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男女雇用機会均等法は、異世界にはまだない

本日二話更新します。

 女冒険者と言うと厳ついゴリラのように思われるか、舐められるか心配されるかはともかく、手加減されるかどちらかがである。

 恵理としては、実戦ではそんな甘ったるいことを言っていたらやられるだけなので、しゃんとしろと思うが――それを、口に出して教えることはしない。いや、最初はいちいち言っていたのだが、きりがなかったので口で言うのはやめて、叩きのめすことで甘えるなと伝えてきた。


(レアンも、少しは遠慮するかなって思ったけど……杞憂だったみたいな)


 恵理の蹴りを受けることは出来るが、それだと今までのように防戦一方になると思ったのだろう。

 恵理が挑発するように返した刹那、今度はレアンが突進してきて拳をくり出してきた。風を切る音から考えると、確実に拳にも強化をかけている。


「……っと!」


 思わず声を上げつつ、避けた恵理はレアンとは違い、身体強化は使えない。全くいない訳でないらしいがレアンやグルナ、あるいは恵理やミリアムのように身体強化と魔法のどちらかだけ使えて、もう一方は使えない者がほとんどなのだ。


(ない物ねだりしても、仕方ないし……有言実行しないと、カッコ悪いからね)


 まだまだ、と言ったのだから、予想外のことをして相手の度肝を抜かなければ。

 自分を奮い立たせるように、心の中だけで呟くと――恵理は、次の攻撃について考えた。

 単なる蹴りだと、今までのようにレアンに受け止められてしまうだろう。

 踵落としのような高い蹴りだと、振り下ろすことで勢いと体重がかかり、威力が上がると思うがその分、片脚でいる時間が長い。だから、その隙にレアンに殴られそうな気がする。


「よっ!」

「うわっ!?」


 それ故、恵理は第三の方法として地面を蹴ると、レアンの肩に手を置き側転のようにして彼の頭上を飛び越えた。大技に見えたのかレアンが、そして闘技場全体が驚いて声を上げるが、恵理としては体育の授業での跳び箱や、マット運動くらいのイメージである。

 それから、レアンの背後に降り立つと――恵理は彼女の回転に何とか崩れ落ちずに堪え、体勢を崩しながらも振り返ったレアンの腹にミドルキックを放った。


「っは……!」


 ……不意打ちに成功したらしく、お腹には強化はかからずに蹴りは綺麗に決まり、レアンは声を上げつつ吹っ飛んで、背中から倒れて闘技場で仰向けになった。

 そんな彼にとどめを刺すように、ではなく。万が一でも反撃されるのを防ぐ為、恵理は足を振り上げるとその喉元すれすれに降ろして止めた。


「……降参、します」


 大声を張り上げた訳ではない。ただ、恵理が躊躇なく蹴り飛ばしたことで静まり返った闘技場に、レアンの声はよく通った。

 そして、しばしの沈黙の後――闘技場を揺らさんばかりの歓声が上がったのに、恵理はレアンから足を離し、代わりに身を屈めて手を差し出した。


「精一杯、相手してくれてありがとう」

「……こちらこそ。明日、頑張って下さい」

「ええ」


 笑顔でそう言った恵理に、レアンも笑みで応えると――恵理の手を取り、その身を起こして立ち上がった。

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