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初めてだから、と思っていると

 風呂から上がったところで、恵理達は食堂へと移動した。

 皇太子ジェラルドと令嬢達、そして護衛達がそれぞれのテーブルに着いている。そしてそのテーブルの上には、風呂に入る前に注文された料理やパンが置かれている。

 パンは昼には売り切れも出る人気商品だが、注文された時にそれでは困るので、貴族達が来る時は冒険者ギルドで少し買って取り置くことになった。部屋に限りがある為、二階は予約制だ。だから毎日ではないし、残ればギルドの受付や冒険者で食べれば無駄がないと、ルーベルは笑っていた。

 そして、そんな料理の中には恵理のどんぶりもあった。

 珍しいからか、カツカレー丼は全員に注文されていたが――その量は以前、小食な女性や子供の為にと用意した半どんぶりた。香辛料満載なので万が一、口に合わなかった時用の対策だと思われる。


「色々と頼みましたから、楽しみですわ」


 そんな考えが顔に出たのか、テーブルに着く前にヴェロニカが恵理に言った。確かに彼女の席の前にはカツカレー丼と、前に食べて気に入ったのかハヤシオムライス丼。あとは、ラグーソースとチーズの乗った総菜パンがある。


(何か、慰められちゃった……ヴェロニカ様、本当に良い子)


 ほっこりとした気持ちになりながら、恵理はルーベルとティートと共に壁へと移動した。給仕の為の従業員も控えているがルーベルも言った通り、ロッコの料理はグルナと恵理の影響で他にはないものばかりだ。それ故、質問が出た時の為にまだ退席せずにいる。

 ちなみにジェラルドと令嬢達は未成年の為、そして護衛達は職務中の為、お酒ではなくりんごジュースを出している。しかもこちらでは当たり前な、水で薄めたものをだ。


(日本のイメージだと、百パーセントじゃないと駄目な気がするけど)


 しかし、くり返しになるがティエーラでは当然である。

 郷に入っては郷に従え。かつての日本のことわざを、恵理は心の中で唱えた。


「では、頂きましょう」


 ジェラルドの声を合図に、令嬢達や護衛達が料理――と言うかマズかった時の為か、まずカツカレー丼に口をつける。

 ……それからしばし無言で食べた後、ジェラルドとアレクサンドラとソフィアが、キッと顔を上げて恵理を見た。


「何ですか、この辛さの中にも美味さがある料理は!?」

「帝都でも、こんなに香辛料が使われた料理はありませんわ!」

「しかもこんなに貴重なのに、この揚げた肉と白いリーゾとの組み合わせで、スプーンが止まらなくなります!」

「……ありがとうございます」


 食レポかな、と内心ツッコミを入れつつも、気に入って貰えたようなので恵理はホッとした。

 そんな恵理をしばし見つめると、ジェラルドが思いがけないことを口にした。


「店主……帝都で、店を出す気はありませんか?」

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