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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ラスト∞レスト

生きて生きて生き抜いて、ゆっくり休んでもういっかい。

▲▽▲▽▲▽▲▽



生きて生きて生き抜いて



▲▽▲▽▲▽▲▽



 化学繊維特有の匂いと汗の匂い。フルフェイスマスクにこもったそれらが気にならなくなってしまうほど、彼は焦っていた。できることなら今すぐこのマスクをひっぺがして新鮮な空気に顔を晒したいところではある。が、それは不可能であった。


 視界の端のモニターに赤い警告が表示される。ひっきりなしに響くアラート音。そして背後から迫りくるそれら。無機質な地面を蹴り、彼は左腕からワイヤーアンカーを射出する。爆破された浮遊貨物艇が吐き出す有毒ガスを切り裂いて、そいつは壁にしっかりと刺さった。


 きゅるる、と間抜けな音を立ててワイヤーが巻き上げられていく。左腕が引っ張られるのに身を任せ、彼は宙へと飛び立った。ほんの少しの足止めとばかりに、連中の武器プラントからかっぱらってきた安物の振動分解弾を後ろに放り投げる。


 おおん、とあたり一帯の空気が揺さぶられた。ほんのわずかな時間だけ解放される重力。化学汚染されきった分厚い雲──これでも平均よりかは遥かに綺麗なのだが──に隙間ができて、鉄と油とスパークで化粧された月がちらりと顔を見せる。


 ほんの十数年前までは、月は白く輝いていた。が、メカニカルな輝きを放つ月もそれはそれで悪くないと、彼は一瞬場違いなことを考える。


 ぴす、ぴすと隣から奇妙な音。同じように移動していた仲間が撃ち抜かれた。ゾウに踏まれてもびくともしないはずの特殊有機繊維複合強化兵装を押し上げ、右胸と左足がタチの悪い吹き出物のように膨れ上がっていく。


 もう、ダメだ。手遅れだ。


 すと、と彼は膝を曲げて着地した。仲間だったはずの肉の塊がべしゃりと、もはや何の役にも立たない建造物の間に堕ちる。それとほとんど同時に撃たれた胸と足がはじけ飛び、追ってきた連中を吹っ飛ばす。尤も、大半はその無機質な表面を血と腸で汚しただけではあったのだが。


「……」


 彼は振り返りもせずに走る。尋常ではない爆発音が後ろから聞こえてきた。どうやら心臓に埋め込まれた爆弾のほかに、あの仲間はなにかしらの爆発物、あるいはそれに類するものを持っていたらしい。


 これで少しは時間が出来る。


 そう、あくまで時間が出来るだけ。戦闘能力のある──対抗手段を持つ自分であっても、連中を殲滅させられないことなど、彼ははっきりとわかっている。だからこそ、華々しく散るよりもむしろ──


「よーっす。おにーさんが来たぞ! もう怖い事なんてなにもないからな!」


 駆け込んだシェルター。児童施設が近くにあったからか、逃げ遅れたであろう子供や保育士なんかでいっぱいだ。みんな服はボロボロで、全身が油や煤で汚れている。まだまだ泣き叫ぶ余裕があるところを見ると、籠城してからおおよそ三日と言ったところだろう。


 彼はフルフェイスマスクの下で精いっぱいの笑顔をしてみせた。突如現れた特殊兵装の戦闘員に子供たちは一瞬驚くも、徐々に明るい顔になっていく。先程までの不安な表情はどこへやら、キラキラした顔でその憧れの武器や防具をぺたぺたと触りだした。


 周りにいるほんのわずかな大人たちは、彼がここに来た意味を正確に理解し、そして悲しく笑っていた。


「おいおい、そんなに引っ張るなってぇの」


 体に引っ付く子供たちをおろし、ほんの少しの、最後の希望を込めて彼はくるりと辺りを見回す。運がいいのか悪いのか、この地区の担当には彼女がいたはずだ。そして、彼女であるならば子供たちを見捨てるような真似はしない。つまり、ここにいる可能性が非常に強いということである。


「やっぱり、三島くん?」


「おうよ……出来れば下の名前を呼びながら、抱き付いてくれると嬉しかったんだけど」


 いた。彼女がいた。顔も見えなければ声だってわからないはずなのに、彼女は確かに自分のことをわかってくれた。


「もう。バカな事言ってないでよ」


「とかなんとかいいつつ、きちんと抱きしめてくれるあたり優しいよな」


「……ばか。最後にちょっとサービスするだけなんだから」


「なら、最後まできちんとサービスに応えないといけませんねえ。もう、好き勝手しちゃっていいから」


 抱きしめる意味がないことくらい、子供たち以外はみんな知っている。もう彼は彼女の体の柔らかさなんて感じられないし、その温もりもわからない。彼のような特殊戦闘員であっても、埋め込まれているのは戦闘演算に影響を与えるレベルの衝撃を感知するセンサーと、爆発物や熱源を感知するセンサーしかないのだ。


 抱きしめられた程度の衝撃は戦闘に影響がないし、人の体温程度では兵装の中身に影響はない。故に、無駄に演算領域を使う必要はないと判断され、余分な高精度センサーは取り付けられなかったのである。


「……なにこれ、最悪。ゴツゴツしていてちょっと硬い……っていうかクサイ。抱きしめるもんじゃないね」


「なんか悪いなあ。最後に一目見ておきたくてさ」


「それはいいけど……子供たちもほら、すごくいい笑顔にな──っ!?」


 ぱぱぱぱぱ、と軽い音。入り口に一番近くにいた子供の頭がブクブクと膨れ上がり、そしてはじけ飛んだ。ぺしゃりと赤いものが油と混じってシェルターの床と天上にこびりつく。


 焼けついたゴムのような異臭。不完全燃焼を引き起こした煙の匂い。そして、撃ち抜かれた扉の先から、鼻が無くても感じ取れてしまう濃厚な死の香が漂っていた。


「──ッ!!」


 ぱぱぱぱ、と連中は撃ってきた。彼はとっさに彼女の前に立つ。後ろの彼女を護るように、そして、手が届く範囲にいる子供をかばうように。


 右足。左腕。脇腹も肩も、ついでに耳も。決して小さくはない背中の後ろ以外にいた人間は、すでにぼこぼこにふくれ、弾けて死に絶えた。


「う、ぉぉぉ……!!」


 もちろん、彼が被弾した個所もぶくぶくと膨れ上がっていく。内側から巨大な泡が沸騰してきたかのように、まさに目の前で左手がはじけ飛んだ。


 撃たれたその瞬間は痛くないのが、幸いと言えば幸いだろう。だが、体内から気化した油が盛り上がってくるのは尋常じゃなく痛い。痛みに悶絶している間にも、撃たれた場所がどんどん盛り上がり、膨れ上がり、そしてシャボン玉のようにはじけていく。


 痛みを取り去ってなおこれだけの刺激を感じるのだ。生身の人間がこれを喰らったら、その痛みだけでショック死してしまうことだろう。


 ただの自己満足のためだけに、彼はちらりと後ろを向く。守るべき彼女を護ることができているか、それを見るためだけに。


(……お!?)


