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悩みはメニューと、あと他に

 冬季で限定メニューなら、と始めたカツ丼だったが、やはりと言うか何と言うか、男性客のハートを鷲掴みしてしまった。だから先程のように、定番メニューにと言われることが多い。


(ありがたいんだけど、常に揚げ物は……換気の関係で、厨房とか店が暑くなるから)


 閉店し賄いを食べた後、店の掃除はレアン担当である。

 料理を作ってくれているから、という言葉に甘えて風呂は恵理が先に入る。そんな訳で、今日も一階にある天然温泉に入りながら、恵理は物思いに耽っていた。

 揚げ物はあまり作ると室温が上がるので、カツ丼は定休日に作って翌日までアイテムボックスに入れている。だから、温かいままのカツ丼を振る舞えるが、根本解決にはなっていない。

 季節が変わり、暖かくなったり暑くなると正直、きつい。元々、宿だったので酒やつまみくらいは出していたらしいが、しっかり料理を作るようには出来ていないのだ。


(親子丼も肉ではあるけど、やっぱりラムしゃぶ丼とかカツ丼ほどには男性受けしないのよね)


 反面、子供や女性には人気があるのは余談である。

 揚げ物ではなく、それでいて男性受けするとなると、恵理が連想するのはカレーライスだ。あれなら揚げ物ほど室温が上がらないし、鍋さえあれば量もたくさん作ることが出来る。


(だけどなぁ……スパイスの料金考えると、高すぎて売れないのよ)


 日本のように、固形ルーやレトルト食品が売っている訳ではない。そうなると、まずカレールーを作るところからになるのだが――恵理の知識は小学校の調理実習で習った、小麦粉を使ったカレーである。スパイスてんこもりまでいかなくても一定量は必要なので、試作品としては作れても料金を高くしないと売れない。普通の料金で売ったら、売った分だけ赤字になってしまうからだ。


(似たような物をって思って、グルナと試行錯誤してみたけど……おかげで新しいメニューは出来たけど、やっぱりカレーではないのよねぇ)


 やれやれとため息をついて、浴槽から上がる。

 それから濡れた髪と体を拭き、脱衣所で着替えて出ると、手に布包みを持ったレアンが店から居住スペースに入ってくるところだった。その銀色の犬耳は理由は違うが恵理同様、やれやれと言うように伏せられている。


「……また?」

「ええ」

「ごめんね、レアン。明日、それもヴェロニカ様に相談するわね」

「そんな!? 店長は悪くないですから、謝らないで下さいっ」

「まあ、そうなんだけど」


 当然だが、レアンも悪くない。悪いのは何度も断っているのに、懲りずにやって来る帝都リーンからの使者だ。

 最初は営業中に来たが、断ったら閉店後に来るようになった。ちなみに包みの中身は、手紙とお金である。

 ……ちなみに目的は恵理『達』の引き抜きなので、中身に手をつけてはいない。

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