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第四話賀寿明

そんなこんなで前回の翌日、

わりと本気で行くつもりだった精神科も

朝おきたらめんどくさくなって行かずに、

俺はこの、よくわからない幻覚と同居することになり数日が経った。


ちなみにこいつは、ステルス機能がついているらしく、

前回のウンコマン誤認事件のあと、

夕方に仕事を終えた父母が帰ってきたんだが、

まったく見えないようだった。

玄関に置いてある、やつの白いスニーカーすら俺にしか見えないらしい。


余談だが両親二人とも福祉関係の仕事をしている。

俺もいい年なんで、相対的に彼らもけっこうな年だ。

父は寡黙だが優しい人で、母は饒舌で毒舌家だがこっちも

基本的には優しい。

クソみたいな俺をこんな年まで生かしていてくれて感謝しかないので

家の家事でできることは率先してやっている。

その内、ガッツリ働いて両親を安心させ

稼いだ金で旅行でもプレゼントして喜ばしてやりたいなとは思うが、

中々踏み出せないダメな俺だ。


ああ、そうだファッキン悪魔トナカイビッチ幻覚ファッカーの話だったな。

こいつは俺以外には見えないくせに食い物は欲しがるし

寝床も一端に要求しやがる。

お陰でコークハイ(ウイスキーと混ぜたコーラ)が好きな母に

よく「コーラ1リットルボトルまた全部飲んだやろ」と怒られるのだが

俺は最近運動不足からくる糖尿病が怖いのもあって

そんな糖分の高いもんをがぶ飲みできねえよ……。

ベッドも取られて、一緒に入るわけにもいかんから

床に布団ひいて寝てるんだが

なんせ板張り床が冷たくて固いので、昔やった腰痛が再発しそうで怖い。

あーあ、めんどくせーな。

ドラ○もんか!ベ○ダンディか!ラブ○んか!

ちなみに小女子は魚だ。こうなごと読む。

こうなごを漢字で○害予告したら逮捕されるから気をつけろ。

何の話か分からないやつはググれ。


「へー、おっさん薄汚れたダッサイ服着てるけど

 音楽はわりとハイセンスねー。デ○アハンターとか

 ピー○ルインザ○ックスとか、悪魔の友達がよく聞いてるわー」

部屋で暇そうにコーラ飲みながら棚を物色している幻覚が話しかけてくる。

「日本の家は木造だから、大音量で音鳴らせなくてかわいそーねー」

国際的な幻覚気取ってんじゃねえぞ。クソが。

「うるせえ。つーか帰れ。悪魔とかもういいから、マジで帰れ」

「なっ、なんで、いっいきなり、そっそんなこと……うー」

俺の不意の悪口雑言に傷ついたのか、彼女の大きな眼に涙が溢れそうになった。

「……悪かったよ、ちっ」

肝が太いのか、繊細なのかわかんねえから困る。

イライラしながらネットしてたら玄関のチャイムが鳴った。


ピンポーン

「うーっす。せんぱーい元気っすかー」


おお、いいところに。

あのイケボは中学の後輩の賀寿明だ。

ちなみにがじゅあきと読む。変な名前だろ。

俺と違って端正な顔立ちをしている長身のイケメンなんだが、

この名前のせいで学生時代は中々に暗かったらしい。

年も五つ離れているし、学生時代はまったく関係なかったのだが

七~八年前に何の因果か俺とアマチュアバンドを組むことになり

それ以来、ぼっちでクソ無職の俺を何かと気にかけてくれるいい奴だ。

ちなみにバンド時代、俺はベース、こいつはギター。

もう解散したがローファイ+ポストロック+レゲエみたいな

そのジャンル混ぜるな危険を地で行くクソバンドだった。

毎回ライブ中にベロベロに酔っ払っては、

二人で観客と乱闘していたのもいい思い出だ。

まあ、いまさらどうでもいいなそんなこと。


そうそう、こいつも実家の神社をいつまで経っても継がずに

遊びまわっているが、悔しいことに仕事はあるのだ。

いわゆる霊能力者ってやつだ。あやしい奴も多いその業界で

こいつはマジもんの能力を使って、重度の霊障を払いまくる凄腕として

ここらの地方最強の霊能者としての地位を、着々と固めているらしい。

本人曰く「怖いのは国税の税務調査だけ」

稼ぎすぎている自慢か?おおん?


とはいえ、渡りに船だ。

俺は主人を出迎える犬のように

満面の笑みで素早く二階の自室から、賀寿明を玄関に迎えに降りた。

「うわ、先輩どうしたんすか。いつもより一段とキモいっすよ」

俺は賀寿明の手を強く握り締めて頭を下げた。

「頼みたいことがあるんだ」

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