表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイグローストーリー〜無能少年が英雄になるまでの物語〜  作者: カイザ
一章 一部 根暗な少年
2/16

神か悪魔のイタズラ

いつも通りの日常。

学校は一人で過ごし、誰とも喋らずに家に帰る。


そのはずだった。


吉沢未来は下校中、一人で呟いた。

「–––つまらない」

変わらない日常に未来は飽きていた。

何か変わらないものかと。ただ願うのみ。


その願いを神様か悪魔かはわからないがその願いを聞き取ってしまった。



横断歩道を渡る最中、前にいた少女を見つける。

(春野椿……)


彼女は勉強も運動も出来る。それがただの才能だったら吉沢は興味を持たなかった。

だが彼女は努力をして勝ち取ってきたのだ。コツコツと努力を積み重ね、出来るようになっていたのを吉沢は見ていた。


横断歩道を渡っている最中、トラックが猛スピードでこっちに突っ込んでくる。


(つまらない人生だったな。)


未来はまだ間に合うにもかかわらず諦めていた。


「危ない!!」

そう言って一人の少女がこっちに向かってきた。


それは春野椿だった。


轢かれそうになった未来を助けにこっちへ来たのだ。

(ほんと。バカなのかいい奴なのかわからないな。こいつは)


しかし、椿の助けは間に合わず。さらに椿も巻き添えに未来と椿をトラックは勢いのままに轢いた。




***

目が覚めるとそこは見慣れない場所だった。


(どこだここ。)


中世を思わせるような建物と自然。未来はこの状況をなんとなく察していた。


(異世界転生ってやつか?)


暇つぶしに軽く読んだ小説を見て学んだ知識を思い出す。


(どうやって家に帰れるんだこれは?)


未来にとって家は唯一の居場所だった。

他のみんなとは違い、暖かく迎えてくれる家族。それが未来を支えてくれていた。


だが、今は異世界。帰る方法がわからない。


(そういえば、春野も俺と一緒に……)


未来は頭を抱え、状況を思い出す。


 青信号にもかかわらず向かってくるトラック。

 俺を助けようとする春野。

 それも遅く、轢かれた春野と俺。


(それじゃ春野もここにいるのか。)


確証は無いがなんとなくそういう気が未来にはしていた。


(とりあえず、歩いてみるか。)




 食べ物や武器を屋台に出し、それを売っている人達が多く、おそらくここは市場的な何かだろうと未来はそう思っていた。


(さすがにこの金は使えないよな)


財布から千円札を取り出すがすぐにしまう。


(どうするか……)


と。未来が目的を失っていた時。


「あれ?君って……」


一人の少女が俺に声をかけてきた。


 栗色で肩までかかった長い髪。

 まだ発展途上の胸。

 そして、俺を見つめる綺麗なその瞳。


「春野…椿––さん。」


未来は同学年の中学1年生にもかかわらずさん付けをしてしまう。


「やっぱり君って未来くんだよね!?」


(俺の名前知ってだんだ。………喜んでいいのかな。)


「あ、あぁ。そうだよ。」

「よかったー。無事だったんだね!」

「まぁ、一応。」

「それにしてもここ、どこなんだろう。」


(こんな俺にもこんな自然に接してくれている……)


「多分。異世界だと思う。」

「異世界?」


未来は小説で学んだ知識を椿に話した。


「でも、空想の話だけど。」

「それでも、状況が一緒だし、ほんとに異世界なのかも……」


椿は首を傾げ、考え込むような仕草をする。


「それで、異世界にきた後、する事って何かな?」

「それは––––」

「それは?」

「クエストとか行ってお金稼ぎとか?」


未来もいまいちわからなかった。

クエストとは言ってもそもそもそんなものすらあるのかわからない。


「––––とりあえず、クエストが貼ってそうな場所を探さないと。」

「そうだね。じゃあ探そうか!」



そして未来と椿は町を歩きまわり、掲示板を見つけた。


「これってクエストじゃないの?」

「え?どれ?」


未来は椿が指す掲示板を見る。


(スライムの討伐。確かにクエストだ。)


未来はクエストの張り紙を手に取る。


(それにしてもスライムとかいるんだな。)


「確かに。それにこれなら俺達でも勝てるじゃないかな?」

「うん。早速……あっ。」

「えっ?ど、どうしたの?」

「この紙よく見て。」



『スライム討伐求む。

 数は三匹。倒し終わったら鍛冶屋のアレンに報告 お願いします。

受注金200マル 報酬金 600マル』

                        

「あっ…」


クエストをするにはまず、受注金が必要なのだ。

その事実を知った未来は。


「な、何か売れるものとかないかな?」

「う、うーん」


椿は考え込んだ後、はっといい案を思い浮かんだような顔をする。


「スマホ売ったら?」

「スマホ?」

「そう。スマホって色んな機能あるし、高く売れると思って。」


(確かに。スマホってこの世界には無さそうだし、売れるかもしれないな。)


