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ルーベルからの提案

「まず~、お貴族様の為の宿泊施設にするってことで、大浴場の従業員を増やします~」


 にこにこ、にこにこ。

 恵理達が見守る中、ご機嫌な様子でルーベルが説明を始める。


「手が空いている時は、一階の仕事も手伝って貰うけどぉ……お貴族様が宿泊する時は、侍女の仕事をして貰うからぁ。改築中に、アタシがみっちり仕込むわよ~」

「ギルドマスターが引き受けてくれるなら、安心ですね」


 その説明に、ティートが納得したように頷く。

 帝都にいる時に、ルーベルは『乙女の嗜み』と言いつつマナーなど完璧に習得した。そしてその知識を、冒険者ギルドの受付嬢やドリス達のような大浴場の接客担当に教えている。確かにルーベルなら、貴族相手のマナーを仕込むことも出来るだろう。


「あとねぇ……実は、エリのアイデアも使わせて欲しいんだけどぉ」

「私のですか?」

「そう! エリのどんぶり店でやってる、出前!」


 そう思っていたら、ルーベルから話が振られた。何だろう、と思って聞くと思わぬ単語が出る。


「多分、お貴族様だと一回、部屋に入ると街には出ないと思うのよねぇ。ただ、二十四刻三百六十日ずーっとはいないと思うからぁ。従業員はともかく、厨房と料理人を常設する気はないのよ~」

「そうなんですか?」

「前は年一くらいで領主様が来ていたけど、その時は料理人も連れてきていたから厨房があったのよね。でも街の管理を冒険者ギルドで委任されて、若旦那の提案で大浴場を作る時に厨房は閉めることにしたのよぉ。だから大浴場には、洗面所や従業員のお茶を入れるくらいの水場しかないでしょう?」


 そこで一旦、言葉を切ってルーベルは右手を頬に添え、やれやれと言うようにため息をついた。


「それに、料理人はねぇ……この辺で、お貴族様の満足出来るような高級料理を作れる料理人なんて、それこそグルナくらいしか思いつかないわぁ」

「……そうですよね」


 ルーベルの言葉に、恵理は頷いた。

 前世の知識や経験に加え、グルナは現世でも帝都の料理店で修行をしている。恵理が作れるのは家庭料理までだが、確かに彼なら貴族が満足する料理も作ることが出来るだろう。


「ただ、グルナには店があるから大浴場にずっといて貰う訳にはいかないしぃ。あと、エリのどんぶりだって、ヴェロニカ様みたいに食べて貰えば絶対、喜ばれるから……それもあって、出前を思いついたのよ! 希望を聞き取って、グルナやエリの店に頼みに行けばいいわってね!」

「あの、デマエと言うのは一体?」


 ヴェロニカからの質問で、今更ながら出前は恵理が始め、地球からの転生者であるグルナとロッコの者しか知らないことに気づいた。

 それは、ルーベルも同様だったのだろう。恵理が答える前に、ヴェロニカに説明してくれた。


「出前って言うのはねぇ? エリの店でやってるんだけど事前に注文をして、自宅や職場にどんぶりを持ってきて貰うことよぉ」

「まぁ、つまりは今回みたいに、温かい食事を運んで貰えるのですか? しかもエリ先生だけじゃなく、他のお店の料理も?」

「えぇ、そうよぉ……そうだわ! 岡持ちもいいけどアイテムボックスで運べば、ホカホカのままよねぇ。ありがとう、ヴェロニカ様!」

「そんな……わたくしは、何も」


 ……そんな二人の会話を聞きつつ。

 ふと、恵理は少し前にルーベルから聞いた話を思い出し、口を開いた。


「あの、ルビィさん……もしよければ、なんですけど」

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