未来と学院生活 その四
翌日。
入部届けをだそうと思っていた未来だが、今日は休日だと気づき、入部届けを諦め、なんとなく辺りを散策していた。
町は賑やかで、川辺では子供が遊んでおり、商店街では主婦がお買い物をしている。
(平和だな……)
異世界と言えば魔王に侵略をし、世界が危機的状況というのを未来は想像していた。
(まぁ、平和が一番いいんだけど。)
だが、その平和は少しだけなのだと未来は知る事になる。
「て、帝国兵士様が来たぞーー!!」
突然の叫びに少し驚い未来は声の方向に顔を向ける。
そこには鎧をつけた兵士が数人がこっちに向かって来ており、町の人は隅の方へ移動し頭を下げていた。
未来も慌てて町の人と同じく隅で頭を下げる。
(なんだ?どういう状況なんだ?)
兵士が通り過ぎた後、町の人達が顔を上げ、愚痴を吐いていた。
「みんなの安心安全の為とか言っておいて、本当は自分に楯突く奴らがいないか見張ってるだけだろ!」
「あぁ、違いねぇ!!なんせあの魔王だからな!!」
(魔王?やっぱりこの世界にも魔王がいるのか?)
未来は魔王のことについて疑問に思ったが他人に聞く勇気がなく、また別の日にティアラに聞くことにした。
***
休日が終わり、未来はこの前に聞いた魔王についてティアラに聞いてみた。
「ティアラ。魔王ってなんの事かわかる?」
「魔王?帝国王の事?」
「うん。たぶん。なんでその帝国王って人は魔王って呼ばれてるの?」
「残虐な性格で、さらに傲慢で、スキルを三つも持って、相手を圧倒する力。容赦無しの残虐性。そんな事から恐怖の象徴として魔王に呼ばれてるの。このくらいの知識は、常識なんだけどなー。」
「そ、そうなんだ。」
魔王。ゲームではラスボスとして君臨している事は多いが、だいたいの魔王は人外の生物。だが、この世界の魔王というのは人で未来は少しだけ驚いた。
(魔王を倒したら俺は帰れるのかな?でも、倒すと言っても今の俺じゃ魔王にとってはハエ程度の存在なんだろうな。)
「何かあったの?」
「まぁ、この前、帝国兵士っていうのが町に来てて、町の人が愚痴ってたからさ。ちょっと気になって。」
「そうなんだ。私、休みは寮にいたからわからなかった。」
「うん……そういえば、ティアラは部活どこに入るか決めた?」
未来は話題を変え、部活はどこに入るか聞いてみる。
「うん。決めたよ。外出活動部に入ることにしたよー。」
「そうなんだ。なら、俺と一緒だね。」
「ミライも!?そうなんだー!よろしく!!」
「う、うん。よろしく。」
ティアラが持ち前の明るい性格を活かした笑顔は未来にとってはとても眩しく、目を背け、照れくさそうに返事をする。
そしてティアラと軽い雑談をした後、授業を受け放課後になった。
「俺は今から届けに行くけどどうする?」
「うん。私も行く。」
未来とティアラは鞄に荷物を詰め、教室から出る。
赤と金が混ざっているかのような色彩を放つ空は一刻
と影を増していく。
「まだ、暗くなるの早いね。」
「うん。これいつぐらいまでなの?」
「うーん、後一か月もすればこの時間帯でも明るくなると思うけど……」
「へー。そうなんだ。」
「…………」
「…………」
そして沈黙が続いた後、それを破らんとするかなように後ろからエレノア先生に声をかけられる。
「お前たち、今日も見学か?」
「いえ、今日は入部届けを出しに行くんです。」
「そうか。で、どこに決めたんだ?」
「外出活動部にしました。」
「あっ、私も。」
返事を聞いた瞬間、エレノア先生は微笑み、二人を歓迎する。
「そうかそうか!!ようこそー!外出活動部へ!」
そう言った後、エレノア先生は二人の背中をパンパン叩き、部室へ誘導するかのように押していく。
「ちょ、先生……!自分の足でいけますよ!」
ティアラは前に進み、エレノア先生の攻撃から逃れる。
未来もそれに習い、攻撃から逃れようとしたが、それより先にエレノア先生は攻撃をやめた。
「よし、それじゃ行こうか!外出活動部へ!」
テンションが上がっているのか、エレノア先生はいつもより大きな声でそう言った。




