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決意と、訳ありそうな男と

 恵理の対戦相手は、良い人アピールの魔法剣士(の可能性大)カリルで。

 サムエルとレアンの相手は、何と先程、レアンとガータを貶していた二人だった。ちなみに厳つい方がサムエルと、ズルそうな方がレアンと闘うことになる。当人達がわざわざ教えてくれたのには何だかな、と思ったがサムエルはむしろ喜んだ。


「俺らもツイてますね、師匠!」


 正々堂々やり返せると、爽やかな笑顔で言う。一方、レアンは何かを決意するように両手で拳を握った。


「俺はともかく、ガータ姉のことを悪く言われたのは……許せません」

「……レアン」

「頑張ります」


 生真面目な表情で宣言し、レアンは気合いが入ったように犬耳を立てた。獣人であることを卑下する傾向がレアンにはあるが、それでも同郷のガータまで貶されたことには納得いかなかったらしい。可愛いだけではなく、凛々しくも見えた。


「ええ、私も頑張るわ」


 そう言って恵理が二人に笑いかけると、急に控え室の中がざわついた。

 周囲の様子を見てそれが今、入ってきた相手に対してだと気づいて目をやり――恵理は、黒い瞳を軽く見張った。

 短い黒髪と瞳、小麦色の肌。

 色彩は他のアジュール人と同じだが、その顔には無残な傷跡が刻まれていた。

 いや、顔だけではない。上半身はベストだけ。下にはゆったりしたズボンを穿いているが胸や腕、腹にも傷がある。あの様子では、ズボンの下の脚にも同じような傷があるのではないだろうか。

 だが、周囲のざわめきは別の意味があったらしい。


「アイツも出るのか」

「もう、第三王子のモノなんだから、出なくても良いだろうに」

「むしろ、王子サマに尻尾振る為だろ?」

「違いねぇ」

「浅ましいもんだぜ」


 恵理達同様、いや、同じアジュール人だと考えればもっと酷い言われようだ。

 とは言え、言われている男(背は少し低いが、サムエルと同じ二十歳くらいだろうか)は平然としている。無言で控え室に入り対戦表をチラリと見ると恵理達から離れた場所にある、空いている椅子へと向かって腰かけた。それに対して、聞こえよがしに陰口を叩いていた(サムエル達の対戦相手も懲りずに言っていた)面々が逃げるように後ずさったり、視線を逸らしたりする。


(魔法の反応は、相変わらず解らないけど……単純に、強そうよね)


 剣士や冒険者としての強さなら、多少は元冒険者として揉まれてきた恵理にも解る。サムエルとレアンも同様で、表情を引き締めて男を見た。

 ……一方、男も恵理達を一瞥し、あとは他には目をくれず腕を組んで目を閉じた。

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