 意識が半ば飛びかけているから気づかなかった。すでに彼の四肢──正確には両腕と右足──ははじけ飛び、かろうじて残った胴体と頭を彼女が後ろから抱っこしている形になっている。


 守りに来たのに何とも情けない。ぼんやりとそう思った。


「悪いけど、最後まで付き合ってもらうから」


「……エ、ン゛リョネ……ェnA」


 彼女は、彼の残ったそれを盾のようにぶんぶん振り回した。ぴすぴすぴす、ぼこぼこぼこ、べきべきべきとあまり聞きたくない音が彼の全身から立っている。顔面はもうぼこぼこで、胴体の方ももはや原型を留めていない。彼は自分の意識があるのが不思議なくらいだった。


「……がんばった、かなぁ」


 ぐしゃり、と彼の頭が地面に落ちた。辛うじて生きていた彼の頭部カメラは、彼女のはじけ飛んだ両足を確認する。地面に落ちて2.7秒後、沸騰したかのように膨れ上がり、弾け散るところまで記憶に焼き付けられてしまった。


「ふともも、のこってよかったね? 役得でしょ?」


「……A」


 彼女は彼の頭を膝の上に載せて抱きかかえた。この血なまぐさい凄惨な状況下にいるとは思えないほど穏やかな慈愛の表情を浮かべる。そして、愛おしそうにもはや意識だけしかない彼の頭を撫でた。


 連中は趣向を変えたらしい。あるいは単純に玉切れだったのか。四足歩行のそいつがぱかりと口を開ける。


(あ、やべ──)


 破滅の光がシェルター内に広がった。蒼とピンクのプラズマ──そう呼ぶのが正しいかどうかはわからない──に包まれて、ぼろぼろと彼と彼女とそれ以外の形が崩れていく。


 原子分解光が収まると、吐き気のする匂いもまた消え去っていた。連中はそれを無表情で見つめ、すぐに次の獲物を求めて夜の闇を切り裂いていく。


 連中が後ろを向いたその時には、化学汚染された異臭のする空気がその場を満たしていた。






▲▽▲▽▲▽▲▽






「……」


 三島は目覚めた。いや、気づいた、のほうが正しいかもしれない。ぼーっとしていたらいつの間にか家まで戻ってきていたとか、いつの間にか英語のテキストが次のページに進んでいたりだとか、ともかくそんな感じだ。


「おーっす、おつかれー」


「おつかれ!」


「うーぃ」


 もう慣れたものである。セーラー服姿でアンパンを齧りながら声をかけてきたクラスメイトに、三島もまた適当に挨拶をする。


「長かったような、短かったような。慣れないし慣れる。この気持ち、どう表現すればいいのかね?」


「独り言言ってるとハゲるよー?」


「うっせ! 俺がハゲたらお前らもハゲじゃねえか!」


 くだらない雑談。友との触れ合い。


 談話室、あるいはリラックスルームとでも呼べるところなのだろう。ふかふかで上等な大きなソファがゆったりと並べられており、その間には温かみを感じるオシャレでウッディな机がある。やっぱりふかふかな絨毯の上ではクラスメイトがお気に入りの大きなクッションを枕に寝そべっており、何人かの女子は毛布を肩にかけたり膝にかけたりしてくつろいでいた。


 ちら、と目を逸らせば、そこには暖かな灯を宿す暖炉が見える。ぱちぱちと穏やかに薪が爆ぜており、単純な物理量で測れない暖かさをこの空間に提供していた。


 窓の外では雪が静かに、されど深くしんしんと降っている。それが余計に、この空間を暖かなものにさせていた。


「あー……」


 ぐいっと三島は伸びをする。どれくらいぶりかは考えたくないが、カチコチになった体がゆっくりとほぐれていった。ついでに学ランを脱ぎ去ってシャツの第一ボタンを開け、ぼふん、と倒れこむようにソファに身を委ねる。


「あー……」


 平穏。安寧。大いなる安堵となつかしさ。安心や癒し、ともかくそれに類するありとあらゆる要素を詰め合わせ、形にしたのならこの空間ができるだろう。


「おー……」


 何も考えず、ただただ安心してリラックスできるこの感じを、言葉で表現するのは非常に難しい。言葉という枷がある限り、これを表現するのは不可能だ。あるいは、夢の中ならそれを体験することができるかもしれない。


 それはまた、この空間でくつろぐ高校生たち──全員三島のクラスメイトだ──を見れば、すぐにわかることだろう。徒に大げさでもなく、みんながみんな、ただただ自然体なのだから。


「おーっす、三島。おつかれさん」


「おっす。おつかれ、木野」


 三島と木野は意味なくハイタッチをした。理由なく二人で笑いあい、椅子に座って適当に繋げた机の上に肘をつく。学校の宿命か、机には誰かが書いた落書きがうっすらと残っており、さらにはもはやかすれて読めない相合傘が彫られていた。


 よくよく見れば、目の前にある黒板の日直の欄も相合傘に書き換えられている。窓から入ってくる夏の暑い日差しがうっとうしく、それでもカーテンで遮るのは惜しかったため、三島は制服のズボンをまくり、シャツのボタンをもう一つ外して腕まくりをした。


「やっぱ落ち着くな、ここは」


「そりゃそうだろ」


「毎回思ってたし、これからも思うけど、友達っていいよな」


「わかるぜ。ここだとすげえノスタルジックっていうか、感傷的っていうか、ポエミーになるよな。で、あとですんげえ恥ずかしくなるの」


「茶化すなよ」


「わかってるだろ? 知ってるだろ? 言葉にするのがいいんじゃねえか」


「それな」


 行儀悪くも木野は机の上に足を上げた。ろくに洗っていないのだろう、上履きからは結構アレなにおいがする。しかし、今の三島には──正確にいえばこの場にいる全員が──それすら楽しんでいた。


「今回どこまで行ったよ、木野」


「聞いちゃう? 聞かなくてもわかるだろ?」


「言葉にするのがいいんじゃねえか。さっきそう言ったろ?」


「そりゃそうだ! 俺もお前も、俺でお前だしな!」


 男子がまたバカやってるねー、とソファでゴロゴロしている女子がクスクスと笑う。短めのスカートの下からチラチラと白いものが見えていたが、もはや彼らはそれを気にするような間柄ではない。恥ずかしがったりからかったりしていたとしても、それはふざけているだけだとみんなが理解している。


「んで、実際どうよ?」


「連中が本土に襲撃してきて二番目の大規模衝突までだな。景気づけに初っ端に特攻してぶち殺しまくったんだけど、後ろからズドンよ」


「おお……今回結構早かったのな。お前いっつももっと遅くまで生き残ってね?」


「今回はハイになっちゃったっぽい」


 あっちぃなぁ、と木野はどこからか扇子を取り出した。彼が中学の修学旅行で買ったという、三島からしてみれば派手でちょっとセンスを疑うデザインの扇子だ。


「……」


「笑えるか、それ?」


「もっとセンスある言葉を選べよな」


「わかんないことにするってすばらしいよな、ホント」


「……」


 再び二人は意味も無く笑いあった。


「そういやさあ」


「ん?」


「柚ちゃんはどうしたよ?」


 言われて三島は辺りを見渡した。彼女がこの場にいないはずはない。いないのであれば、それはまだ認識していないか、あるいは見えていないだけである。無理やり知覚することも出来なくはないが、しかしそれは全てのクラスメイトが望まないことだ。


