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16 三大公爵家と隣国の皇位継承権

「叔母上!」

「うふふ。久しぶりね、ギディオン」


 グルグルと縄で縛られ、ふてぶてしかったギディオンが、オロオロと狼狽しはじめたよ。

 ちと、笑ってしまう。


「「パーデン公爵夫人」」


 おおっ! この綺麗なマダムが、あのパーデン公爵の奥様だっていうの?

 あのオヤジ、なに考えてんだろ。こんなに綺麗な隣国のお姫様を奥さんにしておいて、女にだらしがないだなんて、世の独身男性を敵に回すね。


「レジナルド様、この度は本当にお手数をおかけしました」

「かまわん」


 出た。レジナルドの無愛想。


「カレン様、初めて御会いする場がこのようなことになってしまい、申し訳ございませんでした。しかし、カレン様のご協力で、すべてが上手くいきました。ありがとうございます」


 どういうこと? 協力って、私なにかしたっけ?

 いまいち、状況が掴めない。


 公爵夫人の後ろには、簀巻きにされたパーデン公爵やら、予想より早く到着したメイソンさんまでいる。

 ここまですべて、織り込み済みってわけね。


 どうも、レジナルドとパーデン公爵夫人にしてやられた感じだわ。

 私にメイソンさんを連れて来いって言われた人、そんなに体力使わずに済んでよかったけどさ。



「あの……、エミリア……」

「あら? どちら様かしら?」

「な、なっ」


 パーデン公爵が嫁のエミリアさんにズリズリすり寄ろうとしたけれど、一喝された。


「貴方とは離縁します! この、ドスケベデブ野郎! 今まで女にいくら金をつぎ込んだのよ! パーデン公爵家は私が切り盛りして行きますから、二度と私の前に現れないで!」


「あわわわ。お、お金って、わしの金じゃないか……」


 やめなって。火に油を注ぐだけだよ。


「だまらっしゃい! 公爵領のお金です! 貴方の私財ではない! さっさと失せろ、脂身!!」


 いや、激怒されて当然だと思うよ。よく今まで我慢してきましたね、エミリア様。



 ******



 パーデン公爵は、リリアナの父ダイアンの力が削がれたのを機に、妻エミリアの祖国リンコーク帝国から後ろ盾をもらい、ファンドブルグ王国の筆頭公爵家になろうとした。

 あわよくば、『神からのギフト』カレンと聖獣を手土産に帝国に取り入り、ファンドブルグ王国さえも手中に治めようなどと考えていたのだ。

 しかし、そのことを知った皇太子ギディオンは、パーデン公爵の目論見を逆手に取り、早急に王国を視察させろと持ちかけた。


 そして、ギディオンが自らの手で『神からのギフト』カレンと聖獣を、リンコーク帝国に持ち帰ろうと企てた。

 カレンの婚姻前ならつけ入る隙があり、自分が伴侶になれば、皇太子の地位は不動のものになると思ったらしい。

 それくらい、リンコーク帝国の皇位継承権を持つものは多く、ギディオンの皇太子の地位は危うかったのだが、本人の素行が悪く、馬鹿だったのでいたしかたない話だ。



 常々妹の嫁ぎ先での境遇と、馬鹿息子に頭を痛めていたリンコーク帝国の皇帝は、レジナルドと妹エミリアにパーデン公爵とギディオンの動きを報告した。


 ここから、レジナルドの悩ましい日々がはじまったのである――



 ******



「パーデン公爵夫人と計画し、ギディオンとパーデンを捕まえることにした。黙っていてすまなかった」

「そっか……」


 なら、婚約者の私にくらいは、話してほしかったな……。


「カレン。説明せず、本当に悪かった。お前は素直過ぎて計画を話せなかった」

「ぐぬぬ」


 グウの音もでないわね。計画を知っていたら、白々しい演技をしていただろうね。


「パーデン公爵家はエミリア殿が引き継ぐ。単純に、女性を政治に参加させたいというわけではない。エミリア殿もリリアナ嬢も、能力があったから決めたことだ」

「レジナルド……」


 ファンドブルグ王国に、女性公爵が二人も誕生するんだ。すごいことよね。

 私は同性だけれど、単純に女性の参画比率を上げればいいと思っていなかった。

 ただ、有能な女性が埋もれているのはおかしいとは感じていた。


 やっぱり、レジナルドって冷酷王じゃない。

 本当の為政者だよ。素敵……。私も、レジナルドみたいな政治家になりたい。



「ああ、ギディオン。お前の皇位継承権がなくなったと、リンコーク帝国より連絡が来た。そこの宰相の息子に確認するといい」


 偽ギディオンは、リンコーク帝国の宰相の息子さんだったんだ。色々お疲れ様だったね。


「ほ、本当か?」

「はい」


 みんな、白い目でギディオンを見ている。

 馬鹿皇太子に振り回されていただけだったから、護衛の人もやる気がなかったんだ。

 お陰で柔道技を、思いっ切りかけられたけどね。


「馬鹿なことをしましたね、ギディオン。兄上から、貴方を煮るなり焼くなり好きにしていいと言われましたので、レジナルド様とカレン様と貴方の処分を決めます」

「叔母上……」




 こうして、ギディオンは皇位継承権を失い、パーデン公爵は離縁され、爵位を失った。


 偽ギディオンたちは、肩の荷を下ろしたようにホッとしながら帝国に帰ったよ。

 お父さんの宰相さんと皇帝陛下に、ことの顛末を報告するんだって。

 きっと、そのうちまた会えるだろう。


 だって、ファンドブルグ王の結婚式が、ひと月半後にあるんだもん。

 本当、結婚前の大事な時期に、無駄な騒ぎだったわ~。




「カレン。この二週間、本当に辛かった」

「どうしたの?」


 なんでそんな切ない顔をしているの?


「カレンと想いを確かめ合う大事な時期に、離れる時間が多過ぎだった」

「そっか……。私も、レジナルドと話せる機会が減って、寂しかったよ。でも、会えない時間が増えたから、意外とレジナルドのことを好きになっていたって、気づけたんだよ」


 やだ、私のそんなに素直じゃない言葉で、レジナルドのグレイの瞳がキラキラ揺れている……。


「カレン……。もっとカレンのことが知りたい……」

「レジナルド……、私も……」


 綺麗な顔でそんなに見つめられると……。

 もしかすると、このまま私たちのファースト……




「カレンー! デグ太郎のブラッシング終わったぞー!」

「ギディオン……」

「アイツ……。やはり殺っておくべきだったか」


 皇位継承権を失ったギディオンは、叔母のエミリア・パーデン公爵所有となったタウンハウスから、デグ太郎の世話係りとして王城に出仕している。


「なんだ、お前らいい雰囲気だったのか?」

「「……」」

「そんな朴念仁より、俺の方が色々知ってていいぞ、カレン。今からでも遅くないし、帝国に行くか?」


 止めてくれ……。レジナルドが切れる……。あ。



 ――ドゴオオオォーン――




 ――ファンドブルグ王国の王城は、最強の結界が張られているので有名な城になろうとしていた。その理由は、せっかく甘さが増してきた王と、王への気持ちを自覚してきた婚約者に、隣国からの居候が横槍を入れるから……らしい――

第2章も読んでくださり、ありがとうございました。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2章完結、おめでとうございます。 『漆黒のドリル』リリアナ嬢につづき、エミリアさんも登場。強い女性が揃いましたね。 色々と解決して良かった(*´ω`*)
[良い点] 2章完結おめでとうございます! エミリアさんの罵倒が最高でした(笑) 脂身ww 3章も楽しみにしています!
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