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どうくつのプリズム  作者: 心環一乃
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ちょうちょになるまほう

 翼を広げた大きな鳥さん――オオトリさんのすがたを見て、子供は足をふみこみました。立ち上がろうとしたのです。両足をふみこんで立つと、空をとんでいるオオトリさんに顔を近づけることができました。


 オオトリさんは"テレビ"でも"ずかん"でも見たことないような鳥さんでした。どこかクジャクっぽいですが、色がちがいますし、なによりクジャクはまぶしく光ったりはしません。


「オオトリさん」子供はおとうさんおかあさんに頼みごとをするような声でオオトリさんに話しかけました。

「なにかな?」

「おともだちがいないんです」子供はいちばん気にしていたことを尋ねました。そうです、洞窟にいっしょに来た3人のともだち。いったいどこへ行ってしまったのでしょう?

「大丈夫。わたしがお友達のところへつれて行ってあげるから」

 オオトリさんはやさしい声で子供にこたえました。それを聞いた子供は、少し安心したあと、すぐ第二のしつもんをぶつけました。

「どこにいくの?」

 オオトリさんはちょっと首を下ろし、頭を近づけて答えます。


「この洞窟の出口だよ。ここはね、きみたちが入ってきた洞窟の隠し部屋なんだ。ちゃんとした道を通らないと出られない。その証拠に、後ろを見てごらん? 出口はないだろう?」


 オオトリさんに言われて子供はハッとして後ろをふりむきました。オオトリさんのいうとおりです。外にでるための出口が見えません。どうやらここはかんぜんに洞窟の中みたいです。


「ここから舞台をいくつか通っていけば、きみたちが入ってきた洞窟の入口に帰してあげられる。お友達とも合流できるよ。さあ、時間がない。幕が下りる前に出口にたどりつかないと。準備はいい?」

「うん」


 子供がうなずくと、オオトリさんは頭を子供のほっぺにくっつけました。ふさっとしたかんしょくにからだが浮き上がったとき、子供はあることに気付きました。足が地面についてません。見おろしてみると地面ははるか下にありました。

 それだけではありません。からだが風にゆられるふしぎなかんかくに子供はとまどいます。ふらふらと地面におちそうになるのです。そこにオオトリさんの声が聞こえてきました。


「はばたいて。きみは今、蝶になっているんだよ」


 おちている中聞こえた声。子供はうそだとおもいましたが、それはほんとうのことでした。

 おちようとしている地面のすぐ先のみずたまりに、おちかけているちょうちょのすがたが見えたのです。


 はばたきかたなんてわかりません。とりあえずせなかにちからを入れて地面からはなれようとふんばりました。するとどうしたことでしょう。地面があっというまにとおざかり、からだがふぁっと浮きあがりました。しばらくしてからおおきくなったオオトリさんのそばに寄ることができました。オオトリさんはだまって翼をひろげ、ちょっと先のほうへ飛んでいきます。子供はひっしに追いかけました。じぶんのからだよりもおおきなオオトリさんの頭まで追いつき、オオトリさんとおなじところを見ると――。


 オオトリさんのとなりにちょうちょがいっぴき、ならんでいるのがみずたまりに見えました。

 すがたが変わってびっくりする子供にオオトリさんが言いました。


「この先は人間さんのからだじゃ大きすぎるから、蝶にする魔法をかけたんだ。じゃ、ついてきてくれよ、これから出口まで、順番に案内するからね」


 オオトリさんがしずかにゆっくりと、あかるい洞窟の中、先の見えないくらい穴へと飛んでいきました。ちょうちょとなった子供も後をおいかけます。

 正直わからないことだらけですが、じぶんひとりではなにもできません。ついていくしかないのです。子供はいっしょうけんめい羽ばたいてオオトリさんに追いついて、最初の穴へと入っていきました。

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