 もちろん、三島もわざわざそんなことをする理由が無い。何のためにこの空間にいるのか、彼らは定義上は存在しえない自我の様な、本能のようなものの中で理解しているからだ。


「うぇーい、おつかれー!」


「おーぅ。おつかれさん」


「噂をすれば、だな。おつかれ」


 ぽん、と柚が三島の肩を叩く。にっこにこと笑いながらセーラー服のスカーフを取り、その辺に放り投げた。


「どうした、ちょっと遅かったな?」


「なんとなく? たまには違うこともしてみたくない? こういう気分次第の行動ってなんかいいでしょ?」


「「それな」」


 意味も無く三人はハイタッチして笑いあった。柚と言う人間は、こうなった今でもノリが軽くて明るい子なのである。


「柚ちゃんよぉ、今回どこまで行ったよ?」


「あたし? 三次防衛戦の段階で非戦闘員で保育所にいたんだよね。で、シェルターに籠ってたんだけど連中に見つかってあぼん。あ、最後は三島くんと一緒だったよ」


「マジか。つーか三島、そういうことは早く言えよ」


「聞かれなかったんだからいいじゃねえか」


「今回も、三島くんはあたしと子供たち……女子供をかばって死んじゃったんだよね。ほぼ毎回特殊兵装の戦闘員なのに珍しくない?」


「そういう性分なんだよ。それに、惚れた女をかばって死ぬのってカッコいいだろ?」


「死ぬ前に一目会いたかっただけじゃねえか」


「それに、あたしが盾替わりにけっこうぶんぶん振り回したからねぇ……。いや、カッコよくはあったけどさ」


「あれ重くない? よく振り回せたな」


「沸騰弾喰らって四肢のほとんどがもげてたしね! それに特殊兵装の戦闘員って結構軽いんだよ」


「ちなみに、柚と子供たちかばって全身に沸騰弾をぶちこまれ、最後は原子分解光で文字通り二人とも跡形もなく消されました」


「おお……またなんとも……」


「ここまで丁寧に殺されたのって何回あるよ?」


「185632479回くらいかな?」


「喜べ、お前ら。あと5247862回後も同じように死ねるぞ」


「マジか。意外と短いな。ちなみに木野。お前、あと8742回後に今回移動中に俺の隣で撃ち殺された同期になるぜ」


「マジか。めちゃくちゃすぐじゃねえか。とりあえず全身爆弾化しとくべ」


「……二人とも、知ってるのに『マジか』って言葉を使うよね」


「んだよ、柚ちゃん。言葉にするのがいいんじゃねえか」


「そうだよ。わかんないことにするってのがすばらしいんだろ?」


「もう! 冷静に突っ込まないでよ! フリってわかるでしょ!? あたしもあんたたちもあたしであんたたちなのに!」


「「それな」」


 もはや何度目になるのかわからないが、三人は無駄にハイタッチしておかしそうに笑っていた。


「そういや俺、あんまり最後のほうまで見たことないんだけど、その辺どうなんの?」


「あ、あたしも結構早退すること多いよね。自称熟練の戦闘のプロの木野さん、最後のほうはどうなるんでしょうか?」


「お前らなぁ……。えーと、沸騰弾なんてもう時代遅れになって、ヒカリの巨人が出てくるぜ。見た瞬間ヤバいってなって歴戦の勇者がその場で自殺する」


「わーぉ」


「あと、破滅の光ってのが出てくるな。文字通り見たり照らされたりした瞬間アウト。だから正直情報がほとんどない」


「世紀末ですなぁ」


「終焉世界ですなぁ」


「ですなぁ」


 ずぞぞぞ、と三人は熱いお茶が入った湯呑を傾ける。直後に夏に熱いお茶はありえねえよ、と笑いあった。なにがおかしいのか、柚は三島の背中をパンパンと叩き、木野はそんな二人の様子をニヤニヤと笑ってみている。


 ありとあらゆる事実を無視してその光景だけを切り抜けば、非常に穏やかな会話だと言えるだろう。三人ともが自然体で、リラックスしている。


「話は変わるけどさ」


「どしたん?」


「俺いっつも思うんだよ。あの原子分解光を出す連中いるじゃん? 原子分解光で自分自身分解しちゃわねえの? 分解銃にしたって発射する瞬間に自分そのものが壊れちゃわない?」


「あ、それあたしも思ってた!」


「ああ、木野は真正面から殺されることほとんどないもんな。だいたい殺される前に殺しているし。柚は……確認する前に殺されてるか」


「あたし、ほとんど非戦闘員だもん。で、特殊兵のプロの三島さん、解説よろしくお願いします」


「解説も何も、ありゃ使い捨てだ。撃ったやつはその瞬間に消えてるよ」


「マジで? 俺、何発も撃ってくるやつに殺されたことあるんだけど」


「そっちは新型だな。理屈はいろいろ……例えば破壊と再生を瞬時に繰り返していたり、そもそも原子の定義から外れる物体で構成したり、いろんな工夫をすることでそれを可能にしているんだ。俺らがちょくちょくぶっ殺すのは雑魚だから、まあ量産品の使い捨てってわけだ。もちろん、後期になるほど使い捨ての数は減って高機能の連中が増えるんだけど」


 その話は終わりだ、とばかりに三島は伸びをする。ちょっとクッションが恋しくなったので取り寄せたら、目の前で柚がそれを奪ってしまった。


「おい」


「いーじゃん。あたしもこれ欲しかったの!」


 ふっかふかのクッションに顔を埋め、柚は挑発的にほほ笑んだ。机の下では素足で三島の足をゲシゲシと蹴っている。ひんやりと──と言うか濡れていることを三島は不思議に思ったが、ちゃぷちゃぷという音が聞こえることから、彼女の足の下に氷水の入ったたらいが置いてあるのだとあたりを付けた。


「俺も入れてくれよ」


「いーよ」


 冷たい。ひんやりとする。心地よい。ついでに、つるつるの彼女の素足がふれてちょっとドキドキする。からかうつもりなのか、柚は面白がって足を絡めてきたが、幸か不幸か、それに大した意味はない。


「あー……」


「やっぱこれだねぇ……」


「発言が年寄りのそれだな」


 すぱん、といい音が響く。柚が木野の頭をはたいたのだ。 


「お」


「あ」


「ん?」


 ふと、三人ともが──ある意味では全員が──それに気づく。いつのまにやら、談話室のほうに一人の女の子が増えていた。気弱そうな顔をした三つ編みの小柄な女の子だ。偏見かもしれないが、部屋の隅でおどおどしながら読書でもしていそうなタイプに見える。


 穏やか、和やか、リラックスの三拍子をまさに体現しているクラスメイト達とは違い、彼女の眼は虚ろで、瞳が動くこともなく、放心したかのようにぺたんと座っていた。


「う……あ……」


「おーっす、おつかれ、なっちゃん!」


「なっちゃん、おつかれさま!」


「あ、ああ……!」


 まるでそれを気にした様子もなく、近くにいたクラスメイト──大半が女子だ──がなっちゃんに話しかける。なっちゃんの瞳にはじんわりと光が戻っていき、そして大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。


