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お喋りねこ  作者: 鉢猫
7/7

第7話

前回の投稿から少し時間が空いてしまいました。継続していくのって本当に大変ですね。

今回は猫の帝国の出現から3日後のお話です。

〈第7話〉


 あの放送から三日が過ぎた。今日が約束の期日だがいまだ帝国側の反応は見られない。それに対しこの国もこれといった動きはなく、国民の不安を煽らないように政府は『あれはデマであり何も心配する必要はない』と発表しただけだった。

 だが国民がそれだけで納得するわけがない。

あの日、帝国側のメッセージをいったいどれだけの人間が見ていたことか。未だ真実か嘘であるかは測りかねている者だって多いはずである。僕もまだ本当なのかと疑ってはいるものの、飼い猫のコジロウが喋るため信じるしかない。

 そんな我が家の喋る猫はいつも通りならテレビを占拠し箸を器用に使い食事を摂っているはずなのだが、あいにく今日は平日ではないため時代劇の放送はされていなかった。

 そのおかげでいつもは触れることすら許されないリモコンを土日の朝だけは僕が自由にチャンネルを変えることができる。これが当たり前だった時代がなんだか遠い昔のように感じる。

 時代劇が見られない彼はしょぼくれているかに思われたがどうやらそうでもないらしい。真剣な眼差しで何か考え事をしている顔に見えた。猫の表情は読み取りにくいのであくまでもそんな気がするだけだが。

 彼が考えていることに僕は思い当たる節があったがそっとしておくことにした。今は一人で考えたいかもしれない。

 それになぜか僕でも触れてはいけない気がしたからだ。

 彼のことも気になるがそれよりもニュースが見たかった。そろそろマタタビ放送局のニュース番組が放送される時間だ。僕はリモコンを手に取るとチャンネルを2に変える。ちょうど番組が始まるころだった。

 

「おはようございます。時刻は9時を回りました。マタタビ放送局では本日も様々なニュースをお届けしたいと思います」


 女性アナウンサーの挨拶も終わり番組を進行していく。それよりも気になることがあった。

 アナウンサーの隣に見慣れぬ猫が座っている。もしかして最近になって番組の公式マスコットにでも選ばれたのだろうか。テロップなども表示されることもなければ、テレビに映っている人間は誰も驚くことなく、落ち着いて対応していた。

 僕だけが座っている猫に気になっていると、 


「本日、マタタビ放送局では素敵なゲストをお迎えしています。いま世間で話題になっている人の言葉を話す猫さんです!」

「どどど、どうぞよろしくおねがいしましゅにゃ」


 なんと目の前に映っている猫が喋ったではないか。

 僕はその光景に目を疑ったが同時に確信が持てた。やはり喋る猫は他にも存在する。これまで見つかっていなかっただけで、存在を確認されていないUMAのようである。


「猫さんは緊張しているようですね」

「す、すみません。こういうのに慣れてなくて」

「大丈夫ですよ。誰だって緊張はしますから、これから慣れていきましょう」

「にゃはは、そうですかね。でもまさか自分がテレビに出るなんて思いませんでした」

「私も喋る猫さんと話すことになるなんて夢にも思いませんでしたよ」

「そうでしょうね」

「ところで、猫さんはいつから言葉を話せるようになったんですか?」

「あんまりよく覚えてないのですが、匂いがしたんです」

「匂い、ですか?」

「はい。それは甘い匂いだったんですが、嗅いでいるうちにいつの間にか眠ってしまって」

「そして目覚めると言葉を話せるようになったと」

「そんなところですにゃ」

「なんとも不思議な話ですね。では、他にも質問して、」


 なにかに気がついたのかアナウンサーは言葉を止める。カメラがアナウンサーから別のものに切り替える。彼女が見ていたのはスーツ柄の彼らだった。


「大変です、白黒の強面の猫たちがスタジオに現れました!そして猫さんを連れ去って行こうとしています」

「や、やめてくれ!私はなにも話していないにゃあ!!」

「いったいあの猫たちは何者なのでしょうか。この後番組の内容を1部変更し、攫われた猫さんを追いたいと思います!」


 番組は一度中断されたが、数分後攫われた猫を追跡する中継が始まりリアルタイムで映像が流される。

 あの猫たちが現れたということは帝国側にとってなにか不都合な情報が漏れることを恐れての行動だとすれば納得できる。しかし、特定するにしても早すぎる。まるで最初から見られていたのではないかとさえ思うほどに。


「ねぇコジロー。あの猫はどこに連れていかれるのかな?」

「・・・」

「聞いてる?」


 聞いても何も答えないので不審に思い振り向くと、そこには空っぽになったお茶碗と箸だけが残されていた。


「なんだよ、出かけるなら一言ぐらいあってもいいじゃないか。それに自分が使ったものくらい台所に持ってってよね」


 不満を零しながらも仕方なく彼の分も片付ける。

 猫は基本的に水に触れることを嫌う。だから洗い物は僕がやっている。洗い物はだけじゃない。掃除洗濯もだ。

 前に掃除くらいしてくれないかと頼んだことがあったが、『拙者猫でござる故、家事をする必要はない』と一蹴されて終わった。正論過ぎて返す言葉もない。確かにペットにやってくれと言うこっちがおかしいのだが、はいそうですかとすぐには納得はできなかった。

 僕は調子に乗って『掃除ができないのは、掃除機の音が恐いからじゃないの?』と言い放った。その後の彼は本当に恐かった。両足の爪を出し牙を剥き出しでこちらを無言で睨みつけてきた。蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けず、とにかくひたすら謝罪し許してもらった。二度と言わないように胸に固く誓って言葉には気をつけている。

 そういえばいつの間にかあの猫を追跡する放送も中断されていた。見失ってしまったのだろうか。番組が再開され猫の帝国については触れられることはなかった。

今日は帝国側が提示したタイムリミットだったが、電波ジャックでの声明もなくいつも通りの1日が終わった。


ずっと主人公目線だけで書くのも味気ないので、次回はコジロウや征次郎、小春たちのパートも書く予定です。

それではまた次回のお話で

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