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旅立つ前に

 次の日、恵理は店を開けた。今日は休み明け、限定五食のカツ丼を出す日である。

 だが、カツ丼目当てで来た客達は、まずドアに貼った『明日から改築により休業』という貼り紙について尋ねてきた。


「休むだけ、なんだよな!? このまま、帝都に行っちまうことないよな!?」


 客からの言葉で、ドリスのように引き抜きが不安を与えていたと思い知る。だからこそ恵理は静かに、けれどキッパリとその問いかけを否定した。


「ええ、ありません。逆に、カツ丼を定番メニューにする為の改築ですし。しばらく留守にするのも、新メニューの為の買い出しですよ」

「本当だなっ!」

「ええ、管理神……いえ、創世神に誓って」


 ティエーラは他の世界共々創世神によって創られ、それぞれの世界は管理神に任されている。だから、管理神より創世神に誓う方がより強いものとなる。

 余談だが日本の漫画だと、異世界転生や転移の時にはそんな神に会っていたが――グルナも恵理も、会ってはいない。それはお互い「チートじゃないし」で納得してる。

 だから神が本当にいるかどうかは解らないが、この世界では信じられているので恵理も『神への誓い』を使う。現に、言われた男も安心したように厳つい頬を緩めた。


「……それなら、大丈夫だな」

「おう、安心したぜ店長! そんな訳で、カツ丼大盛り一つっ」

「ちょっ、ズルいぞ。俺もだ!」

「かしこまりました! レアン、お願いね」

「はい!」


 微笑みながらの恵理の誓いにしばししんみりしたが、続いてのカツ丼の注文がその空気を吹き飛ばす。

 それに満面の笑みで応え、アイテムボックスから取り出したカツ丼をレアンに運んで貰おうとして――そこで恵理は、貼り紙に書いていなかったことを思い出して、皆に聞こえるように言葉を続けた。


「どんぶりは、全部じゃありませんが休みの間はグルナの店で提供します! ラグーソース丼とグルナの作ったオムドミグラスソース丼を、よろしくお願いしますね」



 昨日、恵理がグイドに勝利してアジュール国の武闘会に出ることが決まった時、ルーベルがしたのがグルナの店に行き、彼を訓練場へと連れてくることだった。そして、グルナの肩に彼の背後から手を置いて言う。


「エリ、皆があなたのどんぶりを楽しみにしてるわよぉ。あなたにしかできないことを、やっていきなさいねぇ」

「恵理、安心しろ! 今回のオムハヤシ……だと、通じないか。オムドミグラスソース丼とラグーソース丼は、俺に任せろ!」


 ルーベルの言葉に、グルナもまた恵理を促すように続けた。ラグー飯はロッコの名物なので、休みの間にもグルナが出してくれたら安心出来る。

 だからホッとして、恵理は頬を緩めながら言った。


「ありがとうございます……明後日から、行ってきますね!」

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