ゴブリンの醜悪さ
財宝回収してからはや一時間。案外広いゴブリンの巣を探検中。左から2番目の道の先にはゴブリンの厨房があった。
牛や豚らしき動物や小動物系の魔物、人間が皮を剥かれて干されていた。鍋の中にも色々な肉が詰まっていた。
慣れなきゃ吐くなありゃ。素人にはキツいわ。とりあえずイラッときたので厨房のゴブリンは殲滅。首を斬って苦しんで生を全うしてもらった。
「あぁ気分悪いわ。あんなの久しぶりに見たな」
前世で英雄扱いをされ始めてからは強大な敵しか相手にすることがなかった。余程の快楽殺人者や人形師何かを相手にしない限りはあんな惨状は目にすることは滅多にない。ドラゴンなんかは人を丸のみにするから見ることはない。
「戦争に行ってもあそこまでは滅多にないな」
改めて雑食小鬼の醜悪さを再確認させられた。
◇
今度は右端の通路を歩いている。右端の通路は比較的ゴブリンが歩いていることが多く、出会い頭に首を跳ねて黙らせている。
奥からは複数の「ウッウッ」と言うゴブリンの声と女性の悲鳴が聞こえてくる。
あまり想像はしたくないが恐らくゴブリンの繁殖部屋が奥にあるのだろう。
前の世界と一緒ならゴブリンは何とでも繁殖行為が可能で孕ませられる。人間、亜人等ある程度の知能を持った者であれば標的にするため、魔物とゴブリンの混合種なんてのもゴブリンの中には珍しくない。
そのため、前の世界では速やかに殺処理する。
ほっておくとゴブリンは町や村を食い尽くす。
数の暴力は絶大。1体の力は弱くても数が集まれば強者も食らう。力を持った冒険者なんかと交配なんかしたら大変だ。
ゴブリンとしての種は前に出てくるが、強さは交配相手に依存する傾向がある。巣なんかは一刻も早く殲滅するにこしたことはない。
まずは殲滅するのにはゴブリンの赤子を潰す。繁殖部屋なんかは速やかに潰す。
気配を消して歩く速度を上げる。ゴブリンを倒す毎に身体能力が上がって動きのキレが良くなってる感じがする。
上がる身体能力に動きを微調整しながら速度を上げる。この世界に来て直ぐの頃に比べたら雲泥の差だ。直ぐに通路の奥にたどり着く。部屋と左に曲がる通路に別れている。部屋の前にまた見張りが立っているが瞬殺する。
鍵らしきものも無いので部屋に侵入する。
目の前には醜悪な光景が広がる。多種多様な種族の女や魔物の雌がゴブリンになぶられ、弄ばれている。
奥には使い捨てた女や雌の死骸。
牢屋にはお腹の大きな女達。
予想はしてたが、やはりこの有り様か・・・。残念だが処分しかないな。
ゴブリンの赤子はある一定の期間母体から栄養を摂取する。摂取量は命を食らい尽くすほどだ。そして最後に腹を破って産まれ、母体を最初の餌にする。
ゴブリンの赤子を孕んでしまうと最後、摘出は基本的に不可能。
専門の毒を使うことで腹の赤子を殺し、摘出後に解毒するって方法もあるが、かなりの荒療治で治療の成功率はかなり高く見積もって4割ってとこだ。どうしても毒に母体が耐えられない事が多く、耐えても摘出時に事切れる事も少なくない。
何もせずに摘出使用とすると自分で母体を食らい、赤子が出てくる。
だからこそ生物にとっての害悪であるゴブリンは直ぐに殺処理されるが、1体でも逃げればそこからまた巣を作り出す。半年もあればかなりの数のゴブリンが誕生する。無駄な生命力の高さを見せつけられる。
繁殖部屋の中には10体のゴブリン。みな体躯は大きいがなにぶん行為中のため武器も持っていないし、興奮状態なのでこちらに気づいてもいない。
直ぐにゴブリンの背後に周り、斬り殺していく。最後の1体がようやく俺に気づいたが直ぐ様心臓を一突きし、引き抜いた勢いで身体を回転させて首を跳ねる。無駄に生命力の高いゴブリンの倒しかたは首を跳ねる。これが一番だ。
「た、助けて、殺して」
犯されていた女達が助けを求めてくる。何人も「殺して」と話してくる。かなりいたぶられ弄ばれたのか青アザだらけで、身体中がゴブリンの精液だらけだ。
「あんた達ならまだやり直せる。考え直さないか?」
冷静に問いかける。あんなのに犯されれば自尊心なんかはズタズタにされる。ゴブリンは逸物だけは立派。もう彼女達のは壊されているだろう。もし生活に戻れても普通の男ではもう満足もできない身体にされている。
