一方、観客席では
ガータ達が円形闘技場の席に着くと、周りからチラチラと見られた。
最初は、ティート達が外国人だからかと思ったが――全く皆無とは言わないが、その視線の大半はガータへと向けられていた。
アジュールに戻ってから、ガータは外套のフードを被りはしない。外国人ではあるが、彼女にとってはここが第二の故郷なのだろうか。猫耳や尻尾もいつも通りで、逆立ってたり伏せてたりしてはいない。
「……ヤな、感じ」
「すまないな。だが、私がいればお前達に絡む者はいないだろうから。我慢してくれ」
「嫌な感じもありますけど、熱い視線もありますね」
「ああ。これでも、武闘会の勝者だからな」
とは言え、ミリアムが眉を顰める程にはぶしつけだ。そして、うっとりとした視線も混じっているのに気づいてティートが言うと、こちらも慣れているのか肩を竦めて答えた。
「そうなると……女神が優勝すれば、この熱視線が女神のものに!?」
「おー」
「……お前達は、本当にあの店長が好きなんだな」
ティートの言葉にミリアムは無表情ながらも拍手をし、エリに対して多少は認めているものの、参加には未だに否定的なガータはため息混じりで言った。そして、ティート達を気づかうように口を開く。
「だが……私が言うのも何だが、女性が優勝するのは無理だと思うぞ? レアンも、あとあなた達の仲間の剣士もいる。更に、今回の武闘会にはアルゴが出るんだ」
「……誰?」
「元々、有名な剣闘士だったが第三王子の目に留まり、今では食客となっている。奴隷でこそないが、私のように身分や地位を手に入れたいのだろう……そんな強者に、か弱い女性が勝てるとはとても思えない。おかげで賭けにならないと、胴元がぼやいているくらいだ」
「賭け、ですか?」
「勝者を賭けるのだ。まあ、私はレアンに賭けたがな」
「……それは、外国人の僕でも参加出来ますか?」
「あ、ああ」
ミリアムの質問に、ガータが説明してくれる。
そこから出た賭けの話題に対して、ティートはガータに問いかけた。それにガータが頷くと、眼鏡のブリッジを上げて立ち上がる。
「解りました。それなら、僕は女神に賭けてきます」
「ん! サムと、エリ様!」
「そ、そうか……って、待て待て。二人だけで動くな。今、人を呼ぶから少し待て。ほら、胴元の子分があっちにいるから」
躊躇なく、エリ達に賭けようとするティートに一瞬、ガータは気圧されたが――すぐに我に返り、観客に賭けへの参加を促している男を呼ぶ為、手を振るのだった。




