実技試験の迷宮 その一
あれから1日が経ち、ようやく目的としていた学院『ロザリア剣術学院』についた。
(やっと着いた……)
初めてこんな歩いたことで未来の体は限界を超えており、さっさと入学届けを出し、近くの宿で寝ようと未来は考えていた。
未来はロザリア学院の校舎の中に入り、受付の女性の先生に願書を渡す。
「ヨシザワ・ミライ。君が、か。」
「え?」
「うちの生徒から聞いているよ。昨日、子供がオーガに襲われそうになった時助けようとしたんだろ?」
「ま、まぁ。でも、すぐにやられて結局駆けつけた人がやっつけましたけどね。」
「だが、その勇気ある行動は君の歳頃だと大抵はできない。自信を持て。」
「は、はぁ。……それよりここの生徒が俺の事を見てたんですか?」
「ん?あぁ、うちの生徒の制服を見てみろ。」
「あ–––」
未来はたまたま通りがかった生徒を見る。その制服は黒と白がバランスよく使われており背中には大きな十字架が描かれていた。
「あの制服は––」
「そうだ。オーガを倒し、君を助けたのはうちのロザリア学院の生徒だ。」
「そ、そうだったんだ……」
未来は驚愕を隠せずにいると、先生は話を続ける。
「ま、君がこの学院に入れるかはまだわからないが、楽しみにしているよ。」
「はぁ–––それじゃ失礼します。」
(ヨシザワ・ミライ–––これからどんなもの見せてくれるか……楽しみだな。)
***
未来は宿にチェックインをし、実技試験までの残り一か月をすごす。
その間に椿に教えて貰った特訓を怠らなかった。
(剣を振るスピードがかなり上がったし、以前と比べて軽く感じる。なかなか良くなってきたんじゃないか?)
未来の中に少しずつ自信が生まれていき、さらに努力に勤しむ。
そして実技試験当日になる。
***
未来は支度を済ませ学院に向かっている途中、突然声をかけられる。
「あの!」
「へ!?な、なんですか?」
未来は声がする方へ向くと声の正体は未来と同じ歳くらいの少女だった。
背丈まで伸びた艶のある赤い髪。まっちりと大きく可愛らしい蒼目。背は未来より少し低く、全体的に見ればおっとりしていそうな少女だ。
「君も、転入希望?」
「そ、そうだけど……」
「なら、私と一緒だ!お互い頑張ろうね!!」
「う、うん!」
突然の出来事に心臓の鼓動が大きくなっている未来をよそに少女は学院へ向かっていく。
(––––俺も早く行かないとな。)
未来は少し早足で学院に向かった。
学院についた未来は実技試験が行われるグラウンドに向かっていた。
だが、未来が想像していたグラウンドとはかけ離れていたものだった。
「は––––はあぁぁっっ!?」
それは学院の外にある町と全く変わらず、建物、川、畑が広がっており、何もかもがおかしく思えた。
そこに以前の先生が現れる。
「安心してくれ。これは幻覚だ。今から君達にはこのグラウンドに入り、奥にある出口に向かって欲しい。出口にたどり着けた者は実技試験合格だ。」
その場にいたみんなは「あれ?意外と簡単じゃね?」「合格間違いなしだな。」「ちょろすぎ!」と言っているが未来は何か嫌な予感がしていた。
(剣術の学校でそんな試験って普通ありえないだろ?)
未来の嫌な予感は的中し、先生はニヤリと笑う。
「だが、この幻覚の中には本物に近いレベルの魔物がいる!幻覚だからって油断はするなよ!!その魔物は物理的にではなく精神的な攻撃を与えてくる!攻撃をくらったらただではすまないぞ!!」
未来は辺りを見渡す。
(さ、さすがに攻撃をくらった人を放っておくわけが無いし誰か救助係とか––––––いない!!?)
「だから本気で取りかかって欲しい。」
転入希望者は身を震わせ、ここに来たことを後悔したような顔をする。
「制限時間は1時間だ。それでは始め!!!」
始まりの合図は突然だった。