「うん。売ってみよう。」


そう言い未来と椿は色んな物を買い取ってくれる店に来ていた。


「すみません。これ売りたいんですけど……」


未来はポケットに入っていたスマホを取り出し、店員のおじさんに渡す。


「おう。––––ってなんじゃこりゃ!お前、これはなんだ!?」

「スマホって言うんですけど。」

「スマホ!!スマホか!凄いなこれは!!わかった!3万マルでどうだ!?」


3万マル–––つまり3万円で引き取ってくれるとおじさんは言っていた。


「………まぁ、わかりました。」

「よし!それじゃ受け取れ!!」


そう言われ未来は素直を3万マルを受け取る。


(もう少し欲しかったな。)


「やったね。それじゃクエスト受けに行こうか!」

「うん。そうだね」



未来と椿はクエストの紙をアレンの鍛冶屋に持っていきクエストを受注した。

そして鍛冶屋のアレン・バートに三つの瓶を渡される。

どうやら不正が起きないようにモンスターを倒した後、モンスターの一部を瓶に詰め、見せないといけないらしい。


(以外にちゃんとしているな。)


「それじゃあ行こっか。」

「武器無いけどどうするの?」

「あっ」


今の言葉を聞いてたアレンは。

「お前ら見たところ初めてクエストに行くっぽいよな。なら、この武器をくれてやるよ。」

そう言いアレンは鉄で出来た剣を未来と椿に渡す。


「ありがとうございます!あらためて行こっか。」

「うん。言っておくけどあまり期待しないでね。」





***

町を出て少し先にある草原。


未来と椿は剣を構えながらスライムを探していた。


(結構重いよなこの剣。)


思っていたよりも剣が重く、未来には剣を持っているだけでやっとだった。

それに比べ椿は軽々と剣を持ち、辺りを警戒している。


(やっぱり俺には………)


「ん?」


椿は何かを見つけたのか目を細める。


「春野。何か見つけたの?」

「うん。ほらあれ。」


椿は茂みに指を指す。

その茂みには液体状の何かがついていた。


「あれがスライム?」

「た、多分」

「それじゃ私はあのスライムを倒すから君は他のスライムを探して!」


そう言って椿は茂みのほうへ走り去っていく。


(俺も探さないとか。)


未来は他の茂みを探しながら警戒を怠らない

そして未来は茂みの奥、森へ続く道にスライムを見つけた。


(こいつか。)


未来はおぼつかない様子で剣を構える。未来にとって初めての経験でおまけになんでもやっている椿とは違い、武道の心得もなく、運動すらまともにできない。


(よし、やってやる。)


スライムのもとに近づき、勢いのまま剣を振り下ろす。

だが、スライムはそれをボヨンとはね返し、今度はスライムが襲いかかる。


「あ、あぁ!!」


スライムは未来を飲み込み、捕食を開始する。

じっくりと溶かしていきながら、未来を食べる。それを理解した未来は恐怖に震えて抵抗すら出来なかった。


(俺、こんなスライムにやられて終わるのか。ほんとつまらないな。)


辺りがスライムの中で透けていた辺りの世界もついに闇に呑まれていったその時。


一筋の光が闇を切り裂いた。


徐々に未来は身動きができるようになり、スライムから解放された。


「大丈夫!?」


一つ、懐かしいような声が未来にかけられる。


「春野……」


春野は再び剣を強く握り、スライムをスライスするような手際の良さでスライムを斬りつけていく。


「もう大丈夫だよ。」

「…………」


自分と春野との圧倒的な差。これまでもの努力が生きた椿とは違い、なんの努力もしてこなかった未来は自分の無力感に打ちのめされていた。


(俺は、俺は……)


「俺は英雄にはなれないよ。」


未来ボソッと呟きはそっと剣を置き、赤く焦げた夕焼けを見る。

わかっていたんだ。こんな非力で無能で根暗な自分が何かを変えるなんて出来るわけがない。


今までだってそうだ。


何かあったらすぐに環境や人のせいにして、自分を変えようとしなかった。



「ごめん。やっぱり出来ないや。」

未来はそう言った後、椿の元から離れようとする。

「逃げないで。」

椿は未来を呼び止め、話し始める。


「出来ないなら出来るまで頑張ればいい。そんな簡単に諦めないで。」

その言葉は未来の心に刺さる。

それもそうだ。椿は学校でも勉強もでき、運動もできた。それは才能ではなく、ひたすらに努力をしてきたからだ。

それを横で見てきた未来はそんな事はできないとより一層強く根暗になり、そして椿に嫉妬していた。



わかっていた。ただ努力をしたくは無かっただけなのだと。それなのにあんなに必死に努力していろんな物を掴んでいく椿に嫉妬していた。


そんなのは怠惰で傲慢なのだと。


「君もまだ諦めないで。またあの世界へ帰りたいんでしょ?」


 あの世界に帰りたい。

 家族に会いたい。


その言葉に未来は––

「––––わかった。俺も努力をして、強くなって–––

そしてあの世界に帰る。」

「うん。頑張れ!」


そしてこの瞬間。吉沢未来の時間がようやく動き出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