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もう、いいよね?

 地球でも日本でも、女は二十五歳を過ぎたら行き遅れと言われてはいたが。

 そのことを思い出したのは一人で依頼を受け、結果報告の為に冒険者ギルドに来たところでパーティーのリーダーであるグイドから、ある単語を言われたからだった。


「なぁ、エリ。もう辞めちまえよ。結婚も出来ないババアが粋がって、見苦しい」


 エリ、こと真嶋恵理まじまえり三十歳。

 十二歳の時に、この中世ヨーロッパ風の異世界にトリップし。

 そんな恵理を救ってくれた恩人であるアレンを、そして彼が亡くなってからはその息子を支えようと、この年まで冒険者としてパーティーで頑張ってきたが――まさか、その息子であるグイドに『ババア』呼ばわりされるとは。


(そりゃあね? 子供の頃に来たとは言え、仕事で頑張れば認めて貰えるんじゃないかとか、好きな人とじゃなきゃ結婚しないって、基本の考え方が日本人なのは認めるけど)


 一方、こちらの異世界は十八歳で成人と見なされ、結婚も出来るので適齢期は二十歳だ。そして、男女共に結婚しないと一人前と認められない。だから恋愛結婚もあるが、親が決める見合い結婚も多い。


(幸か不幸か、私には面倒見てくれるような親もいないし、このパーティーって『居場所』があったから)


 恩人である男と自分から始まったパーティーは、今では最強と言われてメンバーも増えている。

 けれど二年前、このパーティーのリーダーだったアレンが子供を庇って馬車に轢かれて命を落とし。

 息子であるグイドが引き継いだものの、冒険者達を酷使する一方で自分に賄賂や接待を持ちかけてくる若い冒険者や商人を贔屓するようになった。

 そんなやり方を見ていられず、口を挟みもしたのだが――それこそ口うるさい、目障りなババアだと思われたのだろう。


(もう、いいよね?)


 声に出さずに、亡き恩人であり親友であるアレン――目の前の糞ガキの父親にそう話しかけると、彼女は更に続こうとしていたグイドの話を遮って言った。


「お前、見た目だけはいいんだから大人しく、俺の」

「解ったわ。今まで、お世話になりました」

「へっ?」


 そして間の抜けた声を出すグイドに構わず、恵理は冒険者の証であるギルドカードをカウンターに置くと、事の成り行きに付いていけず唖然とした一同を残してギルドを後にした。

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