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例え世界が滅んでも、俺の周りは平和です  作者: The T
一章 霧の森にて五里夢中
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第四話 核=魔石

 翌日。

 今日は7時に冒険者ギルドを訪れた。


ギィ、


「あ、やっと来ましたか」


 どうやらこれでも遅いらしい。ギルドの中に他の冒険者の姿は無かった。早起き出来なくもないのだが、せっかく安全な町の中に居るのだからゆっくりと寝たいのがショージの考えだ。


「すまん。遅かったか?」

「このくらいなら、まあ……許容範囲です。別に商人さんと今日会うわけじゃないですし」

「それで、どうだ?馬車は出そうか?」

「さっきも少し言いましたが、商人さんに直接交渉してください。場所はあちらが指定してます」


 要するに断られた、と言うことだろう。一度ギルドから頼んで駄目だったのを、一応本人にもやらせる。そうすることで不満を抑えているのだ。


「交渉はいつになりそうだ?」

「明日の朝、出発直前だそうです。検問の手前で集合し、そのまま交渉。……あまり期待しない方が良いかもですね」

「そうだな」


 出発直前など、乗せる気はまず無いと言っていいだろう。


「あと一応言っておきますが、もし乗せて貰えることになったら料金の代わりに護衛を頼まれると思います。武器の整備もして行ってくださいね」

「了解した」

「朝ってのは5時ですから、そこもしっかりしてくださいね」

「そんな目で見なくても起きれるっての」


 これまでの行動を考えれば心配されても仕方がない。


「んじゃ、これから門外(そと)出るけど……何か依頼残ってないか?」

「いえ、特には……あ、そうだ。せっかくレタンに来たんですから海岸の魔物と戦ってみたらどうです?」

「成る程。やってみる」


 そう告げて、ギルドを後にした。



………………

…………

……



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 名前:なし 種族:ブルースライム


 状態:普通


 Lv.16 HP:550/550


     MP:1900/1900


 【能力】:《水魔法Lv.2》

      《強酸Lv.3》

      《粘体Lv.4》

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「スライムかぁ……」


 ショージは砂浜で項垂れていた。

 攻撃手段が物理しかないショージは、スライムと相性が悪い。核となっている小さな魔石を壊せば倒せるものの、非常にもったいない。魔法能力持ちの魔物の魔石は高く売れるのだ。何しろ属性がごちゃ混ぜになっていない。このスライムの魔石ならば小型の水筒の様に使えるだろう。


「ま、やるか──《平和世界(ピースワールド)》」


 自分とスライムを覆うほどの大きさで展開して、スライムへ強く掴みかかる。

 ダメージが発生するこの行為は通常なら《平和世界》によって弾かれる。正確に言えば「弾かれる」ではなく「コンニャクの様に力を吸収される」だ。……例えば人の顔をを殴ったとしよう。《平和世界》の中では相手の顔に近づくにつれて拳が減速していき、顔に届いた時にはピタリと止まってしまう。攻撃した側に反動が無いのはこの為だ。

 さて、話を戻そう。通常なら出来ないはずのこの行為。ではなぜ今は可能なのか?答えはスライムの『能力』にある。


「うえぇ、気持ち悪っ」


 《粘体》。この能力によって(ほとん)どの物理攻撃は無効化される。水面を殴っても水は砕けないのだから。

 しかし逆に言えば何をしてもダメージにならないのだ。たとえ体の中を掻き回しても、核を掴んでも、《平和世界》にはそれを止めることが出来ない。強いて言うならばこれは状態異常:拘束なのだから。残念ながら《平和世界》に状態異常を防ぐ効果は無い。


「──《■■》」


 何語なのか分からない(スライム語?)言葉が聞こえ、スライムの表面が青く輝いた。そしてショージの頭目掛けて水の槍が発射される。


「うおっ!?……なんだ、魔法か」


 スライムの必死の抵抗虚しく、ショージの体に触れた瞬間に水の槍は雲散霧消してしまった。《平和世界》が魔法を無効化する時はこの様に魔法全体が魔力に分解される。

 そうこうしている内にショージによるスライム討伐作戦は最終段階へ。核を掴み、体の外に出せないか引っ張ってみる。


「ふんっ……!ま、ダメか」


 流石にこれは《平和世界》も許さないらしい。魔石を失えばHP関係なく死ぬから当たり前とも言える。


「それじゃ解除。からの身体強化ぁ!」


 ブチブチっと何かが千切れる様な音と共に核──魔石がスライムから外れる。

 そしてそれと同時に『声』が響いた。


【レベルが上がりました】


「お、上がったか」


 『世界の声』と呼ばれる現象で、レベルが上がった時やスキルを入手した時などに響く。当然周囲の人にも聞こえるから、場合によっては所持能力が他人にバレる。


「一応──《鑑定》」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 名前:ショージ 種族:人間


 状態:普通


 Lv.33 HP:1632/1700


     MP:3028/3300


 【能力】:《回復魔法Lv.2》

      《探査Lv.4》

      《共通語Lv.5》

      《解体Lv.1》

      《思考加速Lv.3》

      《鑑定Lv.3》

      《剣術Lv.2》


 【固有能力】:《平和世界》

        《鑑定EX》

        《剣術EX》

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 最大HPとMPが少し上昇。それだけだ。


「HP減ってる……ああ、少し手が焼かれたか」


 見れば、核を掴んでいた右手が赤く腫れている。酸で焼かれたらしい。


「──《回復(ヒール)》」


 唯一使用可能な回復魔法である《回復(ヒール)》で火傷を治す。早く新しい魔法を修得したいが、その為に必要な回復属性の魔石は中々売っていない。あったとしても高価でとても手を出せない。


「よし、次行くか」


 この後3匹狩った所でもう一つレベルが上がったからそこで止めにして、ギルドで報酬金を貰ってから待合所へ帰って寝た。やはりスライムのような魔力が多い魔物は経験値も多い。この町の周りにいる魔物の中では最も美味しい魔物だ。金額的にも、レベル的にも。

 手に入れた魔石は一つ残して全て売り払った。沢山持ってても邪魔だし、非常時の飲み水があれば十分だ。



………………

…………

……



 そして、翌朝。


ザアァァァ……


「土砂降りじゃねぇか」


 旅立ちに良い日とはとても言えない。


「ま、とりあえず行ってみるか」


 幸い、荷物の中には雨合羽──水を弾くローブがある。これから町を出るとしてもなんとかなるだろう。


「……で、商人ってどいつだ?」


 視界の悪い中、三日前に自分を追い越して行った商人の男を探す。しかし、見つからない。門番の男や冒険者風の男女、商人がいると思ったら女だった。

 ショージは少し悩み、取り敢えず7時まで待ってみることにした。──いや、その必要は無さそうだ。


「王都に行きたいって言う冒険者はキミ?」

「あ、ああ。そうだが」

「どうも、行商人のメイです。今回はヨロシクねっ!」


 ショージへ話しかけてきたのは、先程から門の前に立っていた商人の()だった。


《平和世界》の説明ばかりになってる気がする……まぁどこかには入れないといけないから仕方ないんだけども。

 ボス戦にぶっ込むよりマシかな?

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