ゴブリンは孕ませる前に徹底的に女の身体を楽しむ。そして壊れた者から孕ませる。
彼女達にはまだ意志が残っている。まだ連れてこられたばかりなのだろう。だが、彼女達が望むなら俺は彼女達の命を容赦なく断つ。
「少しそこで考えててくれ。君達の前に彼女達を救うのが先だ」
牢屋にいる孕まされた女性達の法へと行く。牢の鍵を開け、中に入り5人の女性を手にかける。
胸くそ悪い。心の中に黒い靄でもかかったみたいだ。ドス黒い感情が沸いてくる。
牢を出て彼女達に向き直る。彼女達の顔は決まった顔をしている。2人ほど顔を青ざめせている。
8人か。せめて楽に逝かせよう。
彼女達と再度話し合いをするが覚悟は変わらず。8人は死を選んだ。どちらにせよ元の生活にはもう戻れない。死は彼女達にとって最も幸せな選択なのかもしれない。
残りの2人は生きることを選んだ。辛い道を選んだ。死より何倍も辛い道だ。彼女達の覚悟に敬意を表する。
彼女達に聞いたところ、どうやら奥に進むと捕まった女性達がまだいるようだ。真ん中の道はホールに続いているとのこと。今日はゴブリンキングが他の巣から来ている様で、宴の真っ最中。
何人か女性は宴に連れてかれた様だ。
転生そうそう辛い役目が多すぎるぞ女神。少し怨みを転生させた女神に向ける。ニコッと笑ってピースする女神が思い浮かぶ。
あぁ1発殴りたいな。
憂さ晴らしはゴブリンと主役のゴブリンキングでしよう。派手に殺ってやる。
◇
彼女達の案内で他の捕らわれている者達を救いに来た。
道中ゴブリンと遭遇するが憂さ晴らしにぶった斬る。ゴブリン愛用の錆びた剣や槍は彼女達に持たせた。武器も持たせずにゴブリンの巣を歩くのは危険だしな。
「マート!ミーサ!」
捕らわれている部屋を開ける。一緒に助けた彼女達が目に入ったのか中に居た女性が声を掛けてくる。
助けた女性達は中に居た女性達と抱き締めあっている。さっき死を選んだ者達の事を聞かれ、事情をマートとミーサが話している。
中には軽蔑の目を向けてくる者もいる。
だが、大半の女性達が理解してくれてはいるようだ。
「どうして!どうして助けなかったの!!」
どうしても理解出来ない者もいる。激昂を上げて迫ってくる。
「俺は選択肢を与えただけだ。ゴブリンに弄ばれればどうなるか女の君が1番わかっているんじゃないか?あれで生きろと無責任に世界に放り出す方がよほど残酷だと思わないか?マートとミーサはまだゴブリンに弄ばれた時間が短い。だが、他の彼女達は既に壊される一歩手前だった。それでも生きろと言えるのか?」
冷静に突き放す。理解はしているが心がついていかないのだろう。
「でも、でも」
泣きながら感情の矛先を探している。
「酷なようだが、まず自分達のこれからを考えよう。まだゴブリンから助かったとは言えないんだ。パーティー真っ最中ならかなりの数のゴブリンがここにいるはずだ。見つかれば俺でも全員を助けれるかわからない。まずは武器を取れ、身を守れ、助かってから怒りを俺にぶつけろ」
「ううん。貴方は悪くないってわかってる。このままじゃ死を待つだけだってわかってた・・・でも・・」
「簡単に割りきれることじゃない。ゆっくり整理をつけてくれ。まずは武器を持ってみんなで逃げてくれ」
道中拾った武器を彼女達に渡す。
「貴方はどうするの?」
「俺はこの巣のゴブリンの駆除をしてくるよ」
「それじゃぁ貴方が・・・」
「犠牲になるつもりはない。ただの憂さ晴らしに潰しに行くだけだ。危なくなっなら逃げるしな。それよりも君達の方が大変だ。護衛も居ないんだから慎重に行動してくれよ?」
「わかったわ」
他の女性達も武器をとり一様に覚悟の決まった顔をしている。覚悟の決まった女性は強い。男なんかよりも何倍もな。
しっかり逃げ切るだろう。
「道中のゴブリンは斬り伏せた。帰り道も一本道だ。迷わずに急いでいけ」
「またね」
「あぁ」
彼女達と別れる。彼女達ならしっかり逃げるだろう。さぁ今度はこっちの番だぞゴブリン。強い足取りでパーティー会場へ向かって歩いていく。