冒険者の三人
その後、ルーベルとティートはヴェロニカともう少し話すとのことなので、恵理は一人部屋を後にした。
そして階段を降りると、ちょうどサムエル達が魔物討伐から戻ってきたところだった。
 
「あら、早かったのね?」
「……私抜きで、仕留めた」
 
恵理の言葉に、ぷくっと頬を膨らませたミリアムが答える。それに反論したのは、カウンターでギルドカードを見て貰っていたグイドだった。
 
「だから、今回はオークだったろ? 女のあんたに、万が一のことがあったらどうすんだよ」
「こいつがミリーを押しのけたから、俺が頑張ったんだろう? 俺とミリーはコンビだから、俺の討伐数はミリーの成績にもなるからな」
 
オークは男性を食らって殺し、女性は犯して己の子供を産ませようとする。見た目はロリ美少女だが、グイドは成人済のミリアムを気づかったようだ。
そしてサムエルの言う通り、ギルドカードには依頼に対しての討伐数が、討伐した冒険者がギルドカードに触れるだけで登録される。
基本は魔物の一部、もしくは全部を提出だが持ち帰れなかった時、あるいは持ち帰れなかったが倒したと虚偽の申告をされた時に見破れるようになっている。勇者が広めた魔法らしいが、他にも犯罪歴なども解るので門番が身分証のない旅人を調べる時などにも使われている。
(ゲームとかの、ステータス画面をイメージして作ったのかな?)
などと恵理が考えていると、グイドの言い分もサムエルの言い分も理解はしているのだろう。頬は膨らませたまま、ミリアムは小さくだが確かに頷いた。けれど、すぐその灰色の瞳が据わる。
 
「ん……でも、サム、また悪い癖出た」
「うっ……」
「……あぁ」
 
ミリアムの言葉に、サムエルが途端に言葉に詰まって肩を竦める。そんな二人の会話を聞いて、恵理はミリアムの言う『悪い癖』に思い至った。
サムエルは大剣使いで、魔法は使えない。本人も気をつけているのだが、数などが増えてしまうと早く倒そうとする結果、傷などで素材を損ねる状態になるのだ。何年経っても改まらなかったので、フォローする意味でミリアムとコンビを組ませたのだが。
 
「今回は『討伐』が目的だから、傷があっても依頼料に影響はない……まさか、それを見越して?」
「ちっ、違うからなっ!?」
「本当?」
「ああ! 師匠に誓ってっ」
腕組みをして尋ねるミリアムに、サムエルが胸を張って答える。
「うむ」
それに、ミリアムが鷹揚に頷く。何故か恵理に誓いを立てられているので、口を出すのを躊躇っていると――代わりに、やれやれと言うようにグイドが口を開いた。
「何で、それで話が着くんだか……まあ、とにかくオークを解体場に運ぼうぜ?」
「ああ」
「ん」
「……お疲れ様。私は、店に戻るわね」
カウンターでやり取りされるのは、薬草や書類関係くらいだ。魔物や獣は、別に用意されている解体場で処理される。討伐したオークの入ったアイテムボックスを持ち、解体場に向かう三人に恵理はそう言ってしばし見送った。
それから受付嬢に一礼し、冒険者ギルドを出たところで――恵理は、レアンが店の入り口で誰かと話していることに気づいた。
 




