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トナカイの妖精    作者: 弐屋 中二


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33/41

創作術

「明日さー。何ができるか分かんないんだよな」


「何のことよ」

「ウンコマンの話だよ」

「ああ、あの読んでくれている人の時間を無駄にしている

 ゴミの様な産廃文章もどきの話ね」

「さすがに言い過ぎだろう……」

「客観的な指摘だと思うわよ。

 私だって地球の芸術作品を沢山見てきたけど

 おっさんのあれだけはないわ」

「おま……ファンの方もいるんだぞ……」

「まあねぇ。仏みたいな人たちだと思うわよ。

 リアル仏に会ったことはまだ無いけどね」

「ないんかい」

「つうかさ、聞いてくれよ」

ノーナは久々に真剣な顔になった俺にニヤリとして

こちらを眺める。タブレットでソシャゲをやりながら、だが。

「自分の文章未満のクソダメ文字の羅列に、とうとう気づいて凹んだんでしょ」

天才の大傑作に、酷い言いようである。

「いや、例えそうだとしても、俺には今はこれしか書けないからな。

 何と言われようと、やり続けるしかないわけだ」

「その言い分は、分からないこともないわね」

「でさ、俺には実は明日何を書くべきかまだ分かってないんだよな」

「……」

「なんか、こう、明日書くときになったら、

 書くべき物語が溢れちゃうって、いうか……?」

「天才でも気取ってるの?」

ノーナは立ち上がって、いきなり俺を指さして怒り出した。


「あのねぇ、人に見せられる文章というか物語を書くためには

 きちんとした物語の構成と、それに見合う文体と

 それから真剣な気持ちが居るのよ!!」


ワンワンオが一瞬ビクッとして、そして再びずれたヘッドフォン被り直し

パソコンでオンゲーを再開する。

「お、おう。悪魔のくせに真面目なこと言ってるじゃないか……」

「おっさんは、表現活動を舐めすぎだと思うわ!!」

ノーナは頬っぺたを膨らませて、ベットにペタンと座って

再びソシャゲーに興じ始めた。


いや、ノーナの言ってることはよく分かっているつもりだし

過去にそれをやったこともあるのだが

それだと結末に向けて淡々と書くだけで、俺がつまらないのだ。

ウンコマンⅡ~聖戦の調べ~については大枠は決めて

あとはキャラが動くがままに、やらせている。

何か、キャラが動くとかプロの先生みたいな言い方したが

そりゃ素人でも、何百万字も書いてたら動きますよ!!

もう最近はウンコマンたちが好き勝手動きまくるよ。

殆ど自動書記で、物語が進むので楽ではある。

しかし……しかしだ。ノーナの言っていることは完全に正しいのも分かる。

時代を超える文豪を目指す俺としては

どこかで必ず大ヒットを出さなければならない。

いや、実のところは小ヒットでも、ぶっちゃけ、どっかのまとめブログが

炎上目的でウンコマンを取り上げてくれても、全然かまわないんだが

まあ、一応目標は大きく大ヒットと言っておこう。

やはりあれか……世間を唸らせるような、きちんと終わりから最後まで

綿密に計画された美しい一作を書くべきなのか……。

ウンコマンでは、とても俺の立身出世を助けそうにないことは

何となく、いや、あくまで薄々だが、天才である俺は感づいている。

世の中というものは天才を理解するには時間が居るのだ。

いつかきっと何十年か後には俺の渾身の力で書き上げた大傑作ウンコマンが、

ハリウッドで映画化されることもあるだろう。

……いや、しかし、ウンコマン終わりそうにないしなあ……。

熱いアンチたちから評価一がつけられまくっているが、

一でも合計で千以上はある、そして五をつけてくれるファンの方もいるので

この五百八十万字に及ぶ、評価千五十二の大作を捨てるのもな……。

最低でもあと一年書き続けて、

ウンコマン3~彼方からの不死者~まで書き上げ

そして盛大で極上なフィナーレを迎えたいところではある。


ん?


知りたいのか?


お前らも内容が知りたいと?


