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新たなる食材、ゲットする

「俺達獣人族の里は、帝国の北方……さっきの話に出ていた、山脈の中にあります」


 一同の視線を受けて、レアンが説明する。


「泥カブとしびれ芋は、それぞれ毒じゃないんですけど……とにかく、マズくて。だから山で見かけても、里では誰も口にしません」

「まあ……確かに、そのまま食うもんじゃないからな。でも、てんさいは絞り汁から砂糖が作れるし。こんにゃく芋からは、恵理が言ってたこんにゃくが作れる」

「それは本当ですか!?」


 そう声を上げたのは、レアンではなくティートだった。

 確かに高価な砂糖や恵理が話した未知の食材とくれば、商人としては飛びつくだろう。


「女神! 女神には店がありますから、レアンさんの故郷には僕が行きます!」

「……ごめんなさい、ティートさん。それは、無理です」


 そして立候補したティートに、レアンが申し訳なさそうに言った。


「店長もです。近くまでは、何とか行けても……里に人間が入り込まないように、魔法がかけられているんです」

「そんな……」

「帝国での差別もですけど……ニゲルだと、何か妙に崇め奉られて。だから、静かに暮らしたい面々は里から出ずに暮らしています。とりあえず、食うには困らないので」

「……そうだったの」

「はい。だけど、服とか生活用品は欲しいですし……それらを買う為のお金を稼ぎたかったり、外の世界を見たかったりすると俺みたいに里を出ますね」


ティートが残念そうな声を上げるが、恵理としてはニゲルでの獣人への認識に少し驚いた。日本にもケモミミ萌えはあったが、中国風だと思っていたニゲルにもそんな風潮があるのだろうか?

 そんなことを考えていた恵理の前で一旦、言葉を切ってレアンがピンっと獣耳を立てて話の先を続けた。


「だから店長、俺が行きます。泥カブとしびれ芋を掘って、持ってきます」

「ありがとう……でも、私としては買ってきて欲しいの。ミリーの魔法で育てて増やすにしても、ある程度は量が欲しいから」

「えっ……だって、里では誰も食べないですよ?」

「だけど、私は……私達は、ちゃんとした価値を知ってるもの。それにさっき、レアンが言ってたじゃない。服とかを買うお金がいるって。私達が買って、そのお金で里の人達も助かるならほら、幸せ!」


 そう言ってにっこり笑うと、レアンが大きく目を見張り――次いで、頬を引き締めてティートを見た。


「ありがとうございます、店長……そして、そういうことならティートさん。里には連れて行けませんが……泥カブとしびれ芋を買うお金を、俺一人で持っていくのは危ないですから。すみませんが、同行して下さい。お願いします」


 それから頭を下げたレアンに、ティートもまた頭を下げた。


「解りました……そして、そういうことならお金もですが、我が商会の商品も持って行きましょう。お金を払って頂けるなら、どんな方でも立派なお客様ですからね」

「っ! ありがとう……ございますっ!」


 獣人を全く厭わないティートと、それにますます頭を下げたレアンを――恵理達は、微笑ましく見守った。

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