終わり
「いや、やっぱりな。
終わらせるべきだと思うんだよ」
パソコンを見ながらそう口走ると
ベッドで漫画を読んでいたノーナが
「なっ、このしょうもない生活をとうとう終わらせるの……」
と愕然とした口調で言ってきた。
「いや、ウンコマンをだな……もういいだろ。
何年も書いてるけど、どの出版社からも声がかからないぞ……」
ノーナはため息を大きく吐いて
「あのねぇ……タイトルからして
どこが出版しようとするのよ……精々
無暗な努力を続けるおっさんの頭の悪さを逆手にとって
自費出版詐欺にひっかけようとするヤカラが居るくらいよ」
「……異世界ものを書こう。
閃いたんだよ。何が目的か分からない
カタカナ文字の長いタイトルの
延々書き続けてる異世界ファンタジーものを見ていたらな。
好き勝手に書こう。もうちょっとシリアス寄りでな!」
「止めといた方が良いわ……アレも
ウンコマンと同じく、どこにも永遠に引っかからないと
思うわよ……作者は気づいているのかは知らないけど……」
「そうか……」
俺は椅子からおもむろに立ち上がって
履歴書を印刷すべく、プリンターに繋がった一階のパソコンへと降りて行った。
そして印刷した履歴書に自分の履歴を書いてみて
あまりにも真っ白なので
とりあえずはボウルの中に入れて
燃やしてみた。
燃えていく履歴書を眺めていると
ノーナが下に降りてきて
「まあ、現実なんてこんなもんよ。
そろそろ悪魔の力に頼らなーい?」
と言ってきたので
「いや、要らな……」
と振り返ると、ノーナはそこには居なかった。
慌てて二階へと駆け上がると
さっきまでヘッドフォンをしてMMOをしていたはずの
ワンワンオも居ない。
さらにパソコンからネットにつなぐと
ヨーチューバーのもっさんも居なかった。
スマホの連絡先には
ノーナ関連の存在はすべて消えていた。
パソコンでノーナが歌っていた歌も消えた。
「そうか……」
どうやら、あの悪魔は俺から唐突に去ったらしい。
同居人が居なくなったので
部屋が開いたな。
とりあえずシコるか。
嬉々としてエロサイトに接続すると
何か頭をハリセンで叩かれたように感じて
不意に振り返る。
そこには当然のように誰も居なかった。
俺はため息を一つして
小説家になるおを立ち上げ
そして、ウンコマンの最終話の投稿をして
新たな真面目なファンタジーシリーズを
立ち上げることにした。
ウンコマンで造り上げた大量のアンチたちが
最初は新たな連載に襲い掛かったが
数か月続けているとそのうち、そこそこの評価を貰い始め
何となく満足した俺は
その嬉しさを現実に向けようと
まずは手近な、履歴書の要らないところで社会復帰しようと
賀寿明のところに押しかけて、バイトを始めることにした。
その後、後輩から嫌がられながら
心霊たちとの奮闘を続けている。
ノーナはきっと
どこかで楽しくやっていると思う。
悪いことしてなかったらいいが。
終わり。




