未来 英雄
俺は無力だ。
マリアさんと関わった時間はそれほど長くない。
だけどマリアさんは俺の身を案じて抵抗せずに捕らえられた。
なんで俺なんか為に。
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どれほど立ち尽くしていたのだろう。
時間を浪費してしまった。
気づけばもう夜になっていた。
「聞こえるかダイよ」
突然脳内に男の声が響く
「だれだ!?」
「私は神だ。信じるも信じないもお前の自由だがな」
神、そんな者が本当にいるんだな。
まあ、ゲームだからありえないことは無いだろうけど。
「そんな神様が一体どうして俺に話しかけてきたんだ?」
なんとなく目の前の神像が喋っている気がして俺はそこに話しかける
「マリアを救いたくはないか?」
「助けられるのか?!」
助けられるならば助けたい
「私もあの娘には生きてもらわねば困るのだよ。だが私は直接この世界に干渉する術を持ってはいない。救うのであればお前自身の力が必要不可欠だ」
「どうすればいい?」
恐らくマリアさんの処刑まで時間はそう無いだろう。
「お前に私の、神の力の一端を授けよう。だが使えるのは一度だけだ、人間の身には過ぎた力だからな。2度使えば恐らく死ぬ。ここぞという時で使え」
光が俺に纏う。
そして身体の右腕に痕が刻まれた。
俺のステータスに新しいアビリティが現れている。
デウス・エクス・マキナ
一定時間神の力をその身に顕現させる。
聖痕
神の加護を受けた者の証
「これが神の力か」
言いようない力を感じた。
「私が干渉できるのはここまでだ。あとはお前自身の力でやれ」
それが神の最期の言葉だった。
なんだが外がざわついている。
俺は教会の外に出て様子を見てみるとそこには巨大な電光掲示板の前に人が溢れていた。
ニュースがやっているようだ。
「本日、禁教令に背いた罪で元英雄、聖女マリアを逮捕しました。聖女マリアの公開処刑は3日後の正午皇城の大広場で執り行われる予定です」
タイムリミットは3日後の正午。
それまでにマリアさんを救わなければ。
「お兄さん!ちょっとこっちにきて!」
若い青年が焦った様子で急に声を掛けてきた。
「ん?どうしたんだ?」
「いいからこっちに来て!」
そう言いながら青年は俺を裏路地の方へ引っ張っていく。
「この奥だよ!」
今度はマンホールを開けさらに奥へ行けと要求される。
「あ、ああ」
言われるがまま俺は中に入った。