自分の過去
エレノア先生は未来が無事だと確認し一息つく。
「はぁ……精神世界に一番遅く入り、一番早く戻って来たか。」
「す、すみません……」
未来は顔を下げ、小さな声をだす。
「こればっかりは何回もやって乗り越えていくしかない。あっちで何かあったとしても今のお前には何も危害を受ける事は無いから落ち着いてやれ。わかったな?」
「はい……」
「この実習は一日一回までだ。今は休め。ミライ。」
***
授業と部活を終えた未来は寮に戻り、ベッドに倒れていた。
知らない記憶と思い出したくない記憶。
その二つが頭から離れず、未来を苦しめていた。
(あの記憶はなんだったんだ……)
崩れていく世界。光りとなって消えていく人達。目の前にいた少女。後悔に苦しんでいる俺の声。全て俺の記憶には無い出来事だった。
(そしてあの記憶………)
今も未来を苦しめている記憶。
あの記憶はもう未来から消えることはないのだろう。そう思うぐらい未来には辛い出来事だった。
(この二つを乗り越えろって事か?………出来るのか?)
どんどん不安になってきた。記憶から消したくても消せないぐらいのトラウマ。さらにもう一つにとっては身に覚えがない。
未来にとっては困難を越える困難。
「今日はもう寝るか。」
未来は考える事をやめ、目をつむり、睡眠に入る。
***
次の日もスキルを習得するための実習があった。
今回も精神世界に飛び込む。そのために俺は水晶に魔力を注ぎこんだ。
(どこだ?ここは?)
気がつくと、辺りは何もない草原が広がっていた。
(これも知らない記憶。)
「ミライ、どうしたの?」
隣から不意に声をかけられ、肩をびくりと震わせる。
「いや、なんでもないよ。俺の故郷のことを思い出していたんだ。」
俺はまた勝手喋り出し、隣にいる人物に顔を向ける。
その少女は昨日の実習で見た記憶に無い少女だった。
(昨日の………だとしたらこれは昨日のより前の出来事なのか?)
「ミライの故郷か………この世界を救う事が出来たら行ってみたいな。」
(世界を救う?だとしたらここは異世界なのか?でも、俺はこんなところに来た覚えがない………)
「あぁ、必ず救う。そしてアイリスに故郷を案内するよ。」
アイリスと言われた少女は「うん。必ずだよ。」と言い、頬を赤くする。
場面が変わり、ダンジョン内と思われる場所に来ていた記憶の俺とアイリスは、武器を持った人達に囲まれていた。
「こ、この人達も魔王に支配されていたのね………」
「…………そうだな。でも、この世界を救う為にはやるしか無いんだ。」
俺はそう言い、手に持っている剣で次々と人々を斬り捨てていく。
その後も、場面は変わり、人々に裏切られ、その度に俺は剣を振るっていた。
仲間だと信じていた者の裏切り、すり減っていく人間としての心。
今の俺にはとても見てられなかった。こんな事を俺は経験していたのか?
そこで、意識は途絶え、気がつくと、辺りの景色は俺が精神世界に飛び込む前にいた実習室だった。
「今日の実習はこれまでだ。明日に向けて体を休めろ。」
「エレノア先生。」
「ん?どうした?ミライ。」
「この実習の事で質問なんですが………」
「どうした?言ってみろ。」
「この実習で知らない記憶が出てきた場合はどうすればいいんですか?」
「知らない記憶?………スキルを習得するには過去のトラウマを乗り越える………もしかしたらその記憶に中にトラウマがあるのかも–––––。まずはその記憶を思い出していくしかないな。忘れていた記憶を呼び覚ます事で何かをつかめる事があるかもしれんしな。」
「…………わかりました。」
「あっ、そうだ。今日から3日間、部活動の活動でロステリアに行く。ティアラとガルガに伝えておいてくれ。
「はい。」
そうして、実習室を出て、先に出て行ったティアラとガルガの後を追った。




