表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/135

恵理の言い分

 闘えることを示すには、実際に見せれば良いだろう。

 そう思い、冒険者ギルドの訓練場に向かおうとした恵理に、ガータだけではなくサムエル達、そしてレアンもついてきた。更に訓練場を借りようとしたところで、話を終えて降りてきたらしいルーベルやティート、それからヴェロニカ達とも鉢合わせする。そんな訳でガータに見せるだけのつもりが、随分とギャラリーが増えてしまった。


「師匠? 俺が相手しますか?」


訓練用の木剣を手にした恵理に、サムエルが声をかけてくる。確かに、Aランクのサムエル相手に闘えば実力を示すことが出来るだろう。だが、しかし。


「……グイド?」

「お? ご指名か?」

「あなた、私に隠してることあるわよね?」

「え」


 恵理の問いかけに、戸惑いではなく驚きに固まったグイドへ、恵理は話の先を続けた。


「ルビィさんから聞いたわ。グリエスクード辺境伯から、冒険者としてのお誘いがあったって……そして、それを断ったって」

「何だよ……俺が決めたことに、文句つける気かよ?」

「あんたが店を言い訳に断らなければ、私だって口出ししないわ」

「うっ……」


 そう、単に「行きたくない」や「ロッコが好き」なら、別に恵理も反対しない。しかし、グイドは「務めている店を辞められない」とどんぶり店を理由にしたのだ。

 ……次第に据わる目をグイドに向けて、恵理は更に言葉を紡ぐ。


「そりゃあ、私は好きにすれば良いって言ったし、どんぶり店で働きたいって言ったから出前をお願いしたわ。だけどね? あんた、冒険者って仕事自体も好きよね? 休みの度に、依頼受けるくらいに」

「そ、れは!」

「そう、好きで両方やるんなら良いの。だけどね? 単に自信がないだけなのに、私の店を言い訳にするのは許せない。だから、出前の仕事はルビィさんに頼むことにしたわ」

「はぁ!?」

「あ、ルビィさんに出前をする人間を斡旋して貰うって話だから。別に、ルビィさんに出前して貰う訳じゃないわよ?」

「そこじゃねぇよ! 何、勝手に俺の仕事奪って」

「先に勝手なことをしたのは、あんたでしょう?」


 そこで一旦、言葉を切って恵理は訓練用の木剣をもう一つ手に取り、グイドへと放り投げた。そして、グイドがそれを受け取ったのを見て、挑むように自分の木剣の切っ先を向けた。


「まあ、チャンスをあげるわ……私に勝ったら、それこそ好きにすればいい。でも、私に負けたら観念してグリエスクード領に行って貰うわ」

「……言ったな? 吠え面かかせてやるっ」


 恵理の挑発に、グイドが怒鳴り返す。それにやれやれ、と思いつつ恵理はガータに目をやった。


「こんな奴ですが、Aランクの冒険者です……少々、こちらの事情もありますが。闘えることを、示させて頂きます」

「あ、ああ」


 そしてガータに一礼すると、恵理は木剣を構えてグイドへと向き直った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