どしよっかなー、ウンコマン3は想定している大枠だけでも

全米が泣くレベルの

感涙必須な壮大なストーリーだぞ。

ここでネタバラシしてもいいけどなー。パクられたら困るしなー。



「ききたくないわ!!アホか!!死ね!!」



思考を呼んで勝手に突っ込んでくるノーナは無視する。

そうか……聞きたいのか。そこまで言われたら仕方ないなあ。

ちょっとだけ教えてやるか。

よし行くぞ。



ある日、尿の切れが悪い上に、膀胱に若干の異常を感じたウンコマンは

「歳かな……」とボヤキながら市内の総合病院を受診する。

(ウンコマンⅡ~聖戦の調べ~の最終決戦が終わった後の

 二つに分かれたウンコマンの聖なる方だ。悪の方はアンドロメダ星雲に旅立ったのだ。

 あ、これまだ書いてないから秘密な)

そこで検便や尿採取をされて、さらに何故かそのままMRIに入れられた

ウンコマンは何と、脳に腫瘍ができていることを医者から告げられたのだ。

「な、なんという病気なんですか……」

と医者に詰め寄ったウンコマンに、その若い女医は頬を赤らめて

「恋の病です……結婚してください……」

とウンコマンの脳の異常が映ったX線写真をゴミ箱に捨てながら告白した。

ウンコマンは、今までのことを全て忘れて即座に承諾した

「女医、おらと結婚するだか」

「うんっ」

そしてその女医の父親の馬魔王のところに結婚のあいさつに……



「中途半端にパロディを作るな!!しかも大枠じゃないし!!説明が細か過ぎるわ!!」



ノーナがこっちを見ずに何か言っているが、無視して、話を進めるぞ。

その女医の父親の馬魔王は何と、馬と名の付くあらゆるものの魔王だった。

もちろん、馬並みのチ……いや、何でもない。

ノーナが俺の後ろでハリセンを構えて怒っているようだ。やめておこう。

で、ともかく、女医と唐突に結婚したウンコマンの

幸せな二年間が流れるように過ぎた。

ある時、ウンコマンは気づいた。

尿が全くでなくなっていることを……そしてそのウンコヘッドの

左上から一本の漆黒の角が生えていることを。

「女医……おら、病気だか……」

「うんっ」

二年間の甘い結婚生活の末に

すっかり口調が悟○かぶれになったウンコマンに元気よく返事した女医の妻は、

油断していたウンコマンを病院に連れていくと、突如隔離病棟に幽閉した。

「なっ、なにをするだー」

鉄格子を揺さぶりながら、咆哮するウンコマンに

女医はとうとう正体を現したのだった。

「ふっははははははははは!!この時を待っていたのさ!!

 俺はチ……マン(自主規制)、マ…コマン(自主規制)と入れ替わっていたのさ!!」

「なんだってええええ!!!俺が毎晩抱いていた柔らかい身体はもしや!?」

「そうさ!!貴様は二年間ずっと脂肪分多めの男を抱いていたのだ!!」

衝撃の告白に、ウンコマンの新たな何かの扉が開く音が聞こえた。

証拠に半分立っていたのだ。ウンコマンの股のチ……




スパパーン!!!




思いっきりハリセンで頭を叩かれて振り返ると

「おっさん……いい歳して、黒歴史を重ねるのはもうやめよ?」

ニコニコしたノーナがハリセンをもったまま

小首をかしげて俺に問いかける。

うん、何かすげぇ怖い……これが悪魔の本気の凄味というやつだろうか。

ワンワンオはブルブル震えながら、見ないふりをしている。

「わ、分かった。でも黙って書くのは許してな?」

「……一年以内に完結させるのよ……」

「……はい、すいません……ほんとすいませんでした……」

俺はいつか真面目なプロットのある作品を書こうと心に決めた。

だが、明日も書くのはウンコマンである。

いつかやろう。いつかまともな作品をつくるよ!!

いつかな!!

いてっ。

枕が後頭部に飛んできて、振り返ると

不貞腐れたノーナが向こうを向いた。

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