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ハイテンションにも程がある

 恵理の試合は順番的には二番目で、サムエル達三人の中では最初だった。

 闘うのは解るが、映画などで見ていても実際、人前で闘うイメージが持てない。そんな訳で、恵理は控え室を出て試合を見ることにした。それに、サムエルとレアンもついてくる。

 そして、控え室から闘技場の隅に出たところ――大音量の歓声に、恵理は思わず息を呑んだ。サムエルも眉を寄せ、レアンは犬耳を伏せている。

 そんな恵理達の視線の先では、男二人が剣で斬り合っている。木剣ではなく、真剣だ。何でも、殺し『のみ』厳禁だが、攻撃として手足などを斬りつけるのはありらしい。まあ、怪我をしたくないのなら「降参」を宣言すれば良いらしいが。


「……ねぇ、レアン。大丈夫?」


 恵理とサムエルは剣を使えるが、レアンは武器を持っていない。今更だが、大丈夫なのかと思ったら琥珀色の瞳が笑みに細められた。


「こういう時こそ、身体強化です。魔力が放出される訳ではないんで、見た目解りにくいんですけど……刃を受け止めることは出来ます。まあ、連打されるとその限りではないですけど」

「へぇ、そうなのか!」


 剣士であるサムエルが、感心したように言う。彼は魔力こそ持っているが、大抵の異世界人のようにその流れを意識することは出来ない。結果、身体強化も使うことが出来ないのだ。


(今思うと、アレンが私に教えてくれた魔力の流れを感じる方法って……一般人より、魔法使い向けだったのよね。まあ、身体強化も魔法も使えたチートキャラだったからだろうけど)


 しかしうまくいったから良いが、今思うと異世界から来た子供に何を教えていたのか。いや、まあ、使えないのが大多数なので、出来なかったとしても少しだけ落ち込んだくらいだろうが。

 かつての恩人の面影に、恵理はやれやれとため息をついた。そうしているうちに決着がつき、一方の剣が弾かれて宙に舞う。


「降参……降参だっ」


 それでも攻撃をやめずに剣を振り上げた相手に、武器を持たない男が頭を庇うように手を上げながら慌てて叫ぶ。そうするとピタリ、と攻撃がやんだので「なるほどこれか」と恵理は思った。


「この腰抜けっ」

「一矢報いる気概はないのか!?」

「……えっ?」


 しかし、途端に観客からブーイングが上がったのに恵理は思わず声を上げた。いやいや、お互い拳ならまだしも、武器相手に素手は荷が重いと思う。


「高みの見物……にしても、悪趣味ですね」

「確かに」

「レアン、サム? 大丈夫だと思うけど、無茶だけはやめてね? 怪我しないで、元気にロッコに帰るわよ」

「「はい!」」

「じゃあ、行ってくるわ」


 観客からの声で煽られて妙にハイにならないか心配になったが、良い返事が来たので一安心する。

 それから自分の番が来たのに、恵理はサムエルとレアンに声をかけて一歩踏み出した。

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