「うわああああああん! うわああああん!」


「おー、よーしよしよしよし。こわかったね、つらかったね。本当におつかれさま」


「もうなーんにも怖いことはないよー。おねーさんがぎゅーっ! って抱きしめちゃうよ?」


「うわああああん! うわあああああん!」


「おつかれ、なっちゃん……やっぱり甘えんぼモードなのね。うん、いいこ、いいこ。ずっとがんばってたんだね。えらいぞっ!」


 女子が穏やかな笑みを浮かべ、泣きじゃくるなっちゃんを抱きしめる。なっちゃんもまた、目を真っ赤にはらしながらこれでもかと言わんばかりに抱き付いていた。そこにさらに、抱き付いているみんなをまとめて抱きしめるかのように、別の女子が毛布を広げて全体を包む。


「あ、なっちゃんじゃん」


「行って来れば?」


「そーする。……おお、よしよし。おつかれー。なっちゃん甘えんぼモードはいっちゃったねー」


 すたたた、と柚がなっちゃんの元へと小走りで進み、慈愛以外の一切を感じさせないそれでぎゅっと抱きしめた。


「なんだ、タイミングが良いのか悪いのか。ま、たまにはこういうのもいいな」


「お、黒川。おつかれー」


「おつかれさん!」


「おう、二人もお疲れさま」


 ちょうどいいタイミングで黒川がやってきた。先程まで柚が座っていた椅子に腰かけ、気だるそうに額の汗をぬぐう。しかしその動作とは裏腹に、口元は緩く笑っており、その瞳には優しい光が宿っていた。


「あっちもいいが、やっぱりこの夏の教室も捨てがたいな」


「ああ、お前体育の後の女子の匂い好きだもんな」


「……本能だ、しょうがない」


「三島の奥様、聞きまして? あの黒川のぼくちゃんが素直に認めましたわよ!」


「子供が大きくなるのは早いものですねえ……! 木野の奥様、あたしってば今感動していますわ!」


「殴るぞ」


 物騒な言葉とは裏腹に、三人の顔はとても楽しそうだ。振り下ろされようとしていたはずの握り拳はいつのまにか開かれており、そのまま三人は意味も無くハイタッチを決め、そして心の底からおかしそうに笑いあった。


「やっぱりいいな、これは」


「確認するまでもねえよ」


「毎回やるけど飽きないぜ」


 黒川もまた、シャツのボタンを外す。器用に机に足を乗せ、椅子を後ろに傾けてギコギコとバランスを取り出した。何を隠そう、黒川はこうやってぶらぶらするのがとても好きなのである。


「なっちゃん、いっつも最初は引っ張られるよな」


「何回やっても、ずっとああだしな」


「なっちゃんはほとんど毎回指導者だったからな。体験する時間も俺たちより長いし、その内容も非常に濃い。最後まで見届けることだってかなりあるし、精神的ショックは大きいのだろう」


「まさかあの大人しいなっちゃんがあそこまで登りつめるとは思わなかったよなぁ……」


「図書委員長ならともかく、人類全体の最高指導者だもんなあ」


「あの十億演説を聞いたとき、本当に驚いたよ。あの力強さに心がビリビリと震えて、思わず跪いて忠誠を誓ってしまったし」


「「それな」」


 三人が三人とも、女子に抱きしめられて穏やかに笑っているなっちゃんを見る。その顔はとても幼げで、とても人の上に立てるような人物には思えない。感極まっていて気づいていないのか、ホットミルクを飲んだなっちゃんの顔には白いおひげが出来ていた。


「ところで、お前は今回どの辺までいった?」


「あー……。最後の決起集会の所だな。残存勢力をかき集め、なっちゃんが宿題の誓いを演説しているところで遠距離狙撃で暗殺された。沸騰弾で頭がぱーん、だ」


「おおう……お前やっぱりまた参謀役だったのかよ」


「あれ、あのとき沸騰弾なんて使われていたっけ?」


「知ってるだろ? 沸騰弾なんて旧式兵器を使ったからこそ、現行の防衛システムに感知されなかったんだ。……でもまあ、なっちゃんの盾になれたからよかったよ。あと、ブチギレなっちゃんを見ることもなかったし」


「「それな」」


 三人ともがぶるりと震えた。今暖炉の前で子犬のように頭を撫でられて喜んでいるなっちゃんは、実は怒るとすごく怖いのだ。


「……ま、わざとああして泣いている部分もあるんだろうが」


「それを言っちゃおしまいだろ?」


「わかんないことにするってのは大事だ。それで俺たちが俺たちでいられるのなら、なおさら。だいたい、俺たちの間でわからないことなんてないだろう?」


「……」


 三人は沈黙に包まれた。その沈黙の理由は、この快適な空間にいる人間にしかわからない。


「……そっか、そうだよな」


「ところで、お前なんで遅かったんだ?」


「隠そうとしても無駄なのはわかってるよな?」


「……ちっ。元より隠すつもりはない。俺とお前は、お前で俺なんだから。いちいち言わせるな、恥ずかしい」


 黒川がどん、とそれを机の上に置いた。学校から歩いて三分ほどの距離にある、某コンビニのビニール袋だ。もちろん、中にはお菓子や雑誌──高校生の憩いのアイテムがたくさん入っている。


「寄り道したせいで遅れたんだ」


「わざわざ買ってきたのかよ!?」


「実際に行動するのがいいんじゃないか」


「「それな」」


 がさがさがさ、と三島と木野はビニールを漁る。勝手知ったるなんとやら、あるいは友情のそれがなせる技か、黒川も特に何かを言うことはなく、一緒になって袋を漁りだした。


「おっ、ポテチ見っけ」


「おいバカやめろ、それコンソメじゃないか。うすしおこそがジャスティスだろ?」


「俺が買ったんだ。コンソメでやれ」


「いえっさあ!」


 三島は木野の制止を振り切って袋を開ける。もちろん、みんなで食べられるようにパーティー開けだ。


「あれ、黒川。お前わざわざ本を開いて読むのか?」


「実物を手に取るのがいいんじゃないか」


「続きわかってるだろ? もう何万回読んだんだよ」


「今回続き読めなかったんだよ」


「あー……強化機械化手術の期日が来たんだっけ?」


「……休載期間が長すぎたんだ。連載再開しなかったのが原因だよ。続きを楽しみにしていたのに! クソッ!」


「「アレか……」」


 イライラを隠そうともせず、黒川はポテチを鷲掴みにして口の中に放り込んだ。バリバリ、むしゃむしゃと豪快な音が響く。この暖かく和やかな場所にしては珍しく、彼の眉間には深いしわが寄っていた。


