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色々とウィンウィンで

 ローニ達と別れ、どんぶり店に戻る前に恵理はグルナの店によった。新作メニューのお披露目へのお誘いもだが、アジュールで買ってきた香辛料のお裾分けの為である。


「武闘会でのご褒美ってことで、関税を無くすのは私個人の取引までなの。でも、ティートの商会で定期的にアジュールに行って、てんさい砂糖や他の商品と交換で仕入れてくれることになったから……少しなら、これからもグルナに香辛料分けられるわ」

「いいのか!? ってか、俺も払うからな!」

「いいわよ。コンソメとかのお礼のつもりだから」

「良くねぇよ。親しき仲にも礼儀あり! あ、でももし、コンソメ気になるなら……これ!」


 そこまで言ってグルナが指差したのは、一緒に買ってきたコーヒーの粉だった。

 アスファルでは紅茶はあるが、コーヒーはない。だからアジュールで飲んだ時もティートは気に入ったようだが、サムエル達は香辛料の後味をスッキリさせる飲み物くらいにしか思わなかったようだ。しかし、グルナにとってはそうではなかったらしい。


「あの、アジュールではフィルターとか使わないで直接、鍋で煮込むそうなんだけど……大丈夫?」

「ああ! フィルターは端切れで作れるからな……久々のコーヒー! あるのかどうかも、解ってなかったんだが……あるなら、ぜひ! 仕事の後の一服に……ギブミーコーヒー!」

「え、ええ」

「やった!」


 グルナの勢いに押され、何とかそれだけ返事をし――途端に満面の笑顔になったグルナに、恵理もつられて微笑んだ。



 お土産は渡せたが、時間はまだ午後。グルナは店があるのでカレーは明日以降、届けに来ることになった。

 ルーベルには大浴場で声をかけているので、あと一時間くらい。夕五刻(日本の十七時)くらいに店に来てくれる。ティートやサムエル達も、荷物などを置いて一休みした後、来ることになっている。

 そんな訳で、店に戻った恵理は店の掃除を終えたレアンに出来上がるまで一旦、部屋で休むように声をかけた。それから顔や手を洗い、エプロンをつけて早速、新しい厨房を使うことにした。

 今回、魔石を使う竈が三つに増えた。おかげで、タイ米を炊きながら野菜を煮て、更にカレー粉を炒めるのも同時進行が出来る。今回は『カレー丼』にするので、野菜を煮る時に魚醤を入れて味つけをし、それからカレールーを入れた後、水溶きコーンスターチを加えてとろみをつけた。

 しばし煮込んでいる間に、恵理が作り出したのはトンカツである。


(アルゴが言っていた「美味いものと美味いものを合わせると、より美味い」は真理よね)


 トンカツは、カツ丼を出しているのでロッコの面々には馴染みがある。元々、美味しいカレーに美味しいトンカツを乗せれば足し算どころではなく、かけ算になると思ったのだ。

 今までは、トンカツを作ると厨房や店に熱がこもったが、今は違う。竈の上には、プロペラのついた大きな覆いがついている。スイッチを入れると途端にプロペラが動き、こもった熱があっという間に吸い込まれていった。

 それに恵理は満足げに頷き、揚がったトンカツを切り、ご飯・トンカツ・カレーの順番で丼鉢に盛りつけていく。

 最後に、異世界でも料理の彩りに使われているグリーンピースを乗せたところで、ティート達が興奮したような声を上げて入ってきた。


「女神! 店から、すごく美味しそうな匂いがします!」

「カレーもだけど、揚げ物の匂いも! もしかして、トンカツですか師匠!?」

「……楽し、み」

「エリ~、改装大成功じゃない~?」


 いきなり言われて、驚いたが――排気口が、店の前に排出されるように作られていたらしい。結果、換気扇で吸い込まれたカレーやトンカツの匂いが排出され、店の前の通りに流れたという訳だ。


(匠……いや、ローニさん、有能すぎる!)


 飲食店としてはありがたい改装に元々、支払っていた改装費の他に、追加料金も出そうと心に誓う恵理だった。

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