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王子と剣闘士

本日二話更新です。

 闘技場で闘った次の日の朝。アルゴはいつものように目を覚ました後、軽く柔軟や素振りをしてから朝食を口にした。

 アルゴは王宮に自分の部屋を持つが、食事などはサイードと別である。

 けれど、王宮という同じ屋根の下にいる為、王子がアルゴの元へ来ることはあり――今朝もサイードは、部屋で食事を終えたアルゴの元へとやって来た。


「アルゴ! 優勝したら、何がほしいっ?」

「……気が早い」

「まあ、確かに他の参加者も強そうだし……僕は、贔屓などしないからな! 出来る限り、叶えるが……そもそも、お前は普段から何もねだらないではないか。そんなのだと、優勝した時に困るのはアルゴだぞ?」


 開口一番、そう言って指を差してくるサイードは、何と言うか子供なのに偉そうだ。いや、実際に偉いのだが。


(王子だもんな)


 サイードは長袖で前開きのガウンを着て、その上から華やかな刺繍の施した上着を着ている。その格好だけで、少年が富裕層だというのは見て取れた。

 アジュールの男性服は、貧富の差が露出度で表れる。露出が少なく、肌を覆っているほど豊かな証拠だ。『男性服』と断ったのは、女性の場合は美しさを表現する為、あえて露出度の高い衣装を着る場合もあるからだ。

 しかし、仮に平民の服を着ても――少し癖のある髪や肌などがそもそも綺麗なので、お忍びの変装にしか見えないだろうが。


(でも、そうか。丸投げはマズいか)


 勝負はやってみないと解らないが、確かに何をねだるかくらいは考えておいた方が良いだろう。そう思い、しばし考えて――ふと思いついた言葉を、アルゴは口にした。


「……うまくて、珍しい飯が食いたい」

「えっ?」

「王宮の飯はもちろんうまいし、高級品だと解っているが……異国の料理とかも、食べてみたい」


 元々、アルゴは食べることが好きだ。更に今日、そして明日闘うのが異国人だからか、そんなことを思いついた。そして口に出してみて、我ながら名案だとアルゴは悦に入った。


「わかった! 美味しい、異国料理だな?」

「ああ」

「約束する! 勝っても、負け……いや! とにかく、武闘会が終わったらアルゴにご馳走しよう!」


 アルゴからの要求がよほど嬉しかったのか、サイードは快諾した。とは言え「負けても」というのは縁起が悪いと思ったのだろう。咄嗟に遮り、笑って言い切った。


(子供なのに、気遣いが出来て偉いな)


 咄嗟に頭を撫でたくなるが、身分などを考えると流石にまずいだろう。

 それ故、アルゴは心の中だけで目の前の少年を褒め、ご馳走を活力として今日の闘いも頑張ることにしたのである。

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