「おい、あとで俺も読むんだから食べかす落とすなよ。つーか、ポテチ食った手で雑誌読むなよ。共有財産だろ?」


「所有権は俺にあるぞ? それにもう何万回も読んだんだろ? 今回も続きは読めたんだろ?」


「……今回も三か月で休載になった。そっから連載再開していない」


「……またか」


「最後まで見られる……っていうか完結するのかな、あれ……」


「さぁな……」


「……おい、誰か結末、わかるか?」


「いや、それだけは怖くて知りたくない。完結しないってわかったら絶望する」


「それだけは今になっても、絶対にやらない。本能で理解した」


「気になるじゃん。ちょっと調べてみろよ」


「お前がやれ」


「もし完結しないってわかったら癒しが減るじゃん! 俺ここで知ってるところまで一気読みするのが好きなのに!」


「「それな」」


「……お? 黒川、どした?」


「いや、自分で言っててなんだが、そろそろしつこいかな、と」


「「それな」」


「……」


 意味も無く黒川はコーラを飲んだ。木野はオレンジジュースを手に取る。少々カッコつけたくなった三島はオトナなブラックコーヒーを一気にあおり、次の瞬間後悔した。黒川はにやにやと笑いながらページをめくる。


「展開がわかっていても、やっぱりいいものだな」


「次、俺に貸してくれよ。ついでにそのコーラもくれ」


「そのコーヒー、全部飲んだらな」


「ケチ」


「ドケチ」


「ケチで結構。こけこっこう」


「「……」」


「……すべった?」


「「うん」」


 無言で黒川はコーラを三島に渡した。嫌がらせのつもりなのか、直前にこれでもかとシェイクして。もちろん、三島は最高の笑顔をもってそれを木野へと受け流し、木野は窓の外へとそれを放り投げた。

  

「なーにバカなことやってんの。あ、あたしにもひとくちくれーい」


「既に食べてるじゃないか。それも明らかに三口以上」


「気にしない気にしない。あと、黒川もおつかれー」


「おう、柚もおつかれさん」


 なっちゃんの相手が終わったのだろうか。柚が戻ってきていた。三島の隣までがたがたと椅子をひっぱってきて、ばりばりと遠慮なくコンソメのポテトチップを頬張る。ついでに木野が飲んでいたオレンジジュースもぐびりと飲んで、けぷ、と小さく息を漏らした。


「うーん、いいね! このジャンクな感じ! あ、あとこっちのアイスもらうよ!」


「チョコある? 久しく食ってないんだよ」


「ジャムクッキーマジうめえ」


「からあげ以外なら好きに食え……柚、そのちゅーちゅーアイスははんぶんこするやつだ。一人で二つ食べるなんて贅沢は許されない。俺にもひとつくれ」


「だーめ! こっちはあとでなっちゃんにあげるの!」


 しばしの間、四人はそのあまりにも健康に悪いであろう高校生のお供を心行くまで楽しむ。ちょこちょこと他のクラスメイトがハイエナの如く近寄ってきては、めぼしいものをかっさらって舌鼓を打っていた。


 癒しにお菓子は必須なのだ。黒川もまた、それを理解しているからこそ笑ってお菓子を提供している。


「ところで、なんで男三人で夏の教室にいるわけ? 暑苦しくない? あっちの談話室のほうが絶対いいよ」


「わかってねーなぁ。ほら、あれだよ。ホテルとか旅館とかの窓際にさ、なんかカッコイイ席あるじゃん。夜景を見ながらラスボスのワイングラスを傾けられる場所あるじゃん。あれと同じノリだよ」


「いいから、こっちにこーい!」


 柚が三人の手を引いて談話室に連れ込む。全力だったのか、三人ともがそれに抗えず、大きなクッションにぼふんと倒れこんだ。もちろん、柚の手には黒川が持ち込んだビニール袋がしっかりと握られている。


「お前、そっちが目的だろ!」


「そんなわけない……なんて口が裂けても言えないけど」


「口が裂けたらもっと言えなくね?」


「ともかく! せっかくなんだから三人だけじゃなくてみんなでしゃべろうって言ってるの!」


「一言も言ってなかったな」


 周りの女子が全力で黒川の頭を叩きだした。男子は面白がって黒川を抑え込み、逃げられなようにしている。気分が乗ったのか、脇腹や首筋をくすぐるやつまで出てくる始末だ。


「あは、あは、あははははは! や、やめろぉぉぉ……!」


「やーめない♪」


「はん! 普段スカしたやつがすっかり堕ちた顔してるなぁ!?」


「お、おぼ、おぼえてろぉぉぉ……!」


「……こういうときだけ、強化機械化手術ってすげえなって思うよ」


「要らない感覚一切なくなるもんな。手術直後は見た目は普通に人間だし」


「でもあれ、すんごく痛いんでしょ? あたし、そんなに受けたことないけど、毎回毎回気絶していたと思う」


「なんであれ痛いか知ってる?」


「ううん?」


「ほら、機械化に伴って各種センサーを取り付けるじゃん。あれ、直接神経と結びつけてるんだよね。神経に直に触れて接続させるから、考え得る最高の痛みがダイレクトに伝わってくるってわけ」


「ついでに余分な神経は全部ちょん切っちまうからな。そらもう発狂もんよ」


「あの南郷さんが痛みで漏らしたくらいだからなぁ……」


「俺らの中で一番最初に受けた南郷さん。帰ってきたときにはあまりのショックに白髪になっていた南郷さん。だけどよく考えてほしい。歯にフッ酸塗られるのと変わらないレベルの手術を受けても漏らしただけで済んだんだ」


「南郷さん……」


「ちなみにその南郷さんは?」


「そこのリクライニングチェアでイビキかいて寝ている」


「南郷さん……」


 なお、みんなが南郷『さん』とさん付けで呼んでいるが、南郷も三島たちと同じクラスメイトであり、もちろん年齢も同じである。単純にさん付けされるほど頼れる兄貴らしい性格をしているというだけだ。


「あの手術に特殊な麻酔を使うのを必須にしたのもなっちゃんだっけ?」


「そうそう。周りからはそんな余裕ないだろって非難轟々だったけど。でも結果的にそれのおかげで強化兵に志願する人が増えたんだよな」


「そうだ、柚ちゃん。いいこと教えちゃる。強化兵ってさ、誰もあの兵装を解かなかっただろ?」


「そういえば、三島くんも最後の時でさえ顔も見せてくれなかったよね?」


「あー……あれ、見せなかったんじゃなくて見せられなかったんだよ」


「え?」


「機械と細胞が結びついているんだ。あの兵装、ガチで俺たちの体の一部になってたの。マスクの方も一体化してるから、アレ外すってのは顔の皮引ん剥くのと同じこと」


「そうなの? でも、手術直後は普通に人だったじゃん。それに千切れた足とかも普通に人間みたいだったけど」


「マザーって呼ばれる機械の核を埋め込んでるんだよ。時間をかけてマザーは体内の元素を用いて機械を作り、細胞単位での機械化……生体部と機械部の融合を進めていく。それが進むにつれて俺たちの身体能力は向上し、埋め込まれたセンサーの感度もよくなっていく。機械化の進行状況によって訓練プログラムも変わって行って、ゆっくりと生体と機械を馴染ませていくんだ。で、段階的にワイヤーアンカーとかの装備を体にくっつけていく。十分に機械化が進んでいれば、物理的にくっつけておくだけでマザーが勝手に一体化して神経繋げてくれるからね。足が機械っぽくみえなかったのは、細胞レベルで結合しているからそう見えるだけ……説明が難しいけど、あの足の半分は機械で構築された見せかけの細胞だと思ってもらえれば」


