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買いに行ったらお得が待ってた

 少し丸みのある器はスープボウルとしてもだが、丼鉢としても使えるもので。


「これは、俺が使うけど……恵理の店用に買うんなら、帰りがてら伝えとくな」


 そんな言葉をありがたく思いつつも、流石に悪いと思ったのでティートから聞いた海藻情報と、入手したらグルナにも分けると伝えた。途端に鳶色の目をキラキラされたのを見ると、彼も海藻を欲していたらしい。

 そして数日後、店で使う食器をアダラに依頼する為、恵理はローニの店へと向かった。


「蓋付きの深い器、大きいのと小さいのを作るのかい?」

「はい。グルナに作って頂いたようなのをどんぶり用、あと味噌汁用……えっと、メイン料理とスープに使いたくて。あの、幾らくらいでどれくらいかかりますか? それぞれ、二十個くらいずつお願いしたいんですが」


 ローニ同様、ドワーフの女性であるアダラは小柄ながらも、ガッシリとした体躯をしていた。

 それでも大きな茶色の目には愛嬌があり、後ろで三つ編みにして束ねた茶色い髪は女性らしく艶やかだ。何でも、三日に一度は大浴場に行ってリン酢を使うらしい。


「大きいのは銀貨三枚、小さいのは銀貨一枚と銅貨五枚だね。今は急ぎの仕事もないから、そうだねぇ……四日もあれば」

「えっ!?」

「良い反応だ! まあ、普通は早くても一週間以上はかかるからね……ただ、幸いアタシは風属性の魔法が使えるから、乾燥や冷ます時間を調整出来るんだよ」


 驚く恵理に、アダラが朗らかに笑って説明してくれる。

 銀貨は日本円だと一枚千円くらいで、銅貨は一枚百円くらいだ。値段も手頃で(手間暇を考えるとむしろ安い)出来上がりも早いとなると、躊躇する理由がまるでない。


「お仕事をお願いしたいんですがっ」

「ああ、いいよ。どうせなら、アンタの店に食べに行きたいが……旦那達は、仕事を始めると時間を忘れがちでねぇ。なかなか、夫婦で外には食べには行けないのさ」

「あのっ! だったら、出前……食事を運んだら、食べて貰えますか? 蓋をつけて貰うのは、運び易いのと冷めにくくする為でもあるんですっ」


 アイテムボックスで持ち運べば関係ないが、性質上私物や冒険者だと獲物を入れたりもするので、注文した食べ物を取り出されるのは抵抗があるかもしれない。だからグルナがしてくれたようにバスケットか、いっそ岡持ちのような箱での持ち運びを考えている。


「オカモチ?」

「ええ、私の故郷で使っているんですけど……木とか金属の箱で、中を二つか三つくらいに仕切って、料理を持ち歩くんです」

「へぇ、面白いもんだねぇ……旦那に、作って貰うかい? そしてそのデマエとやらを、週一くらいでお願いしたいんだけど」

「はい、喜んで!」


 答えてから、注文のタイミングをどうするかと悩んだが――アダラから、大浴場に行くタイミングで頼みに行くと言われて解決した。ローニとアダラ、そして弟子の分と三人前を頼みたいと言う。

 流れで色々と決まり、ホクホクして恵理が店に帰ると、レアンからルーベルが来ていたと伝えられた。


「明後日、帝都から『例の方々』が来ることに決まったそうです……もっとも、しばらくは体調を整えるのに専念するそうですが。治ったら、店長のどんぶりを食べたいそうです」


 そこまで言って、レアンが珍しく嫌そうに顔をしかめる。


「何でも、せっかく帝都から行くんだからって新作希望だそうですよ……話に聞いている以上に、偉そうな方なんですね」

「まあ、Aランクで元リーダーだから」

「Aランクはサムさんやエリーさんもですし、今は一冒険者ですよね?」


 恵理がフォローする必要はないのだが、レアンの言っていることはいちいちごもっともだ。とは言え、恵理にも言い分がある。


「怒ってくれるのは嬉しいけど、それでレアンの眉間に皺がつくのは嫌だわ?」

「……ズルいですよ、店長」

「好かれてるって解れば、多少は強気になれるのよ……ただ、グイドのはまた違うから。新作で、話す口実が出来るなら好都合だわ」


 照れるレアンにそう言うと、恵理は脳裏に浮かぶグイドの面影に対して、挑むように口の端を上げた。

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