ミリアムの主張と、ガータの葛藤
本日二話更新です。
エリとレアンの後、サムエルの番が来たのにミリアムが僅かに、けれど確かに身を乗り出す。
「……あれ、何?」
出てきたのはアジュール人だったが、手にしている武器はミリアムが初めて見るものだった。
草を刈る鎌は、アスファル帝国にもある。
だがそんな鎌二つを、長い鎖が繋いでいる。昨日の闘いでは、長い槍を使っていたようだが――あの武器は一体、何なのだろうか?
「確か、ニゲルの武器だ。全員じゃないが、武闘会には結構、剣闘士が参加する。そして剣闘士は、他国も含めて色んな武器を手にするからああして、珍しい武器を使う者も出る」
「あなた、も?」
「いや。私はあれこれ考えながら、武器を使うのが苦手でな……普通に剣で、闘った」
そう言うと、ガータは気まずそうに頭を掻いた。
見た目は美人だが、彼女は本人も言う通り脳筋タイプなのだ。時折、言動に引っかかるがガータは単に、思ったことをそのまま言ってしまうのだろう。
(エリ様に対しては、腹も立つけど……お風呂とかご飯、お世話になったし)
帝国貴族のように、裏表がある人間よりはよっぽど良い。そう結論付け、ミリアムは口を開いた。
「サムも、そう……まあ、本人なりには頑張ってる、みたい」
そしてそれだけ言うと、ミリアムはサムエルの闘いを見守ることにした。
※
見たことのない武器は、どう使うのかと思っていたら――開始の声と共に、男が一方の鎌を鎖で振り回し、その遠心力でサムエルへと投げつけてきた。
「おっと」
避けるとすぐに鎖を引き寄せ、またサムエルの手や足を狙って投げつけてくる。
これだとなかなか、相手の間合いに近づけない。しかもあの鎌付きの鎖に絡まったら、引っ張られてもう一方の鎌を突きつけられると思う。
(……いや、そうでもねぇか?)
そこまで考えて、サムエルはふとあることに気づいた。
そして、即実行しようと――飛んできた鎖にわざと左腕を絡め、喜色を浮かべた相手を逆に思い切り引っ張った。
「なっ……うわっ!?」
予想外の展開に驚いている相手の首に、すかさず鎌と鎖が巻き付いたままの左腕を巻き付ける。それからサムエルは、右手に持っていた剣の刃を拘束した相手の顔近くにかざして言った。
「力任せは、十八番なんだ……で、降参するか?」
※
「サムは、頭が良い訳じゃないけど勘は働く……だから、勝つ。そして、そんなサムが認めてるのが、エリ様……それでも、不安?」
闘いが終わり、サムエルの勝利を見届けたミリアムはガータに尋ねた。相棒の勝利により無表情ながらも頬を赤く上気させ、灰色の目を輝かせている。
「……いくら強くても、彼女は人間の女性だ」
けれど、困ったように眉を八の字にして――ガータはそれだけ言うと、ミリアムから視線を逸らした。
 




