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年が明けてのどんぶり店

第二部開始です。よろしくお願いします。

 ティエーラの一年は、十二ヶ月である。

 その月には、それぞれ名前がついている。光雪水花葉雨風炎雷実月闇となっていて、新しい年が明けた今は光の月だ。

 ちなみに雪はと言うと、常時うっすら積もっているので気候としては「北海道以南、東京以北」という感じだろうか。まあ、白くなった街並み自体は外国のものなのだが。

 さて、そんな冬の大浴場はロッコに来るまでが寒く、着いても露天風呂という訳ではない。確かに入ると温かいが、特に雪見風呂を楽しめる訳でもないので、客足が落ちるかなと恵理は思っていた。

 ……しかし思ったほどは変わらず、むしろ帝都からの客は増えているくらいだ。


「大浴場とラグー飯が、すっかり定着したのとぉ。帝都からの買い物客も寒さに負けず、むしろ増えてるくらいだしぃ……帝都への出店や商品を卸さないかってお誘いも多いけどぉ、今のところラグー飯やリンス、温泉水はロッコ(ここ)に来ないと駄目ですものねぇ」


 とは、ルーベル談である。領主代行としては、収入源が安定していることは嬉しい限りだろう。

 もっともそれは、小さいながらも店主である恵理も同様だが。


「「いらっしゃいませ」」

「こんにちはー」

「冷えるわねぇ」


 店のドアが開き、中に入ってきた女性客二人に恵理とレアンは声をかけた。

 そして、席に着いたタイミングでレアンがおしぼりを出す。ちょっとしたことだが夏とは違い、温かくしているので寒い時期にも好評だ。


「えぇと、今日はどれにしようかしら」

「そうねぇ」


 おしぼりで手が暖かくなったところで、二人はメニューを覗き込んでしばし悩む。そしてうん、と頷くと女性客達は恵理を見た。


「ラグーソース丼二つ」

「はい、かしこまりました……店長、お願いします」

「ええ」


 受けた注文に答え、レアンが笑顔で答えて恵理に伝える。

 すると、そのタイミングでまた店のドアが開いた。とは言え、入ってきたのは客ではない。


「戻ったぞ。あと出前追加、アムレッソ丼三つ」

「わかったわ」

「グイドさん、お疲れ様でしたけどお客様がいますから早くドア、閉めて下さい!」

「いけねっ……すんません!」

「おう、気をつけろよー? 冒険者としては腕利きだが、店員としてはレアン坊が先輩だからな」

「そうそう、叱られないようにしっかりなー」


 戻ってきたグイドを労いつつも、レアンがドアを開けたまま頭や肩の雪を払うのに注意する。

 それに肩を竦めてグイドが謝ると、常連である初老の男性達から笑って声をかけられた。

 年上ということで、さん付けと最低限の敬語は使うが、先輩としてレアンはグイドを遠慮なく叱る。

 一方、グイドも父親であるアレン同様、美形の割に体育会系なので素直に言うことを聞いていた。最初はどうなるかと思ったが、結構うまくやっている。


(帝都での話を聞いたのか、始めのうちは冒険者や男性客から睨まれることもあったけど……レアンとのやり取りと、あと休みの日は冒険者の仕事も受けたりしてるし)


 今の彼は、以前とは違う。仕事の選り好みはしないし、ただの狩りであっても依頼を受けてしっかり結果を出している。

 だから今の、軽口を言われるような街の人達との関係は、グイドが己の力で掴み取った結果だ――そう恵理が思ったところで、また客が来店した。


「いらっしゃい」

「「いらっしゃいませ」」


 恵理、それからレアンとグイドが挨拶する。

 今度は、母親と男の子の二人連れだ。そして空いている席に座ると、子供がすでに決めていたのかメニューを見ずに注文してきた。


「親子丼ふたつ、お願いします!」

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