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調理器具に続いて、更なる食材を

 今回、レアンにこんにゃく芋からこんにゃくを作って貰う時、困ったのが「どうやってこんにゃく芋を撹拌するか」だった。

 恵理は風魔法で、そしてグルナは身体強化で食材をミキサーのように撹拌出来る。

 だが、レアンの場合は――この世界の住人なので、魔力はある。けれど、その魔力を誰もが魔法として使える訳ではない。


「身体強化は使えますから、それを料理に応用すればいいんでしょうか」


 魔法として外に放つことは出来ないが、魔力を体の中で操り肉体を強化する身体強化ならレアンは使えると言う。

 しかし、元々が腕や足に集めて攻撃力を上げたり防御に使ったりするものなので、それを手に集めて高速で動かすというのがピンとこないようだ。自分の手をジッと見て、首を傾げている。


「って言うか、ミキサーがないからすり鉢を使って貰うことになるのよね」


 そう、ティエーラでの食材の撹拌方法はすり鉢ですりおろすか、火を通した後に裏ごしをするかだ。似たような器具で『チーズ削り器』はあるが、名前通り『削る』ものなのですりおろしとは違う。

 今回、火は通せないのであとはすり鉢一択である。身体強化を使わなくても出来るが、量やその後の作業を考えると身体強化で時間短縮したい。だが一方で、勢い余ってすり鉢を壊さないか心配になるのも解る。


「えっ? おろし金あるぞ?」

「えっ?」


 そんな恵理に、むしろ不思議そうにグルナが言葉を続ける。


「いや、あれ、日本だと当たり前だけどティエーラ(こっち)にはないだろ? だから地元に帰ってきた時、鍛治職人のローニさんにお願いして作って貰った。ちなみに、天突きもあるぞ」

「ちょっ、職人さんに何させてるの? しかも何で、天突きまで?」


 鍛冶職人は武器や工具、または農具を作る職人である。

 しかも確か、話題の鍛冶職人は小説などに出てくるドワーフの男性だ。亜人でありながら、彼らドワーフの作る武器や細工はどれも一級品で。全く差別がない訳ではないが、その技術故に一目置かれている。

 そんな彼に、異世界の調理器具を作らせるとは。更におろし金だけならまだしも、天突きとは糸こんにゃくなどを作る為の器具である。しかし、今までこんにゃく芋があると知らなかったのに何故、器具だけがあるのだろう?


「あぁ、くずきり作るのに欲しくなった。葛は今のところ見つけてないけど、じゃがいものでんぷんで作って、サラダに使ったり汁物の具とかに出来るからな」

「人に、やらかしたとか言っておいて……地元とは言え、何してるのよ!」


 などとグルナにツッコミを入れた恵理だったが、すり鉢を使うよりは力の調整がし易かったようでレアンは無事にこんにゃくを作ることが出来た。

 そしておろし金を見たティートが「これは、良い商品になりますね」と目をつけたのだが――ここで予想外だったのは、商品化する為に量産するのをローニが他の工房に任せると言い出したことだ。


「ウチは、ワシと弟子二人だけだ。たくさん作るのは向いとらん。元々、グルナと遊び感覚で作ったもんだしな……むしろ、そんなので特許料が入る方が申し訳ないわい」


 まあ、貰えるモンは遠慮せず貰うがな!

 そう言ってローニが朗らかに笑い飛ばしたと聞いて、何というか本当に『職人』なんだなと恵理は思った。



「リンスとは違って、おろし金は奥様達が買っていきますね。消耗品ではないので、爆発的な売れ方ではないですが……親戚や、近所の奥様に頼まれて買う方もいるようです」


 ティートの説明を聞いて、成程と思う。そして、リンスは人を呼ぶ為に今はロッコ(ここ)だけで売っているが、おろし金はいずれルベルや帝国で売られるかもと思った。


(確かに一度、使うと便利よね)


 納得したところで、恵理もまたティートに聞きたかったことを思い出して口を開いた。


「ティート」

「何ですか、女神」

「実は、念願の味噌が完成したんだけど……今時期は、豆腐とスピナ(ほうれん草)を使うけど冬野菜だから。旬の時期以外は、海藻を使いたいのよね」

「カイソウ?」

「えっと、海に生息する生物……って言うか、植物って言うか。味噌汁の具に使えたらって思うんだけど」


 聞き返されたので、ティエーラでは海藻という言葉自体がないのだと知る。

 それ故、駄目元で特徴らしきものを説明してみると――ティートから、思いがけない答えが返ってきた。


「ああ、海の野菜……アルガとダルスのことですか?」

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