4話
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探索者ギルドから出て、目の前を歩いていた清水さんに追い付いた。
「清水さん、どこに行くんですか?」
「なんだ清水さんって。敬語は面倒だからなしだ」
清水さんは、敬語があまり好きではないようだ。
呼び捨てや名前で呼ぶわけにもいかないので、師匠って呼んだ方が良いだろう。
「なら師匠!」
「うーん、まぁさん付けよりは良いだろ」
とりあえず師匠と呼ぶことを許された。
師匠と呼ばれることが嫌ではないらしく、嫌そうな顔はしていなかった。
「とりあえず装備屋に行くぞ。透の装備だとダンジョンに行けないからな」
「え、そうなんですか?」
「ふ、まぁ敬語はまだ仕方ないか。とりあえず着いて来い」
俺は、パーカーにジーパンと地味な格好をしている。
この前ダンジョンに入った時には、この格好だったけどダメらしい。
歩きながら話をしていると、目的地である装備屋に着いた。
この装備屋は、探索者ギルドからあまり遠くなく、歩いても行ける距離にある。
師匠が入ったのを見て、俺もそれに続いた。
「いろいろな装備があるんですね」
「まぁ、この世界も数年で変わったからな。装備もそれに合わせて作っているらしいぞ」
装備屋に入ると、たくさんの装備が置かれていた。
初心者用のものから目玉商品まで幅広く置かれていて、どれも初めて見るようなものばかりだ。
ダンジョンで必要となる防具なんかは、地味なものから金色に輝いているものもある。
剣と魔法なファンタジー世界になってから数年しか経っていないのに、品数はとても多い。
その多さからダンジョン用の装備は、需要がとてもあることが分かる。
「いらっしゃい」
師匠と話をしていると、店の奥から人が出てきた。
声の方を見ると、40代くらいのおじさんが立っていた。
おそらくこのおじさんが、この装備屋の店主だろう。
「よー、また来たぜ」
「今日は何しに来たんだ?」
「透、こいつの装備を整えにな」
師匠は、俺の頭に手を乗せた。
その乗せた手で、俺の髪の毛をくしゃくしゃにしながらそう言った。
会話の様子を見ていると、師匠と店主は知り合いのようだ。
「ってことは探索者か。珍しいな」
「あぁ、貴重な人材だ。だからその分安くしてくれよ」
「それは考えておく。好きな見な」
店主はそれだけ言うと、案内もせずに店の奥へと行ってしまう。
多分だけど、俺の装備選びは師匠に任せても大丈夫と言うことだろう。
師匠と装備屋の店主には、それだけの関係性はあるみたいだ。
「ところで透、探索者にどんな装備が必要だと思う?」
「うーん」
師匠は質問して来た。
探索者に必要なのは、防御力だろう。
特に俺みたいな戦闘向きのスキルを持たない探索者では、モンスターと戦うことは出来ない。
「防御力の高い装備ですか?」
「外れだな。探索者に必要なのは機動力だ。防御力が高くても、動き辛い装備なんかは必要ない」
「それだとモンスターはどうするんですか?」
「あたしたち探索者は、冒険者とは違う。戦う必要なんかはない。だから動きやすさ重視の軽装備なんだ」
師匠の話を聞いていると、探索者に戦闘用の装備は必要ないらしい。
探索者は冒険者とは役割が異なり、求められる装備も変わってくる。
探索者に求められるのは、戦闘することではなくて情報を集めることだ。
戦闘をして労力を使うよりは、戦闘を避けてより多くの情報を持ち帰るのが求められる。
そのため、ダンジョンの中を身軽に動き回れる軽装がおすすめらしい。
「そうなんですね」
「あぁ。初心者はそこを勘違いして、無駄に戦って命を落とす奴もいる。あたしたちは冒険者じゃなくて、探索者であることを忘れたらダメだ。」
「俺も師匠に言われなかったら、分からないままでした」
「まぁ、そのための指導者だ。あたしが言ったことを考えながら、装備を探してみな」
師匠はそれだけ言うと、店内を見始めた。
俺も師匠に言われた通り、装備屋を見ることにする。
装備屋には、たくさんの装備があった。
