未来 裏切りのレイス
「貴女も元英雄の一人だったんですね」
「ああその通りだ。アタシは当時隻眼の女帝と呼ばれていた元英雄さ」
5年前に皇帝カインからマリアさんと一緒に逃げ延びたらしいがその後どうしたんだろうか。
「何でマリアさんと一緒にいなかったんですか?」
マリアさんは教会には一人でいる様子だった。
「...アタシとマリアはカインから逃げた後、しばらく身を隠していたんだが。帝国の粛正部隊についに見つかってしまったんだ。」
「粛正部隊って言ってもマリアさんやグレンさんの実力であれば並みの帝国兵には遅れをとらないのでは?」
粛正部隊のLVでは2人をとらえるのは難しいことは俺でもわかる。
「並の兵ならばな。アタシとマリアを見つけ出したのは。レイス元枢機卿だった。何故かは分からないがアイツは敵として目の前に現れたんだ。粛正部隊の司令官として」
「...どうして」
仲間を裏切ったのか。
「まともに戦えばアタシたちに分があった筈だけど、アイツは帝国が教会から奪い去った筈の神剣クラウ・ソラスを持っていた。神剣や魔剣は適正のある者が使う事で超常的な力を発揮する。アタシはかろうじてマリアを逃がすことはできたが、レイスに敗れた。アイツはアタシの息の根は止めなかった。アタシはそれに何か意味があると踏んで自身を死んだことにして、クリスの預言に備えこうして地下で、密かなレジスタンスを作っていた訳だ」
「マリアさんに打ち明けることは考えなかったんですか?」
別に伝えても良かったんではないだろうか。
「アタシはあの玉座の間で3人に何があったのかを知らない。レイスがなぜ帝国に与することになったのか。なぜ皇帝カインはレイスを生かしているのか。クリスは死んだのか。ただアタシはクリスの言った預言を実現するために全員が行動してると信じたいだけさ」
「レイスさんも信じているんですか?」
自分たちを裏切り刃を向けた相手だ信じることができるのだろうか。
「ああアタシは知ってる。アイツの仲間を思う心を。信じてる」
「そうですか」
「クリスの預言が正しければ。実現されるのは今年。そして聖痕を持ったお前が現れた。言いたいことは分かるな?」
「ええ。俺が英雄クリスが預言した救世主ってことですね」
「ああそういう事だ、そして運命の分岐点それはきっとマリアの処刑だろう。それを阻止するのが今回のアタシたちの目的だ」
時間が限りなく少ないがやるしかない。
「とりあえずアンタは弱すぎる。今のままじゃ聖痕を持っていても戦闘になっても犬死するのが目に見えるからね。ちょっと地獄を見てもらうよ」
「え...」
そこは文字通り地獄だった。