「うへえ……だんだんと人間やめていってたのね」


「ひどいことに、それでも三割は生体部が残ってるんだよな。だから痛みは完全には消えないし、生体部密度の濃いところをやられたら致命傷になっちまう」


「完全に機械化すると全てのパラメータが著しく落ちるって研究結果が出てるんだよね。この残った三割が生命としての強さの源なんだって言われてる。具体的な根拠はないけど」


 のんびりとゴロゴロしながら、何気なく三島と木野は口にした。周りにいた男子はアレは痛かったなぁ、などとしみじみとつぶやいている。ワイヤーアンカーじゃなくてパイルバンカー装備の旧型が良かったとか、いやいや、センサー特化のスパイ型が良かったとか、各種兵装について熱く議論しているものもいた。南郷はイビキをかいて寝ている。


「そういやさ」


「ん?」


「なんでここって、ここなんだろ?」


「て……哲学的な質問ですね」


「なっちゃん。もう大丈夫なのか? とりあえずおつかれ」


「よっす、おつかれー!」


「おつかれさまですっ!」


「あ、あたしももういっかい! おつかれ!」


 三島、木野、柚、黒川、なっちゃんが意味も無く笑いあい、そしてハイタッチを決めた。ノリがいいのか空気を読んだのか、ちかくでゴロゴロしていたクラスメイト達も次々とハイタッチを決めていく。


 この奇妙な一体感、三島は嫌いじゃない。


「ところで、先程の質問になりますけど」


「ふむふむ」


「ほら、私たちの修学旅行、スキーだったじゃないですか」


「ああ、あれな。行った直後に雪がドカ降りしてペンションから出られなくなったやつな」


「ペンションだったのか? 県営の……なんだ、林間学校的なアレのための施設って聞いた気がするが」


「細かいことは今はよくない?」


「「それな」」


 普段はおとなしいなっちゃんも、珍しく三島たちと一緒に言葉を紡いだ。恐ろしいことに、発言したはずの黒川でさえも声をそろえている。その場のノリに乗ることさえできれば、内容など割とどうでもいいらしい。


「ともかく、私たちはあそこで四日間、ずっとみんなで過ごしたわけです。それの影響が強く出ているのかと」


「飯も飲み物もあったし、風呂もシャワーも何もかもがあった。連絡することもできた。マジで外に出られないだけだったもんな」


「閉じ込められたというよりか、みんなで秘密基地に逃げ込んだって気分だった」


「あの時だけで一生分みんなと話した気がする。つーか、話すこと以外なかったともいう」


「先生もいなかったし、やりたい放題だったよねえ……」


「修学旅行とは名ばかりの勉強旅行が、すっかりお楽しみタイムになりましたし。あの瞬間が永遠に続けばいいって、私ずっと思っていました」


「「それな」」


「そういうことですよ!」


 ソファにゆったりと身を委ねながら、クラスメイト全員が笑いあう。暖炉の中で薪がぱちりと爆ぜて、暖かな空気がより確かなものとなった。お菓子をこれでもかと食べるものもいれば、トランプやボードゲームに興じる者もいる。もちろん、イビキをかいて寝ている南郷のようにゆっくりしているものも、三島たちのように話の花を咲かせているものもいる。


 そこには、言葉だけでは形容できないある種の安息感、そして一体感があった。


「でも、なんでみんなが今ここに来るんだろうね?」


「そりゃ、今ここが一番楽しかったからだろ?」


「夏の教室もあるじゃん」


「ちょっぴりの刺激も必要ってことですよ! それに、楽しかったのがここだけだというのも悲しいですし」


 柚にぎゅっと抱きしめられたなっちゃんが、心地よさそうにほほ笑みホットミルクを飲む。柚も飲みたくなったのだろうか、なっちゃんが机に置いたカップにコーヒーを注ぎ足し、カフェオレとしてごくりと飲み干した。


「あっ! ずるいですよう!」


「んふふ! 間接ちゅうしちゃった!」


「かかか、間接ちゅう!?」


「おーおー、なっちゃんが照れとる」


「今更照れるような間柄でもないのにな」


「……でも黒川。ああいうのって……なんかよくね?」


「「それな」」


 その場にいた男子全員が声をそろえた。深い眠りについていたはずの南郷でさえ、覚醒して親指を立てている。中には女子であっても同意しているものがいたが、三島はそれを見なかったことにした。


「そういえばさ……」


「柚ちゃん?」


「あたし、今回膝枕できなかったんだよね」


「ああ……。そうか、今回は結婚なんてしていられなかったのか」


「そそ。一応最後にそれっぽいことしようとしたんだけど、両足もげてたし」


「ええ!? あれって膝枕のつもりだったの!?」


「いや、そうだろ。三島、お前女心全然わかってないな」


「そうですよう! 三島くん、もっと女の子の気持ちのことを考えないと!」


「いやあ……。でも、柚が奥さんだったときはうまくやってたよな?」


「不満に感じることも多かったけどねー。いっつも家空けてるしさあ」


「しょうがないだろ、仕事があったんだから。それに、学生時代から付き合ってた時とか、家に帰ってきたときは情熱的かつサービス精神旺盛だったろ?」


「……認めなくないこともない」


「にゅふふ、柚ちゃんってばお口元がゆるゆるですよー?」


 真っ赤になった柚。にやにやと笑うなっちゃん。周りのクラスメイトもまた、そんな二人をはやし立てるかのようにいたずらっぽい笑みを浮かべ、背中を叩いたり脇腹を突いたりしていた。南郷はイビキをかいて寝ている。


「黒川よう」


「どうした、木野」


「お前、今回奥さん誰だった?」


「……言わなきゃダメか、それ?」


「言え。言ってくれ。言ってくださいお願いします」


「なっちゃんだ」


「ちっくしょおおおおおお!」


「分かっているのに聞くなんて、ホントばかだよねぇ……」


「くそ! 柚ちゃん、俺が何回独身だったかわかってて言ってるのか!?」


「えーと、8874123657回?」


「ちげえよ! それに10のなんとか乗がつくよ!」


「有効桁数いくつだ?」


「知るかそんなもん!」


「ちなみに、あたしは6割以上の確率で三島くんの奥さんになっています!」


「さらに付け加えると、俺がなっちゃんの旦那になるのが547632179回で、黒川がなっちゃんの旦那になるのが9899987435126回、木野がなっちゃんの旦那になるのが……」


「言うんじゃねえ! それ以上!」


「……87129回」


「うっわ……」


「少ないってレベルじゃねーぞ……」


「次に木野くんが私の旦那さんになるのは、81258412回後ですよう!」


「よかったな、意外とすぐじゃねえか」


「はは……そりゃ、全体から考えればすぐに見えるだろうよ……」


 木野はがっくりとうなだれ、拗ねるようにポテトチップをつまんだ。その背中は非常に煤けており、この穏やかな空間の中で、木野だけが悲しい表情をしている。


「付き合うところまではいけるんだよ、でもそれ以上にならないんだよぉ……!」


「お前、典型的な『良い人だけど恋人としては見られない』やつだもんな」


「あー、ギャルゲーの情報をくれる主人公の親友ってポジションだ」


「言うんじゃねえよ……」


「柚ちゃん、ぎゃるげーってなんですか?」


「んーん。なっちゃんは知らなくていいんだよー」


 柚がなっちゃんを愛おしそうに抱きしめた。なっちゃんはにへら、とだらしなく顔を崩し、柚の胸に顔を埋めてすりすりとほおずりをする。そこには小動物的なかわいらしさがあり、多くの男子と何人かの女子の心をほっこりとさせていた。


