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どうしよう、話が通じない

「言い出したのはアマリアさんでしたが、僕達も同意しています」

「……師匠、怒りました?」

「エリ様……」

「いや、まあ、怒ってはいないけど」


 恵理の問いかけに答えたティート、そしてそれに賛同していたサムエルとミリアムに何と言えばいいのかしばし悩んだ。


(アマリアとこの子達、あとギルマスは私の為に動いてくれた訳だし)


 それ故、勘違いだけはされないようにそこだけは伝えたが、途端に三人が目をキラキラと輝かせてこちらを見てくるのには困った。そう、怒ってはいない。いないのだけれど。


「だけど……そう、申し訳ないって言うか。わざわざ店を用意して貰ったり……まあ、それは買い取らせて貰うんだけど、素人の私にこんな良い場所の店を……あと、サムとエリーはパーティーを辞めても、帝都で冒険者自体は続けられたでしょう? まあ、働きすぎだったから確かにしばらくのんびりするのは賛成だけどね」


 自分はここまで優遇して貰ったり、今までの生活を捨てて追いかけてきて貰うような大層な人間ではない。それこそ、あの馬鹿にババア呼ばわりされるような年増の一冒険者だ。

 そう思い、本音を打ち上げたが――ティート達には、受け入れられなかった。いや、むしろ悲痛な表情で口々に訴えてくる。


「そんなっ!? むしろ、僕としては神殿を建てたつもりなのでお金なんてっ」

「師匠がいないなら、帝都になんて未練はないです!」

「私も、サムと同感です。エリ様に学んだことを活かせる、冒険者を辞めるつもりはありませんが……エリ様がいないなら、帝都にいる意味はありません」

「……えっと」


 どうしよう、話が通じない。

 ティート一人でも大変なのに、更に二人。いや、アマリアも来るのでまだ増えるのか――本当に、どうしよう。すっかり途方に暮れた恵理に、今まで黙っていたレアンが口を開く。


「エリさん、ティートさんにはまず街興しを手伝った方が喜ばれると思います」

「レアン……」

「そうです! 女神の加護を得られるのなら、神殿の一つや二つ!」

「いや、二つもいらないんだけど」

「エリさん、それくらいの気持ちがあるってことですよ。あとサムエルさんとミリアムさんについては、ここにいる間どこで泊まるつもりだったんですか?」

「えっ? とりあえず、冒険者ギルドで世話になろうかと」

「もう日も暮れます。せめて今夜は、この店に泊まりませんか? 冒険者ギルドには、明日以降行けば……酒場兼宿なら、多分二階が宿だと思うんですよね。部屋数を見ないと、何とも言えませんけど。最悪、女性陣と男性陣で二部屋あれば、今夜一晩は……」


 そこまで言ったところで、レアンがペタリと耳を伏せた。それから琥珀色の眼差しを揺らして、恵理を見上げてくる。


「……勝手に、色々すみません」

「ううん! むしろ、ありがとう」

「とんでもないですっ」


 おかげで色々と考えてしまったが、落ち着くことが出来た。だから、とお礼を言うとレアンが恐縮しつつもピンと耳を立てて尻尾を振る。


(しっかり者のもふもふ、これは癒される)


 しみじみそう思っていると、三人がそれぞれ口を開く。


「エリ様と、同じ部屋……あの、よろしいんですか?」

「ありがとうよ、坊主! 師匠、よろしくお願いしますっ」

「女神、せめて今夜だけでも僕も同じ屋根の下に」

「むしろ、皆が良かったら……あとティート、街興しのことでちょっと提案があるんだけど。続きは、店の中で話しましょう?」


 そう恵理が言うと、レアンも含めて一同の顔に笑顔が浮かぶ。

 そんな彼らに微笑みながら、恵理はチラッと周囲に目をやって――自分の店の他にも、飲食店らしき建物があるのを確かめた。


(……街興しとくれば、B級グルメよね?)

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