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なかなか派手なうっかりで

 魔法を使う為には基本、詠唱が必要だ。魔法のイメージが明確であれば理論上、無詠唱も可能らしいがアレンですら最低限は呪文を口にしていた。

 だが、闘っている最中に呪文を唱えたら『うっかり』にはならないと思う。

 じゃあ、カリルはどうするのかと恵理が思っていたら――闘技場に出て、恵理と対峙したカリル。その手首に、先程気づかなかったブレスレットがあったのに「ああ」と納得した。


(魔道具か)


 魔石をあしらえば魔力の増幅、あるいは魔力の抑制が出来る。あのブレスレットをつけて闘えば、確かに呪文を唱えなくても簡単な魔法なら使えるだろう。


(まあ、私はただ全力で迎え撃つだけ)


 アジュールでは帝国のような直剣ではなく、曲刀が一般的らしい。一回戦の男達もカリルも、そしてあの強そうな男も腰に曲刀を佩いていた。刺突に適した直剣と、斬撃を重視した曲刀――かつて、アレンや『獅子の咆哮』の仲間から聞いたことを思い出す。


(でも、転移者としては……刃物相手なのは同じだし。言い出しっぺだから、怪我だけは気をつけよう)


 うん、と声に出さずに頷くと恵理は一礼した後、審判からの開始の声を合図にカリルへと突進した。


「うぉっ!?」


 間合いに入って剣で突くと、カリルは間抜けな声を上げながらも曲刀で受け止めた。なかなかやるな、と思って恵理が押し返される前に身を引くと、無様に前へとつんのめった。

 前言撤回。どうやら先程、恵理の攻撃を防いだのはまぐれらしい。

 とは言え、反撃してこないからと言ってこちらが止まる義理はない。恵理としては、それくらいの気持ちで攻撃を止めずに斬りかかったのだが。


「おいおい、情けねぇなぁ!?」

「嬢ちゃんにやられっ放しじゃねぇか!」


 女性。しかも実年齢より若く見えるせいか、大の男が防戦一方なのはブーイングの対象になるらしい。おかげでカリルからは控え室での余裕の笑みが消え、その眉は不快げに顰められていた。


「男を……俺を、舐めるなっ!?」

「おい、魔法じゃねぇか!?」


 恵理の剣が跳ね除けられた刹那、カリルから炎が噴き出して恵理へと襲い掛かった。それを見た観客がどよめくが、恵理は慌てず小声で唱えた。


「……流水ウォーター


 刹那、現れた水で己を包みつつ。魔法の炎にかけて消す。正当防衛、しかも直接の攻撃ではないので審判からの制止の声はかからない。

 そして魔法での反撃が予想外だったのか、固まったカリルの隙を見逃さず恵理はその曲刀を弾き飛ばして切っ先をその喉元に向けた。


「待てっ……降参! 降参だっ」

「勝者、エリ!」

「すげぇ! 魔法で反撃したぞ!?」

「いいぞ、ねぇちゃんっ」


 その場に跪いて叫んだ相手に、恵理は攻撃をやめた。

 それに、審判が勝負の結果を告げたところで――観客が、一気に湧き上がった。

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