「しかし、婚約者の三島を殺されたときのなっちゃんはヤバかった」


「偉大なる指導者が殺戮の女神に覚醒したもんねぇ……」


「あのヒカリの巨人がちびってその場で自殺したもんな」


「えっ? そんなにヤバかったの?」


「俺はあの時初めて、連中の生物らしい反応を見た」


「じゃあ、勝てたんじゃ?」


「……理性を失ったなっちゃんだぜ? 復讐するためならなんだってするなっちゃんだぜ?」


「ヤバそげな笑みを浮かべて連中の喉笛を噛み千切り」


「恍惚の表情を浮かべて連中を尻の穴から少しずつ又裂きにして」


「辛うじて生きてるそいつらを『ペット』にして、とてもこの場では言葉にできないアレコレを『あさやけ☆ほーぷ☆ちゃんねる』で毎日放送」


「本気で一日の始まりに相応しいと思いこみ、占いコーナーと同じ気軽さで国民に勧めてな。なお、そのコーナーだけは視聴が義務付けられ、これに違反した場合は……」


「翌週に『新しいおともだち♪』がゲスト参加するという、とても不思議な現象が多発した」


「さらにオシャレに熱心。ある日突然『和解のために嫁入りします!』なんてトチ狂ったことを言い出したかと思えば」


「単身でカチコミをかけ、目に入る連中を素手で虐殺。手に入った素材で、なんとその場でオシャレを開始」


「血走る赤が美しい目玉のネックレス、きれいなひだひだが際立つ小腸&大腸のフリルスカート、素材の良さをそのまま生かした、内臓を抜いただけの着ぐるみチックなベストを手作りし、圧倒的な女子力を見せつけた」


「なお、嫁入り云々は『いいイヤリングになってくれなかった』と言う理由でなかったことに。イヤリング予定だった耳はとりあえずバターで炒めて完食し、あとはポイしたらしい」


「ちなみに、なっちゃんはこのオシャレ衣装をたいそう気に入り、目につく女に作りたてほやほやのそれをTPOの一切を無視して送りまくった」


「お、おお……」


「恐ろしいことに、これでも一番マシでマイルドで、会話にしても問題ないエピソードなんだ」


「これ以外の話となると、聞いただけで発狂したり自殺するくらいエグくてヤバくて……うん、事実を述べただけで新手の精神汚染波になるってくらいのやつばっかだ。俺も黒川も、報告を受けただけで発狂して死んだことが何度もあるし」


「…………」


「あ、待て。心温まるエピソードもないわけじゃない。戦争で遊びに餓えた子供たちのために、なんとなっちゃんは大量のサッカーボールを寄付したんだ。ほら、サッカーは基本的にボールがあればなんとかなるだろ?」


「そのボール、全部引きちぎった連中の頭だったけどな」


「…………そういや、酷く蹴りづらくて足が汚れるって苦情を聞いた覚えがあるような」


「あのくらいになると、もうみんな感覚がおかしくなってるよな」


「南郷さん、目玉とか舌とか引っこ抜いて、皮を剥いでコーティングしてボールを加工するのうまかったよな」


「そうそう! 南郷さん特製のボールじゃないとダメになるのも早くてな!」


「もう! みんな、話が脱線しすぎてますよう!」


「おっと。……そんなわけで、相手に甚大な被害は与えたが、味方にもいろいろと甚大な被害が出てな」


「あたしたちクラスメイトの説得も敵わず、味方にも敵認定されて両陣営から攻撃喰らってた」


「最終的に、片想いしていた俺が殺すことで始末をつけたが……。もう人間側はボロボロでな。偉大なる指導者は恋人の死により滅亡の引き金を引いてしまったというわけだ」


「えへへ……その節はご迷惑をおかけしまして……」


「気にするな。俺たちの仲だ。俺たちは俺たちで、俺たちだろ?」


「「それな」」


 もはや何度目かわからない。彼らは声をそろえて笑いあい、そして綺麗にハイタッチを決める。特に意味がなくとも、その行為そのものが今の彼らにとって大事なことで、同時に彼らを彼ら足らしめているものでもあるのだ。


「木野くん、何なら私いま膝枕してあげましょうか?」


「えっ……!? いや、なっちゃん、そんなの悪いよ」


「そこで『お願いします!』って言えないからモテないんだよ!」


「のああ!?」


 柚が木野の頭をひっつかみ、自らの太ももに押し付けた。誰がどう見ても完璧な膝枕である。もちろん、チャラい言動に反して意外とウブな木野は、たったそれだけのことで羞恥で頬を染めていた。


「なんだよう、私のおひざじゃ不満かよう」


「そそそ、そうじゃなくて! 柚ちゃん、いいの? み、三島の前だぞ?」


「わかってて言うなよ。なぁ、柚?」


「うん! あたし、ここにいるやつなら誰と結婚しても後悔しないよ! だってもう、みんなわかってるんだから!」


「そりゃ、そうだけどさ……! でも、事実と感情は違うっていうか……!」


「ダメですよう、木野くん。私たち全員みんな、お互いに結婚しあっているんですから。それってつまり、そういうことでしょう?」


「まあ、お前は極端に結婚回数が少ないけどな。男子は女子の全員と結婚してるし、女子は男子の全員と結婚している。今更恥ずかしがるようなもんじゃないだろ」


「なっちゃんが殺戮の女神になることに比べれば、こんなの驚くことじゃないし?」


「あー……個人的にはみんなすぐに全滅した時のほうが驚いたな」


「逆にみんながみんなエリートだったときもあったねぇ……」


「でも、俺たちみんな……何もかもが最高の形ってのはまだ(●●)一回もないんだよな」



「「……それな」」」






▲▽▲▽▲▽▲▽




 

 そして、三島たちはその快適な空間で憩いのひと時を楽しみ続ける。それは数十分のことなのか、数時間のことなのか。あるいは数日かもしれないし、数年かもしれない。数百年と言われても、一瞬の出来事と言われても、誰も疑いはしないだろう。


 永遠と刹那が入り混じったその空間で、それでも確かに、彼らは癒されていた。


「……だんだん人が少なくなってきたな?」


「ホントだ。……俺もそろそろ行くとするか。黒川はどうする?」


「俺はもう少しゆっくりするよ。というか、木野の奴はもう行ったみたいだな」


「あいつ、いっつも何も言わないでさっさと行くよな」


 気付けば、いつのまにやら談話室の中の人数が減っている。おしゃべりに興じているものも確かにいるのだが、明らかに先程までに比べて活気が少ない。


 もちろん、見ようと思えば見えるし、探そうと思えば探せる。またこの暖かく穏やかな空間に大切な友人を呼ぶこともできる。されど、それはクラスメイト全員が望まないことだし、やろうとも思わない。


