歩いている勇者って……ちょっと危険人物かもしれません。
剣を持っているから迂闊に歯向かえません。村人とか町人とか。
「ですが、銃と剣は同じではございません。剣の場合は敵を倒すために近付いて剣を振ったり手に豆を作ったり汗をかいたり、研いだり舐めたり努力が必要になります」
「舐めるの? 剣を?」
「はい」
私もよく白金の剣をペロリと舐めて敵を威嚇します。
「顔ないやん」
――はうっ!
「そうでした……。いや、それよりも、剣ではなく銃の場合はどうでしょう。パンッ、勇者はスライムを倒した。経験値を手に入れた……って、そんな簡単に経験値を手に入れてレベル上がるな~! と怒りたくなります」
「なるなる! なるほど!」
「苦労して戦ってこその経験値なのです」
鼻くそをほじりながら片手でパンパン敵を倒してはいけないのです。
「最強の剣であれば、たとえ序盤で手に入れたとしてもそれを扱う勇者の力が弱いのでゲームバランスが崩れたりはしないでしょう。しかし、銃は度返しです」
最初から王様にサブマシンガン二丁を手渡されたら……もはやレベルアップの必要なしです。
「弾数を制限すればよい。五発のみ」
――! サブマシンに弾五発のみ? タタタタタ?
「……使いたくても使えない武器になります」
そのうち誰も持ち歩かなくなるでしょう。
「弾の切れた銃など、使い心地の悪い鈍器ぞよ」
「鈍器になるのでしょうか……」
攻撃力は弱そうです。
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