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トナカイの妖精    作者: 弐屋 丑二


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第十一話おさんぽ 中

ピンポーンと玄関のチャイムが鳴り

「はいはい。今あけますね」

と俺がドアを開けると


「じゃーん。どうよこのナイスバディ」


ウェーブかかったロングで茶髪の

ナイスバディな日本人のお姉さんが腕を広げて立っていた。

身長は160台後半くらいで、カーディガンの中の胸はEカップはありそうだ。

思っていたよりも、想定の範囲内なのに安心しつつも、

「……また、人に身体借りてきてないよな?」

ハリセンをスタンバイしながらとりあえず訊いておく。

「まっさかー。さくっとそのへんにある元素から人体練成しただけよっ」

何故か口調もイケイケ(死語)になっているノーナを見ながら

早くも俺は心配になっていた。

「で、どこに遊びに行くの?

 普通の人間と変わらないからどこでもいけるわよ。

 外出たくないなら、お部屋でプロレスでもいいわよ☆」

俺の部屋に新しい身体であがりこんだノーナが言う。

元の体は座り込んだまま微動だにしない。

「人外とはやらねぇって言っただろ……」

「えーつまんないーつまんないー

 プロレスしよープーローレースー」

ニューボディノーナがベタベタくっついてこようとして

俺が全力で身体をよじり、触れないように避けることを繰り返している。

しかしなんだこのノーナのテンションの高さ

……めんどくせえええええ


ノーナがぶーぶーうるさいので

しかたなく俺は賀寿明に携帯で電話をかける。

「ひさしぶりー。元気だったー。こないだごめんなあああ」

まずは全力で謝っとこ。数少ない友達だからな。

「いやーマジで怖い目に遭いましたよー。

 例の女悪魔はそこにいるんすか?」

「今は何か用事あるとか言って

 どっか行ってるよ?いないいないw」

すまん賀寿明、どっか連れて行かないと俺が疲れて死にそうだ。

「いやぁ、安心しました。できれば二度と会いたくないですね」

「分かる分かる。俺ももう帰ってこなければいいと思ってるよ」

ノーナがとなりで頬っぺたを膨らませているが

気にしないで俺は賀寿明をノセることに専念する。

「でさ、最近、無職の俺にも春が来てな。

 美人の女友達ができたわけだが……」

「まじっすか!ぜひ俺にも紹介してくださいよ!!」

よし、ひっかかった。ちょろいわ。ちなみに賀寿明は無類の女好きである。

「彼女な、心霊スポットとか行きたいらしいんだわ」

「ジーザス!!俺の専門分野っすよ!!」

うん。知ってる。それより神道系のおまえがジーザスってなあ……。

「けっこうエグイの紹介してあげてくれない?

 心霊スポットめぐり?みたいのが趣味らしくて

 半端なとこじゃねぇ……」

そんな女、ふつうの人間でも俺は嫌である。

「ちょうどいいのがありますよ!!今からでも行けますけど

 先輩と三人でどうすか!?」

俺はついでだろ。お持ち帰りしていいぞ。とめないよ。

「じゃー九時半に、うちの近くの北公園で待ち合わせな。

 すまんが車出してくれ。女はまちがいなく連れてくから心配すんな。じゃ」

電話を切って、ある事実に気付いてため息をついた。

別に俺ついていく必要ないんじゃねえの?

ノーナが賀寿明とラブホでプロレスすればいいだけの気がするんだが。

「ちがうーおっさんとやりたいのーぶーぶー」

「心読むな。無職の俺にも選択権はある」

おまえらも遠慮するな。

やりたいやつはいつでも言ってくれ。



二十一時半ぴったしに賀寿明のスポーツカーがやってきた。

車に疎い俺にはよくわからんのだが、

真っ黒な四百万くらいするミッション車だ。

中からタイトなファッションに身を包んだ賀寿明が出てきた。

高そうなデニムに、高そうなジャケットに高そうなシャツに

高そうな伊達メガネにびっしりセットされた髪型という出で立ちだ。

くたびれたパーカーとキャップに、色あせたスニーカーの

いかにも金のなさそうな俺と比べると

とにかく嫌味な感じであるが、

女を狙っているのがはっきり分かって一応は安心する。

ノーナだとまったくばれてはいないようだ。

「うは、先輩どこでこんな美人さんと知りあったんすか!!」

早くも女に向けてアピールを始めている賀寿明はえらいなと

俺は思いつつ調子を合わせる。

「昔のバンドのときの知り合いだよ。最近連絡もらってな。変な女だがよろしくたのむな」

「変な女とかめっそうもない!あ、自分も先輩とバンドやっていたんすよ」

「へーすてきですねー今日はよろしくお願いしますー」

ノーナもいちおう普通の女を演じていて安心する。

「あ、よろしくお願いします。先輩から聞いていると思いますが

 ×山賀寿明って言います。ささ、どうぞ助手席へ。

 先輩は後ろでいいっすよね?」

「いいよー。今度なんかおごれよ」

後部座席に先輩を追いやった後輩に対して、さりげなく貢物を要求しておく。

「了解っす。ささ、汚いですがどぞどぞ」

綺麗に清掃されている高級車の車内で

好きな昔のバンドについて話したりしながら

我が田舎県の奥深い山々の中にしかれている国道を

いい年した無職と高額納税霊能者と

悪魔が人体練成した女に似た何かよくわからないものを乗せて

"エグイ"心霊スポットへと向けて車は走っていく。

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