「……三島くん、もう行っちゃうの?」


 少しだけ不安そうな表情をした柚が、泣きそうな顔で笑いながら、三島に声をかけてきた。


「まぁ、ね。木野も南郷さんもいないみたいだし。それにほら、この安心できる……みんながいる場所に帰ってこられるってわかっているから。だから、俺は──俺たちみんなは、また歩き出すことができるんだ。そうだろ?」


「……」


「ただジュースを飲むよりも、夏の炎天下の地獄のマラソンを走り切った後に飲む方がうまいだろ? ただ飯を食うよりも、極限まで腹を減らしてからのほうがうまいだろ? またこうしてみんなと一緒に、最ッ高にダラダラとするためにも、俺はいかなきゃいけないんだ」


「……食べものでしか例えられないの?」


「うっせ! とっさに思いつかなかったんだよ!」


 三島は恥ずかしくなってぷいっとそっぽを向いた。柚はおかしそうにくすくすと笑い、そっと三島の顔を両手で包む。そして、今回の最後にしたくても出来なかったもう一つのことを実行した。


「──ん、おまじない」


「ありがとな。また会おうぜ。あっちでも、こっちでも」


 穏やかな空気が流れる談話室。ふかふかで上等なソファがゆったりと並べられており、その間にはオシャレな机が置いてある。クッションや毛布、さらには食べかけのお菓子や飲みかけのココアが三島の心をきゅっと切なくさせた。


「あー……」


 ちら、と目を逸らせばそこには暖かな灯を宿す暖炉が見える。ぱちぱちと静かに薪が爆ぜており、単純な物理量で測れない暖かさをこの空間に提供していた。


 窓の外ではやっぱり雪が静かに、されど深くしんしんと降っている。それが余計に、三島に名残惜しさを感じさせていた。


「あー……」


 ぐいっと三島は伸びをする。どれくらいぶりかは考えたくないが、緩んでいた気がどんどん引き締められていった。脱ぎ捨てていた学ランを羽織り、気合を入れてシャツの第一ボタンまで締め……ようとして。


「……やっぱ上まで留めるのは無しだな」


 平穏。安寧。大いなる安堵となつかしさ。安心や癒し、ともかくそれに類するありとあらゆる要素を詰め合わせ、形にしたと思えるようなこの空間。






 だけど、そこにはもう誰もいない。






「よっしゃ、行くか!」


 三島はぱしんと両手で頬を叩いて気合を入れる。夏の教室があった場所、あるいは第四の壁にプラットホームが切り抜いたように現れていた。


 そのプラットホームには三島以外は誰もいない。蒸れたアスファルトの匂いがするが、それだけ……いや、地下鉄なのだろうか、送風機が唸る音も聞こえる。よくよく耳をすませば、自動販売機かそれに類するなにか機械の駆動音も聞こえていた。


「……」


 いつの間にか、電車が停車していた。落下防止用のホームドアが開くのに少し遅れて、ぷしゅうと電車の扉が開く。駆け込み乗車をしないように促すアナウンスがしずかに、されどはっきりと三島の耳に響いた。


 この電車に乗ったら、もういっかい最初から始まる。


 そんなこと、三島はわかっている。もう、数えるのもバカらしく──否、数えたくとも数えられないくらい、三島はこの電車に乗っているのだから。


「……」


 す、と三島は一歩を踏み出す。そして、一瞬迷ってくるりと後ろを振り向いた。


「……」


 ふと、三島は思う。この電車に乗らずに、この誰もいない抜け殻の様な談話室に残ったならどうなるのかと。このまま乗らずに、このプラットホームにずっといたらどうなるのかと。


 この電車に乗ったら、もういっかい最初から始まる。すべてを、何もかもを忘れて。


「……」


 それは、夢を見ることによく似ている。楽しかった夢や、印象的な夢。ともかく、もう一度見たい、あるいは覚えておきたい夢だ。


 しかし、夢は忘れるものだ。起きた瞬間は覚えていても、その例えようのない気持ちに心が酔いしれていても、その幸福や安らぎや安堵、なつかしさに喜び……言葉にできないありとあらゆる感情に心が支配されていても、それらは夢現の彼方にかき消されていく。


 だから、記憶が消える前に。


「今日も元気に、頑張りますか!」


 それでも三島は選んだ。雑念を振り払うかのように頭を振って一歩を踏み出す。そして、電車に乗り込んだ。


 じりりりり、と発車の合図がけたたましく響く。懐かしいメロディと共に扉が閉まり、がたんと車内が大きく揺れる。


 電車内には疲れた顔をしたサラリーマン、眠そうな表情の高校生、一心不乱にスマートフォンを弄る大学生がいた。朝の電車にしては非常にすいており、席にこそ座れないものの、肩と肩が触れ合うほど混んでいるわけでもない。


 三島は入り口前の角を陣取り、そのまま体重を預ける。電車内に掲載するにはいささか不適切な内容の週刊誌の広告を一瞥してから、通学カバンの側面ポケットに入っていたミュージックプレイヤーを取り出し、イヤホンを耳に押し込んだ。


「……」


 三島はこの電車の行き先を知っている。いつも、何度も乗っている電車だ。間違えるはずがない。


 それでも、三島は進む。


「……」


 三島はゆっくりと目を閉じた。彼のお気に入りのミュージックが、少しの音漏れとして電車内に響いていた。



▲▽▲▽▲▽▲▽



ゆっくり休んでもういっかい



▲▽▲▽▲▽▲▽


未来も過去も。


一瞬も永遠も。


あらゆる可能性の全てに満ち溢れたそこで。


今日。昨日。明日。一瞬。永遠。時間も空間も飛び越えて。


無限を超越した有限。有限を超克した無限。


そのすべてを知りながら。


ひとりはみんなで、みんなはひとりで。


ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。


再びまた、それを目指して立ち上がっていく。


あらゆる可能性を知りながら、希望を抱いて歩いていく。


どん底の絶望をさらに深くして、帰ってくる。


だからこそ、ここだけは。


ここだけは、ずっと安心できる場所でありたい。


何もかも忘れて、思い出に浸れる、楽しい安らぎの場所でありたい。


後悔はありませんか?


精いっぱい生き抜きましたか?


充分に、休めましたか?


──さぁ、立ち上がりましょう。


あなたはまた、ここに戻ってこれるのだから。


あなたはまた、生き抜かなければならないのだから。


例えすべてを忘れていても、その事実だけは変わらない。


──さぁ、前を向いて歩きましょう。



【生きて生きて生き抜いて、ゆっくり休んでもういっかい】

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[良い点] 何と表現すればよいのかとても難しいのですが ただただ、切なくて、いとおしい。 いつか届かないものに届くことを願って、繰り返すこと。 繰り返しの狭間の、永遠で一瞬のやすらぎ。 その全てが。…
[一言] 難しい…… けどなんだかひかれる…… じゃむくっきぃ…… 次はノクターンにて、バーサークなっちゃんの物語を、是非(グロによる18禁)
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