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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

薄幸尽きたら何になる?

作者: 羽入 満月

 私の人生には、出会い運がないことは知ってた。

 たかが20数年しか生きてないけど。

 逆にここまで出会い運がないと、違う物を持っているんじゃないかと疑いたくもなる。

 そんなことを狭い小部屋で正座をさせられながら、罵詈雑言を聞きながら思い浮かべる。

 大丈夫、表情を変えない、無表情は、一時期…五年ぐらいやってたから得意だ。


 目の前にはクレーマー。

 大声で喚き散らし、汚い言葉で罵られる。


「てめぇ、おかしいんだよ。」

『あぁ、中学の時によくいわれたなぁ。』


「てめぇは、病気だ!!俺にはわかる!!」

『あぁ、これもよく、言われたなぁ。しかし、私も同意見だ。お前は、病気だ。私にもわかる。』


「俺は辞めないから、お前がやめろ。」

『これだって、短大生の時に言われたことあるなぁ。てか、こんだけ怒っているなら、辞めればいいのに。』


「目つきが悪い。態度が悪い。てめぇのことが気に入らない。」

『言われたことある、ある。』


「隣の人が担当なら良かったのに。無駄にお前の後ろをついて回っているだけじゃねぇんだよ。」

『大事な部分は、なにも見てない感じだな。』


「答えられないのは、俺が間違ってないからだろ?あぁん?違うのか??はぁ?」

『間違っていたとしても、今ここで返事をしたら余計怒るんでしょ。知ってるよ、経験済みだからね。若い頃は、被せながら大声で言い返したこともあるけど、今はしないよ。大人だからね。』


「上に話にいってやる。前の会話録音してあんだよ!!」

『権力に訴えれば、なに言ってもいいって勘違いしてる。』


「今日の会話を録音しておけば良かった!!」

『残念、私も録音しておけば良かった。』


 … … …。

『あー。足が痺れてきた。一時間か。長いな。』


 一時間以上、人格否定をふくめ、罵詈雑言を浴びせられ、相手はすっきりした顔で帰っていく。

 私もやっと終わったかと一息つく。


 途中で紙に「お前はつかえないやつだ」と、書かれて投げつけられた。ペン立てを投げつけられた時にペンが私の目にでも刺されば良かったのにと思ったのに、綺麗に横を飛んでいった。


 話が終ると「こんなことを書いて悪かった。これを見て反省をする。」と紙を鞄にしまうっていたけど、違うよね。自分が罵詈雑言を言っているって証拠を残すとヤバイからでしょ。


 終わったあとに普通の顔をして通常業務に戻ったら、みんなに探されちゃった。何処かの影で泣いてるって思われたみたい。

 残念ながら泣いてなかった。


 きっと明日も何気ない顔で出勤したら、驚かれるんだろうね。

 行きたくない気持ちはもちろん持ってるよ。

 でも、次の日休んだら行きにくくなるの知ってるから。これも、経験したからね、小学生の時に。


 そして、みんな、この子は平気な子なんだって、私なら平気じゃないけどこの子なら大丈夫なんだって、勘違いをしていくんでしょ。


 でも、傷ついてない訳じゃない。

 泣かない訳じゃない。泣けない訳じゃない。


 心は既に、ぼろ雑巾だから。

 ぼろ雑巾なのを周りから「大丈夫?」「辛かったね」「よく我慢したね」等々の言葉のつぎあてを当てられて、繕って。

 それでも新品は、もらえなくて。捨てることも叶わなくて。

 ずっとずっと使い続けているものだから。

 だから、縫い目から簡単に割けてしまうんだよ。


 そして、たぶん誰よりも泣き虫で傷つきやすくて強がりで死にたがりだから。


 でも。

 夜、風呂の中だったり、布団の中だったりで声を押し殺して泣いているのは誰も知らない。


 腕の内側、肘よりにカッターで切った跡があって絆創膏が貼られていることは誰も知らない。


 それを、誰にもバレないように傷の深さや跡の残り具合まで計算して細心の注意を払っていることは誰も知らない。


 何て言ったって、意地っ張りの強がりだから。


 泣きすぎて目が腫れたなんて、人生で未だ一回しか経験してない。

 擦らなきゃいいんだよ。涙を流しっぱなしにすれば、腫れないと思う。

 今までそうしてきたから。

 そしてこれからも。


「この出会いは、あなたが自分を見直すために大事な出会いなんだ」とか、「神様は乗り越えられる試練しか与えない」とか、もしそういうことがあるのなら。

 私は、どれだけダメなやつで自分を見直さなきゃいけないの?

 人生に、一、二回なら乗り越えられるかもしれないけど、これだけ詰んでくると厳しくない?


 最悪な出会いばかりな人生だから、此処等で幕を下ろしてもいいんじゃないかって思うけど、中々幕をおろさせてもらえない。

 何て言ったって、周りの人は優しい人たちだから。

 次から次へ優しい言葉でつぎあてを当ててくれる。

 私の言葉に一緒に涙を流してくれる。


 私はまだ、この手を話せないから、誰か止めを刺してくれないかな。


 そしたら、すっきり踏ん切りがつくのに………

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