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異世界温泉であったかどんぶりごはん(旧題:パーティーを解雇されたアラサー女子はどんぶり屋を開く)  作者: 渡里あずま
第一部

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朝食兼試食です

 男達の反応を見る限り、ラムしゃぶ丼はメニューとして十分、通じるだろう(名前は、少し考えなくてはいけないが)。

 そしてあと一つ、恵理が提案したのは『ラグーソース丼』だった。

 元々、この世界にはラグーと呼ばれる煮込み料理(肉や魚を煮込む料理全般。トマトソースも入れるが、ワインで煮込むのが一般的)があったのだが、恵理はワインを使わず日本のミートソースのようにトマトをメインにし、こちらの世界でも通じる名前で、パスタソースとして売り出したのだ。

 ちなみに、異世界転移補正か基本的な言葉は通じるが――和製英語や、一部の単語はどうも通じない。それ故、野菜や果物など『地球にもあるが呼び名が違う』ものについては、アレンに字を習う時に(読めるが書けなかったので簡単に)教えて貰って覚えた。


(日本だと、砂糖とか入れてもうちょっと甘く作ったりもするけど……砂糖は高価だし、トマトの酸味が活きるから、これはこれで良いと思うのよね。ケチャップ味は、女性と子供には受けるし)


 そう、ラムしゃぶ丼が男性向けなら、このラグーソース丼は女性と子供をターゲットにしている。

 そして恵理は昨日、パスタに合うものはリーゾ(米)にも合うと主張した。その為、今朝は朝ご飯兼試食としてラグーソース丼を用意している。


「うわぁ……」

「目に鮮やかですね」


 居住スペースには、小さいながらもテーブルがあったので多少、狭いが今朝は店から椅子を持ってきてテーブルを囲むようにした。そこに深めの皿を並べると、レアンとティートが感心したような声を上げる。

 今回、どんぶりにするにあたってバラ肉を購入して刻んだひき肉の他に、大きめに切って炒めた茄子も入れてトマトソースに絡め、ちぎったチーズを乗せている。茄子はティエーラ全域にあり、チーズもルベルからアスファル帝国に持ち込まれているのでありがたい。


「じゃあ、食べましょうか」

「「「「はい」」」」


 そして皿を並べて席に着き、恵理達はスプーンでラグーソース丼を食べ始めた。恵理としては、作った張本人なので「うん、まずまず」くらいの認識なのだが。


「うわぁ……この赤いのの酸味と白いの、一緒に食べると美味しいですねぇ!」

「確かに。元々、女神の『ラグーソース』は肉のあぶらが加わって旨味となっていましたが……オーベル(茄子)も、調理油を吸っているんでしょうが……美味しいです」

「美味いです、師匠!」

「サムってば……エリ様、このケーゼ(チーズ)も良いですね。そしてエリ様の言う通り、リーゾ(米)に合います」


 レアンとティート、そしてサムエルとミリアムは口々に褒めながらスプーンの手を止めなかった。そう、ケチャップライス(トマトソースとご飯なのだから間違えていない)は美味しい。日本人の恵理からするとなんちゃって洋食だが、元々が異世界なので問題ないだろう。


「こうしてリーゾにも合うけど勿論、麺料理やパンにも合うし。あと、コトレッタ(カツレツ)のソースにも使えるわ。更にこれはひき肉だけど、ラグーも海鮮を入れたりするでしょう? この辺なら川魚とか、あと入れる野菜でも印象は変わるわね」

「女神の店で、麺料理や肉料理も出すのですか?」

「いえ? うちは、あくまでも『どんぶり』……リーゼに、ソースやおかずを乗せたもののみよ。当面は、今回のと昨日の二種類でいくつもり」

「では……もしや?」


 ティートからの問いかけに答えると、すぐに何かに気づいたように声が上がった。それに頷いて見せて、恵理は話の先を続けた。


「そう、ロッコの他の飲食店も巻き込んで……『ラグー飯』を、売り出したいの」


 B級グルメには贅沢ではない、庶民的な料理という意味もあるが――もう一つ、その地域に行くと食べられるご当地グルメという意味もある。更に今、語ったように応用が利くので各店でオリジナリティを出すことも出来る。


(カレーとかいけたら最高だけど、あのスパイス祭りの料理は流石にね)


 仮に輸入出来たとしても、価格が恐ろしいことになる。そして恵理にはもう一つ、ティートに頼みたいことがあった。


「だから、すぐには無理だけど……トマテ畑を、作れないかしら?」


 自分が言い出したので、当初はトマトソースは商会経由で買い取って各店舗に安く配布することも考えている。ただ、地元飯としたいならより手軽に手に入れられた方が良いと思ったのだ。


「……無理、ですか? 畑と苗さえ用意して頂ければ、私が魔法で育てますよ?」


 そんな恵理に、ツインテールの頭を傾げてミリアムが言う。

 恵理よりも更に小柄な彼女だと、大きな灰色の瞳が上目遣いになるのだが――可愛いと、和んでいる場合ではない。そう、彼女はSランクの魔法使いで、忘れていたが地属性(つまり、植物の促進栽培が出来る)の持ち主なのだ。


「ありがとう、助かる!」

「いえ……」


 ついテンションが上がり、そう言って破顔した恵理にミリアムがはにかんだ笑みを浮かべる。美少女(いや、成人しているが見た目的に)は、はにかんでも可愛いとしみじみしていると。


「師匠! それなら、俺達とギルドに行って畑の話しましょう! この街の管理って、冒険者ギルドのギルマスがやってるんですよね!?」


 サムエルの言葉に、成程と納得する。元々、サムエルとミリアムは今後のこともあるので挨拶に行く予定だったが、一緒に行けば話も早い。


「そうね、ありがとう」

「……へへっ」


 それ故、恵理がお礼を言うとサムエルは嬉しそうに笑った――二人とも成人済なので流石に控えるが、頭を撫でたくなるくらいどちらも可愛かった。

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