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アジュールでの夜と昼

 香辛料てんこ盛り、もはや祭り状態の料理を食べてラッシーを(アジュールでは山羊のヨーグルトと牛乳で作る)飲んだ後、恵理達は客間へと通された。

 当然だが、男性と女性で部屋分けされる。その為、ミリアムと二人で男性陣の服を風魔法で乾かしてから、恵理達は与えられた部屋に入り、寝間着代わりの服に着替えてベッドに腰かけた。

 天蓋ベッド自体は、アスファル帝国にもある。だが、帝都などでは白が基調でレースなど使われているが、アジュールでは落ち着いた赤い布に金糸での刺繍が施されていた。


「部屋に入った時は派手だと思ったけど、寝心地は良さそうね」

「…………」


 肌触りの良い敷き布団を触りつつ、同室になったミリアムに話しかけるが答えはない。

 おや、と思って恵理が身を起こすと、隣のベッドでは既にミリアムが目を閉じ、安らかな寝息を立てていた。


「風邪ひ……かないかな? うーん、でもなぁ」


 冬にしては暖かいとは思うが、それでも昼間よりは気温が下がっている。

 だから、と恵理はミリアムの腕を自分の肩に回すようにして、その体を動かした。そして掛け布団と敷き布団の間に横たわらせ、布団をかける。その間も、全く目を覚ます気配がない。


「よっぽど、疲れてたのね……まあ、私もか」


 ぽつり、と呟いて恵理も自分のベッドに横たわった。当然だが、昨日までの馬車のように揺れることはない。

 ……途端に強烈な睡魔に襲われ、恵理は逆らわずに目を閉じた。



 次の日、恵理が目を覚ましたのは昼近くだった。

 普段、寝坊をしないのでよっぽど疲れていたのかと驚く。もっとも、ミリアムはまだ眠ったままだが。


(……って、あれ? そう言えば、武闘会って……明日!?)


 しばしぼんやり微睡んでいたが、そこまで考えたところで覚醒する。

 そして、ミリアムを起こさないように恵理がそっと部屋を出ると、そこで長袖シャツにズボン姿のティートに会った。事前に気温を聞いていたので上着は羽織っていないが、初夏並みの気温なのに暑くないのだろうか?


「おはよう、ティート……あの、武闘会の参加申し込みって」

「おはようございます、女神。申し込みは今朝、僕が済ませましたから大丈夫ですよ。他の皆が起きてきたら、聞いてきた決まりや禁止事項について説明しますね」

「ありがとう!」

「いえいえ。露店で装飾品や香辛料を見たり、有意義でした」

「……って、暑くなかった?」

「まあ、それは……でも、僕は日に焼けると赤くなるので。日焼けで、腕や足が痛くなるよりは良いです」


 そう言って微笑むティートは、汗をかいていないこともありとても爽やかで涼しげだった。恵理やミリアムと違い、水魔法を使っての気温調節も出来ないのに大したものだ。


「あと、ガータさんに連れていって貰って、会場を見てきたんですが……すごく大きかったです! 円形なので、野外音楽堂のように歓声が響きそうで……あの会場で女神が闘い喝采を浴びると思うと、感無量ですっ」

「あ、はい」


 両手を祈るように組み、眼鏡の奥の瞳を輝かせるティートを見て恵理は前言撤回した。いつもの暑苦しいティートである。

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