1/1
〜31歳の私〜
31歳 女 独身 恋人無し 都内在住 中小企業の事務職 年収300万円未満 家賃6万円の1Kに住んでいる。趣味はバンドのおっかけ。特技は無い。
これが 佐々木 ハナの現在のプロフィールだ。
どこにでもいる少し不憫な十路女だ。
「今日も疲れた…」
一人ぼっちの部屋でハナは小さく呟く。
子供の頃に想像していた30歳はもっと華やかで充実していた。
素敵な旦那様がいて、かわいい子供が二人。
マンションを買って、愛に溢れた家庭で幸せいっぱいに生活しているはずだった。
どこで人生間違えたのだろう。
ハナは目を閉じて、子供の頃を思い返す。
ハナは一流企業に勤める父と旧家の母の長女に生まれた。
幼い頃からピアノやヴァイオリン、バレエや英語などの英才教育を受けていた。そして私立中学を受験し、エスカレーターで私立高校へ進学した。
欲しいものは与えられ、優秀な両親の愛情を受けて何不自由なく育てられた。
人が聞けば羨むような生活を送っていた。
ハナにとってはそれが当たり前だった。
「なんでこうなちゃったんだろうなあ…」
ポツリ…とハナは小さくつぶやいて
そっと目を閉じた。