第十七話 ゴールデンウィーク
クソオンゲーのつまらんレア掘りの合間に、
俺は~ウンコマン~聖戦の調べの長編エピソードを書き上げた。
ポチッと投稿して
俺はアクセス数や感想や評価を眺める。
評判は相変わらず、一部の熱狂的なファンの方々以外は
「キモい」とか「続編書いたらぶっ殺す」とかの
中傷や○害予告ばかりである。
通報はしない。それ自体もロックな行為だと思うからだ。
だってIPアドレスで身元割れる時代に
自宅やネカフェから自分の人生かけて生IPで煽ってるんだろ?
串刺しまくっても技術のあがっている官憲にぶっこ抜かれるわけだし、
どう考えてもロックでしょ。ロックンロールだよベイビー。
思想的には明らかに俺のご同輩である。
もちろん俺はリアルであれネットであれ、他所様にご迷惑はかけないが……。
ウンコマンはあくまで「物語」であるから
好き勝手その中で書き殴って暴れているが
=現実の俺の行動パターンではない。
だいたい俺は……
「駄作を世に晒し続けることへの、言い訳が長いわ……」
「ヴァウ……(泣けよ)」
いつの間にか後ろに居たノーナと、
そしてワンワンオが巨大な肉球のついた手で折り畳まれたハンカチを渡してくる。
お前も苦労してるのにえらいな……おっとこれはダメだ。
俺は一応ハンカチを受け取り、額の吹き出ている油汗を拭う。
「やっぱ……つれぇわ……」
「ヴァウワ……(言えたじゃねぇか……)」
「……のらないからね」
妙に冷めているノーナは背中で話すと
「あーっ疲れたー」
ベッドの上にボスンッと音をさせて横たわる。
ワンワンオは床に寝そべり、さっそくヘッドフォンをして
USB接続のコントローラを持ち
自分のパソコンでドラファ7をやりだした。
「何か、隠してること……ない?」
テンション低すぎることを訝しんだ俺の問いに
ビクッとしたノーナが跳ね起きて、あたふたと手を使い
「なななななな無い!!無いわ!!な、無いに決まってるでしょ!!」
慌てて弁解する。ワンワンオもそちらをチラッと見て
"関わらんとこ"という顔でオンゲーに集中し直している。
「ふーん、怪しすぎるなぁ……」
まぁ、隠し事をしているのはお互い様である。
俺はノーナに思考を読まれないように、
素早くジャージに着替え、部屋のドアを開けて
ゴールデンウィークで日本晴れの外へと
ランニングしに行く。
晴れていて気持ちの良い昼間である。
爽やかな風も吹いている。
今はクソ悪魔やら、クソオンゲーのクソつまらんファッキンクソ作業クソレア掘りクソやら
世紀の大傑作の続きに悩むこともない。
俺は近所を一通り走り、身体の調子がよいので
そのまま賀寿明の神社まで遠出することにした。
走り続けると、山の上に立っている神社が木々の間に見えてくる。
百段ほどの長い石段を登ると、広い敷地内に立てられた神社に到着した。
「あ、先輩、どうしたんすか」
見つけ次第、さっそく声をかけてきた
箒をもった後輩に俺は手をあげて答える。
最近ノーナと会っていないので賀寿明は調子がいい。
爽やかなスマイルと長身で野暮ったい袴を完全に制圧している着こなしだ。
「家からランニングしてきた。今日は悪霊やら悪魔は憑いてない」
「そっすか。最近気を使ってくれてるみたいでありがたいです」
「去年はすまんね。うちのクソ悪魔が」
「いやいや、会わなければ全然問題ないっすよ」
掃除が終わったらしい綺麗な敷地内を見回して賀寿明は
「社務所でお茶とお菓子くらいなら出せますよ」
「ご馳走になるよ。ありがとう」
広い社務所の畳の床の上に座布団を敷いて
二人で近況を語り合う、
「最近バンドしてませんねぇ」
「どうなの、その後評判は」
「まだ一回しかライブしてないっすからね。
シーンから忘れられてるんじゃないですか?」
「だよなぁ」
「山田春さん元気?」
「元気ですよ。いつもはご実家でご両親と農業をやられているようです」
「そうかぁ」
どうやらニートなのは俺だけである。
いつだって世界はニートを置き去りにしていく。
「近々、もっかいやりたいっすね」
「そうだなー」
俺はようかんを突きながら、社務所の外の木々を眺めた。
常に謎の超生物たちに囲まれている自室ではありえない
ゆったりとした贅沢な時間が流れる。
「仕事やら神社はどう?」
「ボチボチですね。悪くはないっす」
「ちょっとノーナに関する相談なんだけど聞いてくれない?」
俺は思い切って切り出し、賀寿明は意外な顔をしてから
「聞くだけならいいっすよ。ただし関わりは絶対しないです」
そう、きっぱりとした顔で言い切った。
聞いてくれるだけでもありがたい。
俺とはとりあえず今までの話で賀寿明が知らないことを
全て話してから、最近の惑星侵略の話について相談した。
「……先輩」
「何だ」
「この世のものじゃない人たちに深く関わりすぎっすよ」
「だよなぁ。やっぱダメ?」
「彼らは彼らのルールで存在しているだけなので
今はいいかもしれませんが、いつかは先輩にとって困ったことが起こるはずです」
「もうかなり困ってるんだが……」
「もっと辛いことです」
「そうか……」
俺は何となく想像がついてしまった。
ただしもう遅い気がする。
むしろ悲しみに満ちた黒歴史しかない人生舐めんな。
「まぁ、いいさ。アイムロックンローラーだ!!」
「いや、ロックとかそういう話じゃなくてですね……」
「アイアムフーリッシュマン!!HAHAHAHA」
「何のネタですか!」
微妙に元ネタが思い出せないが大体あってるはずだ。
やわらか戦車とかよりだいぶ前のやつ。
「とにかくノーナさんのやることはほっとくに限りますよ」
「……わかった。これ以上手出しせずに事が進むに任せるわ」
なんか怖くなってきたので、俺の手出しは以前話した
これからレア装備に釣られる予定のワンワンオの裏切りと
もっさんとリーファーさんが相手方に塩を送るまでになりそうである。
行くと言った手前もっさんには黙っておくが、
俺が、例の星に今後行くことは絶対にないだろう。
秘密で施した作戦が実るのを祈るのみである。
「それがいいですよ」
賀寿明は安心した顔でお茶を飲み、少し咽る。
エブリデイイズサンディな俺のゴールデンウィークのある日は
こうして終わっていっ……
「先輩……」
社務所を出て再び走って、帰ろうとすると呼び止められる。
「ん?」
「あの駄作だけはもう書かないほうがいいっすよ……」
「駄作?傑作しか書いてないんだが。
駄作をわざわざネットに載せるやつなんておらんやろう~」
「いや……最近小説家になるおで見たんですけど……いや、もういいっす……」
賀寿明の意味不明な警告を聞き流し、
俺はますます大作家になるための決意を新たにした
涼しい風の吹く気持ちの良いゴールデンウィークであった。




