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この世とあの世の生活

この世とあの世の生活〜第12話七夕ver〜

作者: 福紙

今日は七夕。織姫と彦星が1年1度会える日である。天の川が満天の星空にかかる…が。


「見えぬな」


「見えませんね」


「街の明かりで見えませんね」


都会の明かりで夜空が見えないのだ。3人は空を見上げる。


「森林公園に行く者がいるが…街の明かりで意味がないのでは?」


「雰囲気を楽しむのでしょう…」


「地獄じゃ星空なんてないですしね。どちらかと言うと星…岩石が降ってくるし」


「ならば、間近で見るとするか」


と閻魔大王は白刃(しらは)、こん助を奥の部屋へ連れて行った。

暗い道を進み朱色の扉の前に来た。そしてそこを開くと、そこには星の道ができており、天の川がキラキラと輝いて流れいる。


「やっぱりここから見るのが最高ですね…ああ、天女とか獄卒とか神々まで…」


こん助は周辺を見渡す。と、聞き慣れた声がした。


「閻魔様!こん助!白刃!」


振り向くと、半人半龍の杏慈(あんじ)が手にキラキラと星の雫を持っていた。


「あ、杏慈?!何故お前がここにい…?!」


白刃はハッと閻魔大王とこん助を見ると、2人は一斉にそっぽを向いた。


「っあ!?」


「白刃!あっちにすごく綺麗な星の花があるの!行こう!」


「ちょっと待て!杏慈!」


と白刃は杏慈に手を掴まれて引っ張られていった。


「短冊に書いたのが叶ったな」


「さすが閻魔様です」


と閻魔大王とこん助は笑った。天の川周辺は織姫と彦星どころではなく、祭りと化していた。


「現世ではロマンチックな話になってますけど、実際はお祭りですよね?織姫さんと彦星さん主催の」


「まぁ、あの世の者たちのな。極楽にいる者は近いから結構来ておるな…」


「はいはいー!ちびっ子たちー!お祭りですよー」


とまた聞き慣れた声がした。極楽の主人、阿弥陀如来(あみだにょらい)だ。地獄の河原の子供の亡者たちを連れて来ている。


「阿弥陀ぁぁー!!勝手に何をしておるぅぅ!!」


「やあ、閻魔。地獄の河原の子供の亡者ぐらいいいじゃないか。はい!お兄さんについてくるんだよー」


と阿弥陀如来が子供の亡者を引率していた。


「いいんですか…閻魔様?」


「ぬ、ぬぅ…阿弥陀はあの場所は行き来できるからな…仕方ぬ。目をつぶってやろう」


と閻魔大王とこん助はキラキラした雲の上に腰をかけた。


「ふん。今頃現世では見えない星空を見上げてるのであろう」


「高みの見物ですね。あそこで彦星さんが酔いつぶれてますよ」


「あやつはすぐ酔うからな」


「現世の話では1年に1度しか、とか本で読みましたけど…実際は一緒に住ん…」


「こん助よ。話が壊れるからその辺にしておけ」


「いやはや、危ない危ない。今度、プラネタリウムに行きましょう」


「ぷらねたりうむ?何だ、それは」


「あぁ、でも目の前にホンモノがあるから、面白くないかも…」


「ところで、白刃の奴はどうなったのだろうか?」


「見に行きましょう!」


と閻魔大王とこん助はクスクス笑いながら、白刃と杏慈の元に行った。

見上げれば遠くの星々が敷きつめられるように輝き、足元には輝く星の雲、目の前には天の川の星々が流れている。そこに白刃と杏慈が座って見ていた。


「地獄の河原と大違いだねー。地獄は何か煮えたぎってるし、赤いし、場所変わると臭いし」


「…杏慈、せっかく綺麗なところなのだから、地獄の事は忘れろ…」


「あれー?生粋の堅物獄卒君がそんな事言うのかー?現世の影響?」


と杏慈がからかうと、白刃は天の川の星を1つ取り、彼女の黒髪に挿した。


「…いつも赤と黒しかない地獄にいるんだ。今日ぐらい、少しは綺麗な色に浸ったらどうだ?彼岸花も似合うが…星も似合うぞ」


と白刃はプイッとそっぽを向いた。杏慈は照れくさそうに、


「そ、そうかな?へへっ」


と少し頰を赤くして笑った。


「私も、人の姿に化けれたらなぁ…白刃と一緒に現世行けたかな?」


「え?」


と白刃は杏慈を見た。頭部にはツノが生え、目の横には黒い鱗が少し生え、手は完全に龍のように鋭い爪と鱗に覆われ、下半身は蛇のような姿の杏慈は現世に行けば化け物である。


「ただ、私が人に化けるのが下手なだけなんだけどねぇ〜。短冊に書いたけど、これは自分の努力しかないよねー」


と少し寂しげであった。白刃は妖狐なので化けるのは18(おはこ)。しかし相手を化けさせる事はできない。できるとすれば、閻魔大王…。


「そ、そのままで現世に来てもいいと思うぞ!但し外に出られんがな!」


「え?」


「げ、現世の生活では女手がた、たりなくてな…!ある程度認めれれば、閻魔様が人間に化けさせてくれるかもしれんぞ!そ、それに…!」


「それに…?」


「お、お前が、い、いると、あ、あ…あ…!」


安心する、と言う言葉が出ない。


「ここの彦星は情けぬのぅ〜」


「積極性に欠けますね」


「?!」


と背後からあの声。振り向くと雲の椅子に座った閻魔大王とこん助がニヤニヤとしていた。


「閻魔様!こん助?!いつの間に?!」


「貴様が星を杏慈の髪に挿した辺りから」


「歯が浮きそうな事をサラッと言いますね。僕の鉄の牙が錆びそうです」


「〜〜〜っ!!!」


と白刃は頭を抱えて悶える。閻魔大王は悶える白刃を横目に杏慈のところへやって来た。


「杏慈よ。現世の長屋だが、結構広いのでの、1人増えても構わんぞ。だが、貴様には地獄の仕事の方が多い。暇を見つけて来るがよい」


「ホントですかー?!閻魔様ー!!やったー!!」


と杏慈は喜ぶと、閻魔大王の周りをグルリと周り巻きついた。


「ぐはぁっ?!杏慈…!!巻きつ…!」


「白刃!遊びに行くからね!!」


と杏慈は白刃の背中をバシバシ叩き、嬉しさのあまり閻魔大王を縛り上げる。


「ぐおぉぉお!!鱗!刺さる…!!杏慈…!!苦し…い!!」


「わぁあー!!僕の手にも鱗が刺さったー!!」


今年の七夕は一際賑やかで楽しく過ごせた閻魔大王一行であった。

今日は夜空を見よう!晴れるといいなー。

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