強力な防具からアクセサリーのようなものまであり、どれも見たことのないものばかりだ。
これも剣と魔法なファンタジー世界になってから、作られたものだろう。
ゴブリンやスケルトンを使ったものから、ドラゴンを使ったものまであるらしい。
どれもまだ見たことのないモンスターばかりで、わくわくしてくる。
「高っ」
興味本位で、ドラゴンを使った装備の値札を見た。
その値札の桁を見て、驚愕する。
卒業まで近いとは言え、まだ学生である俺には到底払えない金額だ。
「当たり前だ」
声がした方を見ると、先ほどの装備屋の店主がいた。
「そこにあるのは市場に出回っている数が少ない装備や、ランクの高い人向けの装備だ。初心者には手が届かないのは当たり前だ。」
どうりで高いはずだった。
店主が言った通りでこの場所は、高ランク冒険者向け装備と書かれた札が置いてある。
店内の違う場所を見ると、初心者向けと書かれている所もあった。
どうやら見る場所を間違えていたみたいだ。
「初心者はこっちにあるカーボン製がオススメしている。耐久性はさっきのと比べると劣るが、何より値段が安い」
「あ、本当だ」
店主と俺は、初心者向けコーナーに移動した。
そこの値札を見ると、決して安い金額ではないけど、これなら今の俺でも払える。
「これものすごく軽いですね」
「カーボン製は軽くて丈夫だからな。この装備は探索者向けに作られているから、より軽いんだ」
「へぇー、そうなんですね」
初心者コーナーと書かれているこの場所にも、冒険者向けと探索者向けでコーナーが分かれている。
店主が案内してくれたのは、探索者向けだったらしい。
「初心者はこれでも買っておけば間違いないぞ」
そう言って見せてくれたのは、マネキンに服が着せられているものだ。
初心者セットと書かれていて、服一式に靴まで揃っている。
しかも、値段はとても安くて良心的だった。
「なんでこんなに安いんですか?」
「探索者は人手不足だからな。原価ギリギリ、下手したらマイナスぐらいで提供してるんだ」
これだけ安いのは、それだけ探索者がいないと言うことらしい。
貴重な人材を育てるためにも、安い値段にしているみたいだ。
そして、探索者ギルドからも多少の支援があってこの値段にしていると店主は言っていた。
「おーい透、装備は決まったか?」
店主と話をしていると、師匠がこっちに来た。
どうやら師匠の方の用事は済んだみたいだ。
「はい、装備はこのセットにします」
「お、初心者セットか。これなら間違いねぇな」
「バカ言え、ここに間違いのあるものなんか置いてるわけないだろ」
「それもそうだな」
師匠と店主は、笑いながらそうやり取りをしている。
現役の探索者である師匠も認めるくらいの装備なら、安心しても良いだろう。
「ほれ透、手袋と鞄だ」
師匠はそう言うと、手袋と鞄を渡して来た。
途中でいなくなったのは、これ探していたからのようだ。
「師匠、これ高そうなんですけど......」
「ここでの会計はあたしがしてやるから気にするな」
師匠から渡された手袋は、どう見ても安物では無かった。
高級感のある黒い手袋で、少しの衝撃や刃物でも切れなさそうな物だった。
「こうしてみると、黒多いですね」
「そりゃ仕方ないさ。初心者は好きに装備を選べないし、安いのは地味なのが多いからな」
「オーダーメイドも出来るが、その分高くなるぞ」
そう言うと師匠はレジの方へと向かった。
俺の装備は、上下黒に靴手袋も黒だった。
師匠が持ってきたウエストポーチも、黒に近い色で地味である。
ウエストポーチなのは、大きい鞄だと邪魔になるし、出し入れが大変だかららしい。
何があるか分からないダンジョンでは、すぐに出し入れ出来る鞄が良いみたいだ。
店主のおじさんが言っていたみたいに、いつかはオーダーメイドしてみたい。
ダンジョンに潜っていく中で、起床なアイテムをゲットして作って貰いたいな。
「よし、装備は整ったな。次は魔道具に行くぞ」
俺が考えごとをしている間に師匠は、会計を済ませていたらしい。
師匠はそう言うと、店の外へと歩き出した。
次に向かうのは、聞いたことのない魔道具屋という店らしい。