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どうくつのプリズム  作者: 心環一乃
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わるだくみとどうくつのオオトリ

「さあ、もうおやすみなさい。明日は遠足の日ですよ?」

 おかあさんに言われた子供は、ベッドの中に入りました。そうです、明日は楽しみにしていた遠足の日。ともだちといっしょに4人で洞窟を探検するのです。おとうさんとおかあさんたちがガイドの人を見つけてきてくれて、遠足の"きょか"を取ってくれました。

 この町には普段"がくしゃさん"と"カメラさん"しか入ることのできない洞窟がありました。そのとき"カメラさん"が撮ってくれた洞窟の"しゃしん"を見た子供たちはそのきれいな景色にときめいてしまったのです。それから毎日子供たちはおとうさんとおかあさんに洞窟の中に入ってみたいとお願いし続けました。そのお願いが叶ったのです。とてもうれしいことでした。


 しかし子供たちはまちきれませんでした。うれしすぎたのです。楽しみにしていることがあるといつまでたってもねむくならない――子供たちはそのことを知っていました。そこで子供たちは、ある"わるだくみ"を計画していました。


 それは、夜中に家を抜け出して、子供たちだけで洞窟へ行こうという、ちょっときけんな"プラン"です。


 夜のはじめには地平線にあった月が、高く登った夜更け……子供は家を抜け出しました。

 布団から抜け出して、隠してあった服に着替えて、窓から抜け出して、靴を履いて、懐中電灯を持って、洞窟へ向かいます。小さな街灯の光に照らされた"どうろ"を歩いて洞窟のある公園に着きました。入口ではいっしょにわるだくみをたくらんだともだちがすでに3人、待っていました。


 子供たちは4人そろうと、さっそく洞窟へ向かいます。くじらの口より大きな洞窟の"いりぐち"は、まっくらでなにも見えません。子供たちはうなずきあって、いっせいに懐中電灯をつけます。

 するとどうでしょう、洞窟の中は一瞬にして星空を閉じ込めたようなキラキラでかがやきました。上から下へのびるつららみたいな石。その先っぽから水のしずくがポタリ、ポチャリと洞窟のみずたまりに雨のように落ちていきます。たくさんのまあるいみずたまりは黄緑色に光っていました。


 きれい――子供たちはじぶんたちの心臓がこうふんしているのがわかりました。

 しかしなんだかおかしいのです。洞窟の中、外にくらべてなんだかさむく感じます。

 どうしてだろう――子供たちが腕をさすりながらおもった時でした。

 

 ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。


 洞窟の中からとつぜん、すごい風が音をたてて、子供たちのいる入口に向かってふいてきました。

 その瞬間、子供たちの持っていた懐中電灯は、ぜんぶ消えてしまったのです。

 目の前がまっくらになり、風にたおされて、子供たちはその場でしりもちをついてしまいました。

 ですがすぐには動けません。風がずっとふいているのです。おこっているみたいに。

 子供たちは思わず頭を抱えてしゃがみこみました。風がやむまで、ふせていました。


 ようやく、風がやみました。

 子供たちはお互いに声をかけあいます。「ねえ、そこにいるの?」と。

 しかし困ったことに3人のともだちはだれも返事をくれません。子供はこわくなりました。懐中電灯をつけて洞窟をでようとしました。そのとき。


 洞窟に明かりがともりました。懐中電灯をつけていないのに、です。

 まるでおひさまのような明るさにおどろく子供。自分のまわりもちゃんと見えます。

 するとやっぱりともだちのすがたが見えません。迷子になったんだ――子供はそう直感しました。

 子供はどうしていいかわからなくなりました。目からなみだが出そうになります。するとそのとき。


「おどろきだ。とても小さな迷子さんだね」と声がしたのです。


 子供は声のしたほうをふりむきました。そこにいたのは、色鮮やかな鳥さんでした。

 まぶしいものを見る子供の前で鳥さんははっきりしゃべりました。


「わたしは"オオトリ"、この劇場の案内役だよ。きみたちのような人間さんに自然の声を聞かせてあげるのが、わたしの役目だ」


 オオトリさんはそう言って、翼をバサッと羽ばたかせました。

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