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最高のごちそう

「おう、邪魔させて貰うぞ」

「今日はありがとうね」

「お、お邪魔します!」


 ちょうど心に誓ったタイミングで、ローニ達もどんぶり店へとやって来た。ローニとアダラとは面識があるが、弟子のハールはこうして会って話すのは初めてだ。


(ドワーフらしく、小柄だけど……髭はないし、がっしりしてないし、若いからかな?)


 くせのある短い栗色の髪と瞳。小柄でこそあるが、あまりごつい感じはしない。そんな恵理の疑問が顔に出たのか、アダラは笑って答えてくれた。


「ああ、作業に邪魔だからって髪を切って男装しているが、ハールは女の子だからね」

「えぇ!? 失礼しましたっ」

「いえ、気にしないで下さい! よく間違えられるんです。おかみさんみたいに、女性の職人さんもいるんですが……鍛冶職人は、火を使うので。安全を考えてなんですよ」

「私も、冒険者の時に危ないから短くしてました……楽なんで、辞めても短いままですけどね」

「……楽ですよね?」

「ええ」


 内緒話のように尋ねてくるハールに、恵理が大きく頷くと――ハールは髪と同じ栗色の目を軽く見張り、次いでくしゃっと笑みの形に細めた。



 レアンがカツカレー丼を配膳し、蓋を開けた途端に皆の目が輝いた。


「すごいです、店長!」

「トンカツには、こんな食べ方もあるんですね女神っ」

「肉が、トンカツなんて……無茶苦茶、贅沢」

「ご馳、走」


 カレーを食べたことのあるレアン達は、追加されたトンカツに反応し。


「香辛料だけでも、豪華だけどぉ……トンカツまで乗ると、派手で素敵ねぇ。これなら、貴族の方々にも喜んで貰えるわぁ」

「随分と、パンチの効いた料理だな!」

「出前でリーゾは食べていたけど、こういう辛いソースと食べるとまた進むねぇ」

「辛っ! でも、美味しい……この肉も、噛んだら口の中に肉汁が!」


 今日、初めて食べるルーベル達はまず香辛料に、それからタイ米やトンカツに反応した。辛いので水を飲みながらも食べ進め、ティートから手に入れた海藻と豆腐の味噌汁でホッと一息つく。


「カレーはルビィさんの言う通り、貴族様向けのメニューになりますが……ローニさんのおかげでトンカツは遠慮なく揚げられるので、これからはカツ丼も出すことが出来ます。本当に、ありがとうございました」


 そして皆が食べ終えて一息ついたところで、恵理はローニにそう言って頭を下げた。そんな恵理に、ローニは二っと口の端を上げて言った。


「職人にとっては、お礼や誉め言葉も良いが……しっかり使って貰うのが、最高のごちそうだ。こっちこそ、ありがとうな」

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