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カインはダンジョンに迷い混む

あのモングランドランの一撃は予想外だった。


始め物理的な攻撃をしてきたため、回避しやすかった。


だが、一つの咆哮で戦局が変わった。


その咆哮は、絶対的なレベル差のなせる強者の咆哮。モグラの癖にと思ったが、あれには今の俺では逆らえなかった。そして咆哮による一瞬の身体の硬直。これに全員が捕まった。


その一瞬の隙をモングランドランは見逃さない。


大口を開け、俺とユフィリア殿下は丸飲みに、ゴルドリンとマラウは俺達を丸飲みにした時の衝撃の余波で吹っ飛ばされた。



「いたたたた。クソ丸飲みにしやがって。てかここどこだよ」


気付けば周りは石壁の道の真ん中で寝ていた。隣にはユフィリア殿下。幸いだったのは丸飲みのお陰で咀嚼されず五体満足なことだ。こればかりは感謝だ。

ユフィリア殿下も見たところ怪我は無い。ショックで気を失っているだけだろう。


「ユフィリア殿下、ユフィリア殿下」


肩を揺すって声を掛ける。


「うっ」


顔をしかめながらも直ぐに身体を起こす。


「私は確かモングランドランに・・・」


顔が青くなっていく。きっと食べられた瞬間を思い出しているのだろう。


「ユフィリア殿下。大丈夫です。私たちは生きています」


「は、はい・・・」


生きている。理解は出来ても中々あのショック映像は忘れられないだろう。なんせ俺ですら死を感じた。自分を保って発狂していないだけ彼女は強い。


それにしてもここはどこだ。見たところ胃の中じゃなさそうだが。ユフィリア殿下から離れて壁を見ようと立ち上がろうとするとユフィリア殿下に服を掴まれているのに気付く。


「大丈夫ですよ。ユフィリア殿下」


「すみません。もう少しだけこうさせてください」


「わかりました」


服を掴んでいたユフィリア殿下の手を取り、両手で包み込む。少しずつ安心してきたのか表情も回復してきている。


さてこれからどうするか。見た限りここはどこかのダンジョンに飛ばされたか、どこかの異空間の中。道は一本道。右か左どちらかに進めるだけ。どちらにせよ移動しなきゃ始まらないか。


生憎食料は切り詰めれば1ヶ月は持つだろうから。1ヶ月以内に何か発見できれば生きて帰れる。ダンジョン攻略の準備をしていて助かった。


「すみません。ありがとうございます」


「いえ、ユフィリア殿下、ここには見覚えはありますか?」


「すみません。ですが、どこかのダンジョンではないでしょうか。あの光水晶はダンジョン特有の物ですから」


ユフィリア殿下が天上を指差す。そこには大小様々な水晶が埋め込まれており、辺りを照らすほどの明かりを放っている。


「ダンジョンなら進めばどこかに出ますね」


ユフィリア殿下と二人で歩き始める。一時間、二時間と時間が経つが別れ道一つ見当たらず、魔物も出現しない。

本当にダンジョンなのかと疑い始めた時、周りの壁が揺れ始める。


「これは『魔物狂宴(モンスターパーティー)』です!カインさん逃げましょう!」


魔物狂宴(モンスターパーティー)』はダンジョン内での魔物の連続大量出現を指す。

これが『魔物狂宴(モンスターパーティー)』か。見てたい気もするが、まずは距離をとるか。だが、これでここがどこかのダンジョンだって確定したな。


壁、床、天上、全てから次々に魔物が産まれてくる。ざっと見ただけで既に50近い魔物だ。


幸運なことは出現する魔物はみた下位の魔物。ステータスに任せて無双できる。振り返ると魔物がこっちに行進を開始している。

これじゃらちがあかない。


「殿下、これでは逃げ切れません。敵は下位の魔物です。掃討しましょう」


「わかりました!」


逃げることを止め、振り向いた俺とユフィリア殿下は武器を構える。

目の前には既に数えるのも億劫になるほどの魔物だが、全て下位の魔物。ゴブリン、ウルフ、バッド、アリアント等々多種多様な魔物のオンパレード。しかもまだ増えてるときた。


魔物は剣技と魔法を駆使し順調に駆逐していく。ユフィリア殿下も冷静に対処している。下位の魔物だけあって手こずる相手はいない。多種多様な攻撃をしてくるが、一番厄介なのは数だ。

黒乃紅雲(クロノベニグモ)』は下位の魔物に対して豆腐を斬るように刃が通り、一瞬で刻む。なので魔物は厄介ではないが、刻んだ所から魔物が湧き出てくる。


実際これは精神的にくるものがある。どこのダンジョンかもわからず、出口も進んでいるのかもわからない不安は腕を鈍らせる。

さらにダンジョンの魔物は倒すと光の粒子に変わり、アイテムをドロップする。それは魔石であったり、魔物の部位素材であったりする。魔物の死体が残るよりましだが、ドロップアイテムは小さいので足をすくわれる。これもまた気をすり減らされる要因になる。


ユフィリア殿下も今はまだ良い。だが、それもいつまで続くか。

早めに何かを見つけた方が良いな。


「ユフィリア!俺の後ろに!」


ユフィリア殿下が下がったのを確認して魔法を発動する。


「【雷網炎波(エル・ラバーム)】」


炎の波に雷を這わせ、さらに広範囲に広がる雷の波に今度は炎が追い付き敵を雷と炎の波状攻撃が襲う。

一瞬で魔法を発動する。前世でも世話になってきた魔法だ。想像すら必要ない。雷と炎の波は魔物を飲み込み殲滅する。3割は削ったか。


「【風流華槍(フラウアスター)】」


ユフィリア殿下も続けて魔法を放つ。風の槍を10本創り出し、風の流れに乗せて的確に魔物を貫いていく。10体以上の魔物を貫き光の粒子に変えていく。


中々の威力だ。創造スピードも中々だった。剣技も申し分ない。

かなりの修練を積んだのだろう。


「もう少しです殿下」


「はい!一気にいきましょう!」


数分後、魔法を使ってある程度減った魔物は二人にとって驚異にならず、直ぐに殲滅し終える。ユフィリア殿下も息も切らさず倒しきった。数が数なのでドロップアイテム回収はできる範囲でお互いに回収した。


予想外だったのはユフィリア殿下は精神的にも安定して戦い終えた所だろう。姫と言う国の上の立場の者は、政治では冷静で 非常な手が打てても、戦場では脆い部分があるものだがユフィリア殿下は魔物が下位とは言え戦い抜いた。これは大きなアドバンテージになる。


だが、急速も必要だろう。また同じように囲まれる可能性もあるし、下位の魔物だけとは限らない。用心に用心を重ねよう。

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